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魔法なんて要らない、くそ喰らえ  作者: レイア
夏休み ‐序‐ ver.1.0.2
4/10

004 押しかけてきた不登校美少女

 翌朝。日がやっと昇り始めた頃に目が覚めた。お姉ちゃんは既にいない。台所かな?

 のそのそと地下室に向かって、パソコンに電源を点ける。その間にじんじんメールを読む。どうやら今週一杯は休校らしい。補講はまたどこかでやるとのこと。気になる東風平先生の容態は、あまり芳しくはないと書いてあった。

 まあ仕方ないな。いくら何でもあんな傷じゃ失血量がすごいからな。

 皆大好きXPの起動音と共に、7が立ち上がる。さて、取り敢えずお目覚めにsm11764956を聞くかな。


――ピンポーン


 ふいにインターホンが鳴る。

 ……何じゃこんな時間に。まだ早朝ぞ。しかも聞こうとした矢先。不機嫌に接待してもいいよね。いいよね。

 一応失礼にはならないように、気持ちの分だけ急いでインターホンの所まで行く。だーれだ。


「は?」


 何でこれまた、こんな珍しい人が。実物は初めて見たぞ。てか、和服なんだ……。似合いやがる。

 通話ボタンを押して、挨拶。一応ソプラノボイスで。


「はいー、おはいおごぜぁーます」


 すると驚いたのか、相手はぎょっと跳ねた。いや、こっちこそ早朝に押しかけてくるあんたに驚きだが。

 ……「あんた」? いや、知らない人だから、あんた呼びでもいいだろ。……いいのかなぁ。


「あ、もしもし。こんな朝早くからお訪ねして申し訳ございません」


 全くだ。せめて4時間は遅く来やがれ。


「私、平野文音と申します。……ええと、渡良瀬佑俐さんは、その、いらっしゃいますでしょうか?」







 平野文音。自分たちと同じ学校に在籍している女子。父親がPTA会長だったりする。

 実はそれ以上の情報は殆ど知られていない。何故なら、学年で1番の不登校児だから。多分文音について訊いた所で、同級生は多くが不登校児としか知らないと思う。異口同音に珍獣と答えるだろう。

 そして一部の情報通は、彼女の兄が自分たちの学校の4学年上にいることを知っていて、更に自分は父親が警察官であることを知っている。

 まあ、自分は偶然知る機会があっただけだけども。いやいや、脱税なんてしていませんってば! 本当です、信じて下さい! 青色申告書に全部書いてあります!


 あ、いや、もう1つだけあるね。

 実は、中1の終業式で集合写真を配られた時の事だ。

 学年全員が学級別の写真のページを見て、文音があまりに可愛いもんだから、衝撃が走ったのだ。M8クラスの激震と言っても過言ではない。不登校美少女という、すごい属性が付いた。

 しかもその可愛さは、自分が目指している方向性でもあって、1度は会って談義してみたかったりもする。

 のだが。その認識は今日改まる。







 外で放置する選択肢もあったが、それはそれでどうなんだということで、文音を仕方なく家に上げることにした。


「本当に朝早くにすいません」

「いや、それ自体は別に大丈夫です。問題ありません」


 2年前まではデイリーでお茶とご飯のインシデントだったし。慣れているといえば慣れている。朝の鑑賞タイムを邪魔されたくらい、何ともない。ほんとだよ?


「お姉ちゃんすぐに呼んできます」

「はい、すいません」


 応接間から抜けて、台所までお姉ちゃんを呼びに行く。


「おはよー、お姉ちゃん」

「あら、おはよう。何かあった?」

「依頼客っぽい人が」

「え? いや、喧嘩仲裁業なんて辞めたんだけど」


 色々聞き捨てならない言葉が聞こえたけど。いつ辞めたよ。


「代わりに鶏肉切っといて、ブロックに。じゃがと人参もお願い」

「任された」


 あの子が喧嘩か何かに巻き込まれている、とは思えないけど、でも何かあったんでしょう。喧嘩仲裁業で名を馳せた名声は、まあ、伊達ではない。どこかのネットの書き込みでも見て、頼ってきたと思われ。

 しかし。だがしかしだ。写真とはほぼ別物だったんだけど、どういうことだ。まさか写真撮影の時だけ、()化粧していたとか? よく分からん。


「光莉、ちょっと来なさい」


 考え事をしているとお姉ちゃんに呼ばれた。何事だろうか。


「は、ただいま」


 応接間まで戻る。


「何でしょう」

「結論から言うね。あなた手伝って」

「面倒。嫌だ」


 何かありそう。自分まで手伝わされるほどだ、よっぽどの事に違いない。


「そう言うと思った。じゃあ言い方を変えるね。私1人の力じゃ足りないし、死ぬかも知れない、だから手伝え」


 その言い回しは酷い。従わないといけないじゃん。


「え、えと、ちょ「分かりました」

「素直で宜しい」


 お姉ちゃん、とってもいい笑顔。自分、すこーし苦い顔。


「少し待って下さい! 私、光莉さんにはまだ何も言っていないん……ですけど」

「なるほど、それで? 目に入れても痛くない、可愛い可愛いうちの弟を巻き込むなって?」

「いえ、そうではなくて……」

「なら決まり。依頼された以上、絶対その任はやり遂げる。これが私のモットーだしね」


 うむ、さらりと恥ずかしい。自分もお姉ちゃんは大好きだけども。


「やれ、面倒だの、大変だのそんなの知るか。言っておくよ。文音、貴女は私を買ったのよ。だから貴女は安心して私()に背中を任せなさい」

sm11764956は神曲です、異論は認めません

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