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魔法なんて要らない、くそ喰らえ  作者: レイア
2学期 ‐序‐ ver.1.9.1
10/10

010 授業中に考え事は、学生あるあるだと思う

近年稀にみるストレートで素直な文章(初稿は3時間半の安産でした)(なお推敲にその30倍かかった模様)

遅れてすんません!

11話目は年内に恐らく? ソンナコトイッテナイヨー(鋭意執筆中)

「はい?」


 東江先生の第一声は訊き返しだった。そりゃそうだろうな。出し抜けな質問だし。


「――いや、違うから。断じて暇で来た訳じゃないから」


 夏休み明けてすぐのこの時期に、態々生徒を訪ねてくるのは、相応の理由があるかも知れないし、ないかも知れない。寧ろ、あるな。あったら困る。変なことに巻き込まれたくはないんじゃ、これ以上。なかったらなかったで、ただの迷惑だし……あれ? 結局迷惑じゃん。


「私だって、友達くらいいるわよ、失敬ね。……地球には殆どいないけど(ボソッ)」

「あれ、後半何か(おっしゃ)いました?」

「今は先方の都合がつかないのよ、会いたくても」

「なるほど」


 違う気がする。読唇はできなかったけど。ほぼほぼ、相手の都合云々ではないな。


「まあ冗談だったんですが」

「失礼な冗談」

「それはすみません」


 やっぱりいないのか。


「いるからね」

「分かりました」

「いるからね」


 若干の怒気を感じた。


「ごめんなさい、分かりましたから」

「それで宜しい」


 友達の話は厳禁か、仔細理解。


「ああもう、話がずれたからどこまで話したか忘れたじゃないの。お代わりを入れなさい」

「それはすみません」


 おどけたら駄目そうなので、丁寧に謝りながらまたお茶を汲んだ。


「根拠の話でしたが」

「ああ、はいはい……そうだった、ありがとう。そ、さっき言ったのが、最大にして要となる根拠よ」

「……その根拠自体も未確定なんですが、敢えて仮にその根拠が正しかったという(てい)で進めます。別に疑っている訳じゃないですよ、勿論。でもそこで、どうして自分がこういう感じで巻き込まれるんですか? 経緯が流石に分かりません」

「あら、それこそ愚問だねぇ」


 快刀乱麻、というよりはただの一刀両断。


「全ては巡り合わせ。神でも知らない宿世」


 何故か遠い目をして、東江先生は答えた。






「まあ、だから巻き込まれるのなら、それが誰だったとしても、あなたの体験したように、そのまま巻き込まれてしまう。もし巻き込まれなかったなら、ずっと交わらない道を進むだけ。いえ、寧ろ初めから別の道を辿っているでしょうね、その時は。そして、この瞬間をどう感じるのかは……。光莉ちゃん次第」


 それから2日が過ぎて、特に面白いという訳でもない現代文の授業を聞き流(スピードラーニング)していると、東江先生の科白を、ふと思い出した。特に悩むこととか、そうではない。けど、夏休み以降、事件が立て続けに起きたことに、考えを巡らせてしまう。考えざるを得ない。


 ぼんやりと何があったのか、記憶の範囲で辿る。

 東風平先生の流血沙汰、馨の吸血鬼告白、スレムの来訪、自分の記憶喪失。

 うーん、何となく、全てに裏の事情というか、謎というか、表舞台には出てこないようなことがありそうな気がしてならない。理由はそうだな、自分の周囲ばかり事件が起きすぎだからだ。何と言うかな、寧ろこれで、全部が全部無関係だとしたら、その方がおかしいでしょっていうね。

 いや尤もだ、考えすぎだなどと指摘を受けたら、それも本当にご尤もだ。確かに、気にしすぎかも知れない。あくまでも勘だ。


 では、しかしとばかりにここで1つ言っておきたい。今挙げた4つの出来事について、どれも不自然な出来事である、と言えば? どう? 怪しく思わない? そうでもない? あっ、そう!



 いや、でもでもだよ? 順に説明していこうじゃん。


 考えてもみたら、あんな大きくて貫通した傷口、普通に考えたら出来る訳がないのだ。

 内傷ではないので外傷の筈で、そうなると、何かしらの道具で行われたと考えるべきだ。なのに凶器は見つかっていない。これがこの事件の不自然で不可解な点だ。


 例えばこれが銃創だったとしよう。発砲音が聞こえない筈がない。サイレンサーがあると言っても、サイレンサーとは、方向を撹乱する目的であって、消音する目的がメインではない。消音しようと思えば、余程小さい弾丸でないといけない。

 しかしながら、傷の大きさからして、相当な口径の銃だ。であれば、弾薬が必然的に増えて、発砲音は益々隠せない。

 抑々の話、これだけの口径の銃は、隠すことはほぼ不可能だ。従って、室内での犯行ではない。目撃者がいないからね。すると、外からの犯行ということになる。

 ところが、現場である事務室周辺の窓ガラスにも、割れた形跡はない。つまり、校舎の外から射撃されたものではない。故に、この傷は銃で出来たものではない。


 では、何が凶器として使われたのか。槍のようなもの、くらいしか後は思い付かない。何せ貫通しているんでな。しかしこれもやはり隠せるような武器ではない。


 そして何より。さっきも言及した通り()()()()()()()()()()()()。その瞬間を捉えた人がいないという意味で、だ。そんな緻密な瞬間は、果たしてあり得るだろうか。流石に非現実的すぎる。


 凶器と目撃者。この2つの課題を解決するとなると。明らかに無理があろうものだ。



 東風平先生の傷口だけではない。馨の吸血鬼であるという告白。これも不自然だ。告白自体が不自然なのではなく、吸血鬼であること、が不自然なのだ。どっきりの方がマシだ。

 まずこれだけでも、ファンシーでファンタジックでアブノーマルでパラノーマルなのに、本人の馨自身も知らなかったことらしいのだ。


 それにも関わらず、どういう訳か、東江先生はこれを正しく把握できていた。これも実際不気味ではある。

 考えてもみよう。本人が知らない本人の性質、それも外見も変わるような根幹を成す性質を、他人の方が見抜いた。おかしくない? 自らの吸血鬼性って、自覚できないようなもんなん? まあ、自覚できていたとしても、自らを吸血鬼としてカテゴライズ、定義できるかとなると難しいか。

 ……1つ仮定が思い浮かんだけど、最近、それももしかしたらこの夏休みになって目覚めたというのも、有り得るっちゃ有り得るか。でもなぁ、そうだったらほんとに、ほんっとに事件が集中しすぎじゃない?


 あとその辺の真偽はどうであれ、自分に打ち明けた理由も今一分からないな。別に言いふらしたりしないけども。けども。ももももも。もももすももももものうち。

 てか、当の東江先生も、エルフを(あくまでもだが)自称しているのが頭が痛い。本当に本当の事なのか? 信用してもいいんかね、確信が持てない。嘘は吐いていないと思うけども。ぬんー。確認していないからなー。



 や、一旦、東江先生はさておくとしよう。スレムの登場もそうだ。スレム自身、とても非自然的存在だし、その上魔法も使えると来た。千歩譲って地球外生命体、これはいい。スライムで魔法を使うって……某サイトで累計5位の……最早何も言うまい。



 では最後。これも重要だな。何なら卑近にして喫緊ですらある。

 記憶喪失。夏休みの初め頃までの記憶しかなく、後の夏休みの記憶は丸っきりない。丸ごと闇の中。

 一般に、記憶喪失は、物理的に脳に損傷が出来た際や、激しい印象を残す事件が起きたとき、その事件がその人の人格を揺るがしかねない際に起こる。


 で、これは恐らくそのどちらでもない。感覚としては、どちらかというと記憶を盗まれた感じがするしね。

 いや、証拠はまあ、ないけどさー。でも、何となくそうだと思う。だからこそ、東江先生も「記憶を奪った犯人は」なんて表現を使ったんだろうし。

 要は、誰かが自分の記憶を、無断無許可にて、奪いやがったのだ。改めて、出鱈目で、眉唾な話だな。何せ、比喩表現ではなく、文字通り記憶を奪うなんて、そんな技術は普及していない。つまり、ないものとして考えていい訳だからね。

 しかして、感覚としては全くそのような感じだから困る。


 まあでも、問題はその手段じゃない。使い手、又は犯人だ。誰がこんなことをしたのか、これを解明する方がよっぽど大事だ。記憶を他人に弄られるかも知れないという憂いを残したままでは、安心して過ごせやしない。

 んにゃ、でもそう考えたら、犯人を特定できなかったなら、せめて防ぐ方法は知っておきたいか。そうなると、どういう手段なのかも把握しておくべき……。じゃあ何だよ、結局全部が問題じゃん。

 ともかく、要するに記憶喪失も、普通の記憶喪失ではない。かなり人為的だ。自然ではないのだ。



 以上を踏まえると、確かにこれらが裏で繋がっていると考えるには早計でも、それを否定するのも早とちりだ。――と、言ったものの、どういう繋がりが有り得るんだろな。やはり魔法か、魔法なのか。そうなんだな!



「ふぃ」


 溜息が自然と出た。

 まあ、魔法とは決まった訳でもないし。偶然という線もある。というか、本質的にゃ穿った見方だってことは否定できん。その通りだもん。だから順当に考えたら、そりゃあ、ねぇ? つまり気に食わないだけではある。


 で。も。さ、あ? 分かる? 釈然としないんだよね。

 はい、これ以上考えても仕方ないんで、ここらで締めましょ。



 そう言えば。時間割見たら次の授業、数学やんけ。

 ……東風平先生だけど、どうして休職じゃなくて辞職なんだろうね。別に辞めることはなくない? 辞めるに至る要素が、はたと思い付かないんだがな。気分で辞める、とは思えんし。あれも貰い事故みたいなもんでしょ? 事故というより事件だけど。


 っだあぁ! 分からん事ばかりだな。畢竟恩師も他人。全部は知りようはないか。



「んーんー」


 背伸びして何となく外を見る。目の毒になるくらい、水面が眩いプールが目に入ってくる。さっと目線を教室に戻した。

 いやあ、これは眩しいですねぇ! やはりプールは屋内に限るな。蜻蛉が産卵するわ、日光の反射が激しいわで、屋外プールの利点は、建設費用の節約くらいではなかろうか。

 てかあれ(後輩)じゃなかった? うん、やっぱり(かおり)だよね。羨まけしからんな。水面が眩しいのは気に入らないが、いくらでもプールは楽しいからね。水泳の授業終わってしまったけど、まだまだプールに浸かりたいんじゃ。


 ってじゃなくて。プールサイドで何をしているやら。若干ふらついているけど……。あ。


 吸血鬼って、流水にも弱いんじゃなかったっけ?



 これは大丈夫じゃないですねぇ。喜屋武(きゃん)先生気付くかな。いや、無理だな。馨のふらつきはよく見ていないと気付けない。微妙だけど普段の足取りじゃない。

 しかしなぁ……。

 ――……。


瑞慶覧(ずけらん)先生、ペストと赤痢と腸チフスが併発して死にそうなんで、保健室に行ってきます」


数学の東風平(こちんだ)

国語の瑞慶覧(ずけらん)

養護の東江(あがりえ)

体育の喜屋武(きゃん)

以下続々

字に起こしてから気付いたけど、東江と東風平って、字面が似過ぎでは()

あと当時まだ5位でしたね、書いている今は1位ですが

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