捌 実感する変態仕様
降りる前に一つ決めた事があった。この星の名称だ。
元の世界のデータを精査しこの星で集めた情報を突き合せた結果
「まさかの平行世界・並行世界・世界線!!!」
「おおーーー」
「しかもタイムスリップ&異世界のおまけ付き!!」
「お得だね!」
異様にテンションの高くなった俺に合わせてくれたのはアリアンだけだった。それ以外のみんなはスルーしている。まあ仕方がないよね、俺、鬱だし。
そんなこんなでこの星を地球と正式に呼ぶ事にし、地上の情勢も太古代とほぼ同じなので元の世界と同じように呼ぶ事にした。不都合が有ればその時に考えれば良いし。
適当だな。
因みに物理法則にも違いが無く、魔法のようなものは存在しないっぽい。その割にはエルフみたいなのとかとかドワーフみたいなのとかとか存在している。よくわからん。
正直、未だに誰かのコアの中に居るような気がしてならない。まあ、それならそれでやり様もあるし、何とかなるだろ。
という訳で、やってまいりました太平洋!!青い海、白い砂浜!気分はもうトロピカル!!ブルー・オーシャーーーーン!
うん、自分でも何言ってるのかわからんな。
え?なんで太平洋かって?プライベートビーチを作る為です。
…嘘です。そんなものは盆栽の可住惑星に幾らでも在ります。
簡単に言えば秘密基地的なものを作るつもり。ここを拠点に太平洋一帯の海洋資源や海生生物の調査を行う。
コアの盆栽にも資源は有るけど、あれは元々盆栽用に運び込まれたもの。つまり補充が効かない虎の子の資源なので手は付けない。
水没しそうな火山の火口付近に環礁が出来ている絶海の孤島が有ったので、そこに決めた。
メンテナンス用ドックと管理棟を作り、可潜調査船を配備する。ここの保守管理はロボット達だ。早速作業用ロボットで施設と船を建造する。
島の施設にはカモフラージュを施し、万が一の為に防衛用の簡易レールガンを設置する。まあ、玩具みたいな物だが、文明レベルを考えると過剰戦力かもしれない。しかし何処から持ってきたんだろこれ。
船には基本、武装は付けない。別段大型海洋生物を狩りたい訳じゃ無いからね。いざという時の為に攪乱装置だけ付ける。逆に深海に潜ったり移動したりする事を考えると、耐圧と動力を考えないといけない。まあ耐圧は資源探査の為に巨大ガス惑星等に降りたり、また何らかの事故で落ちたりした場合を想定して作られているので、それを基準にすれば大丈夫だろう。問題は動力だ。元々船に載っていた反応炉が有るが、流石に勿体無いよな…。
「どうしました?」
悩んでいたらロッドに声を掛けられた。一段落ついたのかな?
「いや、新しく作ってる船の動力をどうしようかと思ってさ」
怪訝な顔をされた。何か可笑しな事言ったか?
「以前、調査の為にシャトルを降ろしたり、衛星を置いたのは覚えていますか?あれの動力は小型の反応炉です」
そしてさらっと凄い事を言われた。
「は?」
「この船の生産設備は凄いですね。流石に大掛かりなものや本格的なものは無理ですが、それなりのものは作れますし出来ます。ただ、ここの文明レベルではそれでもオーバーテクノロジー過ぎますが」
え?何それ?小型クルーザーの中に工業地帯が有るのか???いやまあ、現状を考えると、有り難いと言えば有り難いんだが…。何かおかしくないか?コアにばかり気を取られずに、もっとしっかり説明を聞いておくべきだった、反省。
「内部設備が充実しているとは聞いていたけど、物凄いな。金持ちのやる事はわからん」
「存外、クリス様と同じ事をしたかったのかもしれませんね」
と、苦笑された。
いやいやいやいや、ちょっと待って。いくら外宇宙に行くからって、一応補給に戻るつもりだったぞ、俺。流石にそこまで突き抜けていないと思うんだが…。
「もし人々の中で暮らしてゆくのであれば、慎重にしなければいけませんね。騒動の元です。まあ、この星を征服するのであれば、出来なくもありませんが」
「そんな面倒な事は遠慮したいな。俺は適当に暮らして、鬱を治したいだけだし…」
「まあそうでしょうね。逆に征服するとか言われたらどうしようかと思いました」
そう嬉しそうに微笑んだ。