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メンヘラ男のセラピートラベル  作者: 神代 遥
8/11

漆 期待?の新人と浪漫

居間には三人の人物が居た。一人は俺、後の二人はジークフリートとエイルだ。

二人は俺と向かい合って座っている。調整や治療に一月程掛かった。


ジークフリートの新しい名前はババクとなった。

アリアンに相談したのはいいんだけど、張り切ったアリアンは”どうせなら格好良いのが良いよね”と由来付きで名前を表にしてきた。確かに格好良いんだが、由来も当然それなりな訳で、イメージに合わない…。というか、ジークフリートもどっかの英雄の名前だったはずだぞ。

仕方なく彼の姿形とこれまでの経緯を話した。彼の前の主人に対してプンスコ怒っていたな。優しい子だ。悪戯好き設定だったらどうしようかと思っていたが、杞憂だったな。そこで提示されたのがババク。由来は小さな父という意味で太古時代、ペルシャと呼ばれた地域に伝わった名前らしい。良い名前だ。ロッドに伝えて相応しい人格設定にして貰った。身体はデカいけど。

「有り難う御座います。記憶は完全には消えませんが、頂いた名に恥じぬよう、努力します。お世話になります」

そう言って頭を下げた。最初に会った時とは違って、どっしりと落ち着いた感じになったな。ただそれでもまだ前の事を引きずっているんだろう、暗い翳がある。こればかりは仕方が無いか。まあ徐々にだな。弛んだ顔と身体は引き締まっていて、巌の様なと形容出来そうだ。設定年齢は十二万歳位、俺より少し年下になっている。良い感じに頼り甲斐が出てくる年齢だな。原生種換算だと三十五?六?まあその位だ。ロッドの助手として生産管理を担当して貰う。チルの負担も多少は減った…と思う。


エイルもまた治療を終えて医療用ポッドから出てきた。

髪や肌には艶と張りが戻っていた。設定年齢は七から八万歳くらいかな?原生種換算では二十二から二十四歳くらいだろう。キリリと引き締まった表情…なんか前より迫力が出てませんか?

「完全に治療して頂き有難う御座います。しかし宜しかったのでしょうか?」

「ん?何が?」

「クリス様が購入された時点で私の稼働限界は六千か七千年を切っていたでしょう。今回治療して頂いた事で大幅に伸びましたが、それでも既定の耐用年数を考えればそれほど長くはありません。良くて後二万年が限界でしょう。コストを掛けて治療して頂いた意味が有ったのかどうか…」

成程。俺の事を気に掛けてくれたのか治療費が気になったのか…。しかしそれだと腑に落ちない事がある。表情が厳しいんだ。

彼女は医療用バイオドールとして造られた。そして医療部隊とはいえ戦場に送り込まれたんだ。そしてボロボロになった為に放出品として中古市場に流れた。完全に物扱いだ。確かに人工生命体ではあるし、人格もプログラムされる為に人間に都合よく使われる。しかしまだ大切にされた上での「死」であるならば、納得も出来るとは思う。要は人間不信なんだな。よく解るわ。俺も母親に物扱いされていたようなもんだしな。

だからこそ、買った俺に裏の意図があるんじゃないかと警戒しているという訳だ。うん、ある意味正解だ。彼女を買う時に”医療用だったみたいだ”と聞いたし、安かったんだよね。十把一絡げのワゴンセールだったから取扱説明書も無かったし。ロッドも医療技術が無い訳では無いけど、なんというか、女医さんってほら、男の浪漫だろ?それに実際問題、一から十までロッドしか居ないのでは、気楽ではあっても変化が無さ過ぎて逆にストレスが溜まる気がしたんだよね。だから良さげなバイオドールを何体か買ったわけだし。それに買っちゃったものは仕方がない。中古を買ったはいいが、後で新品買った方が安かった、なんて事は偶にある事だ。それに背に腹は代えられない、という事情もある。元の世界なら代わりを探す事が出来るけど、ここでは探す以前の問題だ。なので正直にぶっちゃけた。勿論女医さん云々は隠したが。

「…まあ、そういう訳」

「成程、わかりました。では誠心誠意努めさせてもらいます」

戦場帰りで結構鋭そうだから、男の浪漫を見抜かれるかと心配したが、何とかなったようだ。似たような境遇のババクも居るし、余り追及する気も無かったのかもしれない。彼女にはロッドとは別に、独立して医療設備を任せた。ただ、今は開店休業になるので倉庫管理を手伝って貰う事にした。作業用ロボットも増やしたので、それほど手間は無いと思う。要はチルの作業量の軽減だ。


こうして降下準備は整えられていった。

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