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メンヘラ男のセラピートラベル  作者: 神代 遥
7/11

陸 降下準備と増員

降りる事を決めた日から数か月を掛けて準備をした。

偉そうな事を言った俺が言うのもなんだけど、実務そのものはロッドが全て取り仕切っている。

俺の仕事と言える仕事は最終承認だけ。チルはロッドの助手として地上の情報収集と分類をメインにしている。アリアンは…まあアリアンだ。


ロッドがまずやったのは、この星を八つの区域に分け、それぞれに監視や攻撃、気象操作等が出来る総合静止衛星を設置した。

次に大量の偵察機を載せたシャトルを降下させた。偵察機といってもほんの小さな虫くらいの大きさだ。気が付く者も少ないだろうし、気が付いても然程気にしないと思う。鳥等が間違えて食べる可能性は大いにあるが。まあ、大量摂取しなければ腹は壊さないと思う。

そこでハタと気が付いた。この船にシャトルは無い。お飾りに近い脱出ポッドがあるだけだ。ロッドに聞くと生産施設が馬鹿みたいに充実しているらしい。

確かに買う時に生産施設が充実している事は知っていたが、精々が食糧や船の補修部品の生産くらいだろうと思っていたが、まさかシャトルみたいな大きな物まで作れるとは思ってもみなかった。ロッドに言わせると、作ろうと思えばこの船よりも大きな船が作れるらしい。但し資源が有れば、との注釈が付くが。

そこで資源を買おうと思ったのだが…

「なあロッド」

「無理です」

「まだ何も言ってないんだけど…」

「元の世界に戻れない現在、我々は無一文です。そして元の世界からお金を持ってこれるのであれば、我々は元の世界に戻れています」

ド直球ど真ん中の正論、ありがとうございます。そうだよな、金も無ければ売ってくれる相手も居ない…。世知辛さに再びへこむ俺。…いいんだよ、鬱なんだから。

ロッドはそんな俺を見て、少々溜め息を吐きつつキッチリ解決策を提示してくれる。

「幸いこの星の知的生命体は宇宙に進出していません。少々資源を採掘したところで請求書は回ってきません」

「なるほど、所有者が居なければ、採り放題って事か」

「そういう事です。早速向かいますか?」

という訳で、メインベルト(仮)で採掘する事にした。

元の世界の太陽系と同じく、この世界にも火星相当の惑星と木星相当の惑星の間にアステロイドベルトがあり、星系外縁部にもアステロイドベルトが存在した。

外縁部のカイパーベルト(仮)は遠すぎるので将来の資源枯渇時に考えるとして、今回は火星(仮)と木星(仮)の間にあるメインベルト(仮)となったわけだ。

倉庫の割り当ては、俺が趣味の物や他の連中の個人所有物を入れたりする領域を二、食料貯蔵庫として三、資源その他を五とした。

食料貯蔵庫が3なのは食料生産施設がある事が大きい。人工合成食品なら、設備が稼働する限り作り続ける事が出来る。

しかしなんでこんなに設備が充実してるんだ?以前の持ち主はとある金持ち(結構有名)だったらしいけど、俺みたいに色々逃げたかったんじゃないか?と邪推してしまう。しかもまだ拡張性あるし…。

買った金額自体は高かったけど、コアとか相転移縮退炉の方に目が行ってたな。それ考えると、滅茶苦茶お買い得だったんじゃないか?

やはりジュリが忌避されてたんだろうなあ。偶にはあそこでピクニックでもするか。

採掘作業は資源探査ロボット任せるとしても、チルの作業量は半端なくなってきたな…。

あと六体バイオドールがあるけど、男女一体ずつ起動するか。

みんなが作業頑張っている間に応援を増やさないとなあ。


二体のバイオドールが覚醒したので、俺とロッドで面接というかお話を聞く。

まずは男性のバイオドール。赤髪の短髪で、瞳はウルフ・アイズといわれる琥珀色、褐色の肌をしている。顔も身体もデカい…んだけど…。

ジークフリートと名乗った。恰好良い名前じゃないか。ネーミングセンスのない俺としてはちょっと羨ましい。ただ、普通バイオドールは眉目秀麗・スタイル抜群なものが多い。態々大金を払って買うのだから、余程変わった趣味じゃないと醜悪とまでは言わないが、見栄えのしないものは買わないだろう。が、彼の場合は顔と身体が弛み切り、醜悪に近い見目形だった。話を聞くと、前の主人に虐待されていたらしい。毎日のように罵倒され、暴力を振るわれたそうだ。ストレス発散の道具にされたか、そういった嗜虐趣味があったのか…。体型や人格は態とそういった設定をしたんだろうな。今でも俺を前にしておどおどとしている。なんか哀れになってきた。本人の希望としては、とにかく今の名前は嫌だという事。人格設定も変えて欲しいという事。本人の希望を聞きつつ、ロッドと相談する。

「人格設定は変えられますが、記憶そのものは全て消去する事が出来ません。顔の造形と身体つきですが、多少は変えられます。が、基本は今の体格になりますのでそこは了承してください」

ロッドの説明に素直に頷く。こっちは一応これで良いかな?後は名前だが、俺、自信無いんだよな。大体、宇宙盆栽の可住惑星だってまともに名前を付けていない。

…アリアンにでも相談するか。こういうの好きそうだし。

次に女性のバイオドール。髪はプラチナブロンドでストレートロング、瞳は深い蒼に白い肌。出るところは出て、へこむところはへこんでいる。所謂スタイル抜群ってやつだ。細面で綺麗な顔だけどちょっと冷たそう…。ただ彼女にも問題があった。相当過酷な職場で働いてきたのだろう、身体全体がボロボロな感じだ。何より髪と肌の張りと艶が無い。どうも医療用ナノマシンの働きも弱っているみたいだ。全体的な印象は草臥れていると言っていい。

名前はエイル。元々は医療用バイオドールだったらしいのだが、そのせいで戦場に放り込まれた。人間そのものが戦場に出なくなっても戦争は無くならない。代わりに戦うのはアンドロイドやバイオノイドだ。しかし消耗品とはいえ戦闘用アンドロイドやバイオノイドは高価な兵器、無尽蔵に投入出来る訳も無く、修理・修復の為の部隊が必要になってくる。そこで働いてたそうだ。その経歴のせいか、冷たく見えてしまうのかもしれない。

彼女自身は身体機能の回復のみを希望したので了承する。まあ、少し様子見かな?あまりきつい性格だったら弄らせてもらうかもだけど…。

こうしてこの二人は、また暫く医療用ポッドのお世話になる事となった。早めに仕事が出来るようになって欲しい。チルが切れないと良いなあ…。


「ところでクリス様、なぜ二体づつの起動を?」

「…お前、解ってて言ってるだろ?」

「一応確認をと思いまして。私もクリス様の全てを理解出来る訳ではありませんので」

軽く肩を竦められた。嫌味は全く感じられない。流石だ。

「一気に起動して所帯が増えると、俺がパンクするからなあ。俺も向こうもちょっとづつ慣れていけばいいさ」

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