プロローグ
ーー20XX年初冬、世界を震撼させるゲーム機が発売された。
軍事・医療を中心としてVR技術は根付いており、身近なものではタブレット型携帯電話など現代人にとっては既に生活の中にあって当たり前。
勿論、VR技術を駆使したゲームなども大手メーカーを中心に販売され、今や世は大VR時代と言っても過言ではない程に普及・発達している。
そんな中、従来とは全く異なる正に最先端を行くと言われるゲーム機とそのソフトがとある新興企業から発表され、話題を集める。
本体機となるVRPCと、専用ソフト【TotentanZ On-line】だ。
謳い文句は--現実よりもより現実に。現実よりもより刺激的に。現実よりもより……。今、新たなる世界の扉が開かれる!--
つい数ヶ月程前に業者関係者の集う電子的娯楽博覧会にて新興企業【ダイテックゲームス社】より突如として発表。そのクオリティ、システム性から実現不可能とまで言われた。しかし、その後すぐに世界各国にてβ版が提供されたことにより現実味を帯びて話題が話題を呼びゲーマーは元より一般人にも周知される事となる。
VRPCと言われる本体機。PCとはいうものの、実際にはカプセル型ダイヴ誘導器を本体とし、そこへゲームのディスクを読み込ませる。これは従来の有線ヘッドフォン型のダイヴ誘導器と操作モニター出力の為の腕輪とは全く異なる。更に言えば本機は操作中の人体のコンディションコントロール機能付き。過去全てのゲーム機を置き去りにするような最新機であった。
如何にハイクオリティのゲームといえど、新興企業では大手メーカーのナンバリング作品やネームバリューに負けてしまい多少話題に上がる程度……で収まってしまうが、今回は違った。
業者会にて実現不可能とまで言われ、しかし実現できるならば今世紀最大にして至高!と沸いたこの作品は、その熱も冷めやらない一月後には全世界を対象にVRPC支給のもとβ版を発表。累計3万人ものプレイヤーがかの世界を体験し、虜となった。その評価が更に注目度を高めたのであった--。
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数年後、ダイテックゲームス社は某国政府により解体。商標のVRPC及びTotentanZ On-lineは全データ及びプログラムを非公開とし政府管理下に置いたうえで凍結された。
「人類史上類を見ない無差別大量殺害テロ。我々は学ばなければならない。察せなければならない。そして防がなければならなかった。幻想に魅入られ、惑わされるのではなく。」