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だらだら相対性理論  作者: 萩野 暇人
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生きがい

「お待たせいたしました!」


この言葉を聞くために僕は、じつに3時間も費やしたのである、しかも忙しい朝の時間帯に!睡眠時間や朝ごはん、他にも色々と犠牲にした。しかし僕に一切の迷いもなかった、そう、プリンのためならば!!


「お客様!最後の1個でございます。ギリギリでしたね」


と母親世代の店員が暑さに負けない元気な声で話しかけてくる。


「はい、良かったです」


口では良かったです。なんて言っているが、実際そんなレベルではない。少しでも気を抜くとついついにやけてしまう。実際学校に着くまで七月上旬の蒸し暑さを忘れていたほどだ。


「鮫島おはよう」


正門ではいつもどおり、担任である体育教師が挨拶をしてくる。僕もいつもどうり、会釈で返す。



僕の通う高校はいたって普通の高校である、説明しろと言われても...偏差値そこそこ、駅から5分、共学、という事しか思い浮かばない。

まあ、少し他の高校と違う所と言えば、駅から近いわりにとても広い事と、一年前に終った改装工事のため私立並みの設備と校舎が綺麗である事だ。


「おはよー!鮫島くん」


僕を鮫島くんと呼ぶのは佐久間先輩しかいない。

そう、僕は彼女に用事があった。

右手に持っている紙袋を見せつつ


「おはようございます、佐久間先輩。部室の鍵をお借りしたいのですが」


「あー、冷蔵庫ね!私も行くよ暇だしね!」


僕と佐久間先輩は力学部に所属している、入った理由と言えばフカフカなソファーと冷蔵庫が設置されている事と、部員が少なく(2人)ほとんど活動していない事の2つである。


「わかりました、でも、これはあげませんよ?」


「わかってるって、一口だけだから!」


「佐久間先輩、鍵だけ!貸してください!」


「やだなぁー鮫島くん、冗談に決まってるじゃん!」


必死になるのも無理はない、朝4時に並んで買った今日の僕の生きる理由とも言えるほどのプリンである。


「それじゃ、行きましょうか」


部室は特別棟の3階にあり、特別棟は文化部でない生徒は基本的には使用しない、さらに3階に至っては力学部と漫研だけで使用している。


今、隣を歩いている何処にでもいる美人、言うまでもなく佐久間先輩である。4月からの短い間だが数少ない部活の後輩として良くしてもらっている。先輩には感謝するかぎりだ。


部室の鍵を先輩が開ける。


...カチャ


「不便だよねー、鍵が1つしかないのは」


...ぱたり


「佐久間先輩、今日だけは冷蔵庫に近寄らないでください。」


なんだかんだでプリンは無事に冷蔵庫へと移動された移動された。


「じゃーね!鮫島くん、またお昼休みに」


「はい、また」


・・・・・・


今日の授業は何一つ頭に入らなかった、かろうじてノートはとってきたものの、4校時の授業が終わるまでずっとプリンの事を考えていた。


スキップしたくなる衝動を抑え一歩ずつ慎重に部室へと向かう。渡り廊下を歩いていると


「鮫島くん...はあ、はあ」


走ってきたのだろうか息を切らしながら、そして血相を変え彼女は続けた。


「プリンが...なくなってるの!」


この瞬間僕の思考は停止した。



・・・・・・・・・


1ヶ月に1回くらいのペースで書いていけたら...と考えています。


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