斬新なアイデア
出版社の打ち合わせ室でテーブルを挟み、二人の男が向かい合う形で座っている。一人は漫画の編集者であり、もう一人は自分の作品を持ち込んだ漫画家志望の男である。
編集者の男は困惑した表情で言った。
「う~ん、アイデアはいいんだけどねぇ…」
「ダメですか?」
「個人的には、このアイデアは好きなんだけど…。個人的にはね」
「僕はこの作品に賭けてるんです!! 自分で言うのもなんですが、世界のどこを探しても、こんな面白いアイデアの作品はないと思ってます!!」
「意気込みはわかるよ…、でもねぇ…」
「お願いします!!」
尚も漫画家志望の男は食い下がる。
「どうしても漫画家になりたいんです!!」
「…はっきり言うよ、君の作品はうちには合わない。いや、他の出版社でも同じだ。いいかい? 君の作品を読む為にしなければいけないこの作業は手間なんだ」
そう言うと、編集者はテーブルの上に置かれた何も描かれていない白紙の原稿を手に取り、裏からライターの火で炙り始めた…。




