第1話
璃空たちがエスを食い止めている場所は、ちょうどこちらの世界とあちらの世界の狭間にあるスポットのような場所だ。
そこへ次々と現れるエス。
エスの戦闘員は人間ではない。精巧に作られたアンドロイド型ロボットである。完全に破壊するためには、目とおぼしきところにあるチップを打ち抜くこと。
一般市民からバリヤに配属された怜などは、最初はロボットだとわかっていても、なかなか引き金を弾けなかったようだ。しかしそれもはじめのうちだけ、今では疾走しながら続けて両目を打ち抜くことが出来るほどになっている。
けれど、なぜエスが戦闘を機械頼みにしているのかは未だにわからない。そればかりか、次元の向こうがどのようになっているのかさえつかめていない。彼らがなぜ攻撃をやめないのかも。
というのも、さすがの潜入班も、ひとつの情報も得ていない世界へ人を送り込むわけにはいかないからだ。
バリヤの戦闘チームは何組もあるし、彼らは優秀なので、(イグジットJ)はもちろん、(イグジットE)においても、苦戦を強いられることはあっても、こちらに侵入してくるエスのロボットを制圧は出来る。
ただし相手は疲れを知らないロボットのこと。戦闘が長引いて犠牲者が出る事もある。すきをぬってロボットがスポットから街へ入り、建物を壊したり、一般市民を襲ったこともあった。
いつまでこの争いが続くのか。話し合いは出来ないのか。何か打つ手はないのか。このままではエンドレスでロボットを破壊し続けるだけだ。
そんな時に、バリヤの開発チームが新しい装置を作り出した。
超小型の、音声画像転送装置。
銃に装填してエスロボットの目に撃ち込むと機動する。
破壊を免れたロボットはそのまま向こうに退却していくので、その中に装置を撃ち込んだロボットを紛れ込ませる作戦だ。これは璃空のチームが請け負って、先日(イグジットJ)で成功させたばかりだ。
ただし転送されてきた画像には、特に変わったものは写っていなかった。
と言うのも、Jのロボットはあちら側へ帰ると、すぐに格納庫のようなところまで搬送されて、そこで点検と充電をして次の戦闘に備えるらしい。
薄暗い通路を少し移動して、搬送ベルトコンベアに乗るロボット。着いた所にはベッドのような台と円い板がある。損傷の激しいものは台に寝かされてまた違う場所に移動し、そうでないものは簡単に点検を行った後、円い板に乗ると充電が開始される仕組みになっているらしい。充電が始まったロボットはすべての機能を一度停止させるらしく、そこで映像も途切れてしまっていた。
一つわかったことは、ロボットを点検する作業員が、ほとんど女性であるということ。男性もいるにはいるが、数えるほどでかなりの年配者ばかりだ。
この映像を見る限り、(イグジットJ)の格納庫なら人間を潜入させてもそんなに危険はなさそうだと判断した上層部が、第4チームに指令をしてきた矢先、エスのやり方が変わった。