第5話
崩れ落ちる柚月を見た第1チームの面々は、作戦が失敗したのだと思った。しかし、
「柚月!」
床に倒れてしまう直前に柚月を抱え込む璃空を見たとたん、皆の顔に笑顔が戻る。
「柚月!なぜ?」
「指揮官!」
「しきかーん」
「Commander」
口々に叫ぶチームの声にあたりを見渡す璃空。
「成功したんですね、良かった。指揮官、大丈夫ですか?」
魯庵のその声にしばらく考え込む様子だった璃空は、ふるふると2度ほど頭を振ると、顔を上げて言った。
「魯庵、柚月はなぜこんな危険なところにいる?」
「貴方を救うために。貴方にかけられた魔方陣をとくためにですよ」
ああ、そう言えば、ダフネに顔を捕まれたとこからの記憶がとんでいる。ならば、経過は良くわからないが柚月は自分を助けるためにここへ来たのか。
しかしアンドロイドの攻撃は続いている。こちらに弾が当たらないのは魯庵が結界を張っているせいだろう。とは言え今はゆっくりしている場合ではなさそうだ。
「わかった、説明を受けている暇はないようだな。とにかく柚月を安全なところへ」
言いながら柚月を抱き上げて移動しようとしたとき、
「そいつは俺たちが請け負うぜ」
現れたのは、忠士の率いる第4チームだった。
どうやら第1チームを追ってきてくれたらしい。
忠士たちは潜入だけではなく、人質の救出や犯人の説得などの任務にもついているため、それ用の訓練も受けている。彼らなら安心して柚月を任せられると、璃空はやってきた第4チームのメンバーのひとりに柚月を引き渡した。
「くれぐれもよろしく頼む。君たちも全員無事に帰ってくれよ」
柚月を任された第4チームのメンバーは、彼女はともかく自分たちの事まで気づかう璃空に、
「はい!必ず。安心して任せて下さい!」
と、少し上気したような表情で言った。
璃空はそんな彼らを頼もしく見ていたが、忠士に向けても頭を下げながら言う。
「広実、頼んだぞ」
「へいへーい。実はうちにも最近つよーい味方が増えてね。おい、ネレイ、結界!」
「もー、人使いが荒いなぁー広実指揮官ってば。ホイ。じゃじゃーん!結界完了!」
すると、魯庵のとはまた少し違う感覚のバリアが、璃空たちのまわりに張りめぐらされたのがわかる。
「うちの新人。異界からきたネレイだ。よろしくな」
「以後、お見知りおきを~。魯庵さん、もうそっちの結界は閉じてくれてもいいよー」
「助かりました。実はそろそろ休みたかったのですよ」
「えっへへー」
ずいぶん軽い感じの新人だ。怜と良い勝負をしそうだ。異界から来て結界が張れるのなら悪魔だろう。
だが、それなら魯庵を帰さなくてもすむ。魯庵はダフネと対決するときに、どうしても必要な人員だが、一般人の柚月を、何の手立てもなしに銃弾の飛び交う中、連れ帰らせるのは避けたかった。
「ありがたい。魯庵は第4チームについて帰ってもらおうと思っていたからな」
「ああ、そうだな。けどこんな危険なところに長居は無用。では行くぞ。じゃ、またあとでな、新行内」
忠士は第4チームに素早く指示すると、ネレイの張った結界の中、その場を離れて行った。
璃空が忠士と話をしている間に、さすがというか、そのあたりにいたアンドロイドは、ほぼ第1チームの面々が倒していた。璃空は誰ともなく話しかける。
「制御装置のある部屋へは?」
「第3チームと第8チームが向かっています。それと技術班」
「了解。それなら俺たちもそこへ向かう、ただし」
話しながらも璃空たちは油断なく、攻撃の手をゆるめない。
「?」
「魯庵、制御装置の前に玉座があって、白骨化した王が座っていたのを覚えてるな?」
「はい」
「その王がかぶっている王冠に、ダフネの契約印が張りつけられているんだ。おそらく生体反応を消さないような加工をして」
「!」
驚いて璃空を見つめる魯庵。
「だからダフネからそれをうばう。魯庵なら王冠を奪えばダフネの契約を何とかできるだろう?」
ニヤリとしながら言う璃空。魯庵もそれに答えるようにニヤリとする。
「そうですね、出来るでしょう」
「よし!決まりだ。第1チームはこれから玉座の間に王冠奪還に向かう!ブライアン、怜、先鋒を切れ。タミーは後方で援護しろ。魯庵はなるべく俺から離れるな。力を温存しておいて、ダフネとの対決に備えろ」
大きくうなずく第1チーム。
「では、行くぞ!」
走り出すメンバーたち。怜が嬉しくて仕方がないというように飛び上がりながら叫ぶ。
「指揮官!帰って、キタ―――!」




