第3話
上層部とのやり取りのあと、通信を切った手塚は、大きなため息を一つついた。
「やーれやれ。お偉方のお相手は疲れるぜ、まったく」
そう言っておもむろに皆を振り返り、話し出す。
「それでは、ここからが本格的な対策会議だ。まず、さっきお偉いさんが早急に、と言った出入り口の強化は、こちらの作業用アンドロイドチームと共同で、建設技術の第7チームに任せる。シルヴァ王妃、申し訳ありませんがしばらく貴女の大事な人民をお借りしますよ」
「ええ、喜んで」
「ありがとうございます。では、それ以外。制御装置の奪還と、新行内指揮官の救出についてだ。魯庵、分析画像を持ってきたな?」
「はい、ここに」
言いながら魯庵は、パソコンを操作して内容をひととおりスクリーンに映し出す。
最初に壁の向こうに出てから玉座の間までの見取り図。
次に制御装置。
そして最後に璃空が写る。
画像が璃空に切り替わったとたん、ダンスフロアの出入り口でガチャンとカップのぶつかる音がした。そこには、会議用のコーヒーを用意していたのか、慌てて倒したコーヒーカップを元に戻す柚月の姿。
「す、すみません」
小さく頭を下げながらも、画像から目を離せないようだ。魯庵はいたたまれないような気持ちを振り払って説明を始める。
「まず最初に見取り図です。壁を出てから玉座の間までの経路がこれです。ここまでの距離はかなりありますが、たやすく移動はできるはずです。しかし最新の状況がどう変わっているかはわかりません。次に制御装置。これはたぶんもう起動済みでしょう。それにより、ロボットの攻撃が激化するのは致し方ありませんね。相応の覚悟で行くのが賢明です。最後に…」
魯庵はチラッと柚月の方を見やって、また説明を始める。
「新行内指揮官の状態です。彼の目を見て下さい」
璃空の瞳が大写しになる。中になにやら文様のようなものが見て取れた。
「これは指揮官を操るために、ダフネが使った魔方陣です。これ自体の打ち消し魔法は詳しく調べればすぐに用意できますが、問題は打ち消し方にあります」
「と言うと?」
手塚が聞く。
柚月は皆に配るお茶の用意をしながらも、魯庵の言葉を聞き逃すまいとして必死だ。
「はい、打ち消しの魔方陣を誰かの目に焼き付けて、指揮官の目と照準を合わせなければならない。その役目を誰が負うか」
しばらく誰もが考え込んでいたが、誰も何も言わない。くるっとまわりを見渡していた怜が見かねてか手を上げる。
「はいはーい、オレがやります!」
するとそこまで黙って話を聞いていたルエラが、おもむろに立ち上がって話し出す。
「ダメよ~。打ち消しの魔法はね、彼が身も心もゆだねている人が行うのが最良なの。本来なら信頼しあってる奥さんが一番良いのだけれど、彼ってまだ独身だもんねー」
ルエラは皆の顔を見回しながら、いたずらっ子のような顔で言う。
「ルエラ!」
すると手塚が怒ったようにルエラの話を止めようとする。けれどルエラは、そんなことはお構いなした。
「困ったわあー。あ、でも! 奥さんになってもかまわないって言うほど新行内くんと信頼し合ってる人なら、きっと務まるはずよね~。どこかにいないかなぁ」
「ル・ルエラ!いいかげんに…」
「私が行きます」




