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バリヤ ~ barrier  作者: 縁ゆうこ
クイーンシティ
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第1話


 手塚リーダーは、一般人であるルエラがミッションに参加すると聞いてしぶる上層部を、さすがという手腕で説得した。

 あれほど心配していたにもかかわらず、腹をくくれば手塚の行動は素早く的確だ。


「ただし、ミッション当日は俺も現場へ行くからな。これだけは絶対譲らねーぜ」

「OKに決まってるじゃない。私も直人 (なおと)さんにいいとこ見せたいわ~」

「…まったくお前って奴は」


 その後の打合せにより、魯庵とルエラはあらかじめ鏡に入り、それを銃かライフルに装填して、退散していくロボットのすきまから、あちらの世界へ撃ち込むという作戦になった。


 というのも、どうもあちらの世界には、悪魔が渡れるような鏡がなさそうなのだ。

「やたらと女が多いのに、鏡がないのか?」

「いえ、鏡がないわけではなくて、どうもこちらの世界とは構成している物質が違うようで、通り抜けようと試みましたが、無理でした」


 そうなのだ。当初は誰もが考えたこと。

 魯庵なら鏡を使えばたやすく向こうへ行けると。

 けれどもあまりに情報がなく、ましてや一人で行かせるわけにはいかないと、鏡を使った作戦には璃空が首を縦に振らなかったのだ。

 今回はルエラがいるので、極力危険なことは避けようと、一も二もなく鏡を使う事にしたのだか、念のため魯庵が先に試してみた結果がそれだった。



 そしてミッションの当日。

「じゃ~行って来るわね、直人さん」

 そう言ってぎゅうと手塚にハグして、ルエラは鏡渡り用の子猫ほどのサイズに変身する。

 魯庵はもう鏡の中へ入っていたので、そのあとを追ってスウーと吸い込まれるようにルエラの姿が消えた。

 と、まるで待っていたかのように、次元の壁が光り出し、ロボットが次々姿を現す。


「ヒュー!、本格的な戦闘は久々だから、腕が鳴るねぇ」

 そう言うのは忠士。

 今回は各チームからメンバーが何人か第1に配属されていた。魯庵がいない事がひとつと、もうひとつは、ブライアンが鏡を撃ち込む役目を担っているので、それに専念できるようにだ。

 

 ドンドン!と的確にロボットの目に銃を撃ち込む忠士。

 第4チームは戦闘専門ではないが、忠士は毎年ポリスの射撃大会で、ブライアンと1位を奪い合うほどの実力の持ち主だ。


「お前んとこのチームは、やっぱ安心感があっていいねぇ。さあーて、どうやってロボットさんを退散させるんだったっけ?」

 軽口をたたきながらも戦闘の手を緩めない忠士は、璃空に作戦の確認をする。

「何度も打ち合わせしただろう?経験上、両腕もしくは片足を失って戦闘不能になったものは、すぐに帰って行く」

「オーライ。お?ちょうどいいタイミングでお出ましになったのがいるぜ。ブライアン、すぐ退散させてやるから、用意しててくれよ」


 見ると、たった今入ってきたばかりのロボットがいた。しかしそのロボットはそこから動こうとせず、状況を見るためか顔だけをくるりと動かしている。

 忠士はニヤリと璃空に笑いかけて言う。

「お前は右腕、俺は左腕な」

 言うが早いが、忠士はドォンとロボットの左腕を吹き飛ばす。璃空はチッと舌打ちして「勝手なことを言うな」と言いながら、的確に右腕に弾丸を撃ち込んだ。


 ピピピッと目が光ったロボットは、くるりと後ろを向いて、入ってきたばかりの次元に帰ろうとしている。

「かわいそうなロボットちゃん。で~も、璃空くんと初めての共同作業だ。忠士嬉しい~」

「!」


 璃空の方を向いてにんまり笑った忠士のすぐ目の前を、ギュイーンと音がしてライフル弾が通り過ぎる。それは、忠士の方へ向かおうとしていたロボットの目に飛び込んでいった。そのまま崩れ落ち、バラバラと砕け散るロボット。

「バカなこと言ってると、命を落とすわよ」


 あきれたようなタミーの声がした。彼女はライフルを持っているので、あまり走り回ることができない。そのためいつも後方からチームを援護しているのだ。忠士は少し焦りながら「ごめん」と手を合わせている。


 そんなやりとりをしている間に、くだんのロボットが次元へ入るほんの少しの隙間を狙って、ブライアンは鏡を装填した特別銃を構えた。


ズギューーン


 と、普通の銃より重苦しい音がして、鏡はロボットの足下を抜け、次元のかなたへ吸い込まれていった。

「ミッション完了」

 ブライアンが静かに言った。





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