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第2話


「失礼します」

 部屋のドアをノックして「どうぞ」と中から声がしたのを確認してからドアを開ける柚月。中開きのそれを先に立って開けてから、璃空を中へ通してくれる。


 窓から外を眺めて考え事をしている手塚リーダーが目に入った。こちらを振り向こうとしないリーダーの様子を確認して、璃空は通りすがりにドアを手で押さえている柚月の頬を優しくなでた。

 いたずらっぽい目で、驚く柚月に笑いかける。


「今澤くん。セクハラする奴は殴っても良いことになってるんだぜ。この部屋ではな」

 どうしてわかったのか、手塚リーダーはこちらを振り向きながら言った。

「それと、そんな奴にはお茶も出さなくていい」

「あいかわらずですね、リーダーは。背中に目がついてるんじゃないですか?」

「俺の千里眼はいつでもどこでも360度さ」

 そんなふたりのやり取りを、すこし頬を染めながら聞いていた柚月は、

「どうぞごゆっくり」

と、いつもより堅めの口調で言って部屋を出て行った。


「公私混同も度が過ぎると嫌われるぜ、新行内」

 ニヤニヤしながら言う手塚リーダーは、当然のことながら璃空と柚月の関係も知っている。鷹揚にソファを手で示して「まあ座れ」と言いながら、自分もドッカリとソファに腰を下ろした。


「いつもながら、お前が出してくる情報はぶっ飛んでるねえ」

「昨日のは、本当に偶然です。それにメールにも書きましたが、広実があの映像を見せてくれなければわからなかった。すべて彼のおかげです」

「へーえ、お前が広実を褒めるなんて。何かの前触れかな?ははは、まあそんなに睨むな」

 手塚は璃空が忠士のことを苦手にしているのも知っている。


 手塚は各チームの指揮官一人一人について、家族構成や生い立ちから、独身者なら恋人の有無、趣味や嗜好、性格や考え方の傾向まですべて把握している。

 なぜならチームの指揮官が、バリヤを根底から支えてくれる隊員たちのリーダーだからだ。


 彼らチームの指揮官は、手塚と同じようにチームの人間のことはだいたい把握しているだろう。が、人が集まれば良いこともあれば、悪いことも起こる。そういう時に事を収めるのが責任者の役目ではあるが、そういつも上手くいくとは限らない。


 問題を抱えてしまった時に、本人がどんな状態になるかも千差万別。

 無口になる奴、反対に饒舌になる奴。手塚はそれらに常に気を配り、問題が大きくなる前にちょっとしたアドバイスをしてくれるのだ。

 もちろん最終的な決断は、責任者が考えて下せるようにして。


 仕事についても手塚は決して自分の威厳を振り回すようなことはしない。かなり自由に立ち回らせてくれるし、失敗してもとがめず、上からの苦言は事前に身体を張って食い止め、なぜこうなったのかを考えるように言われる。

 反面、成果を出したときはこちらが照れるほど大いに褒めてくれる。

 とにかく男気にあふれた頼りがいのある上司である。





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