招かれざる客と事件1
女の子が玄関の扉を開けると、外の光があたり、容姿がはっきりとわかる。
栗色の髪が肩までまっすぐ伸び、大きな金色の目をした十歳前後の色の白い子であった。
外には4人の男と1人の少年が立っていた。
「146番、サティス・ガードルードは?」
黒くまっすぐな髪を一つに束ね、同じ漆黒の瞳の男が扉の前に立ち、
にらむようにしながら冷たく言い放った。痩せてはいるが、引き締まった体つきで威圧感がある。
その男の後ろでは、男三人がかりで緑の髪の少年を抑えている。
少年の両手は前で手錠で止められ、その上から鎖が幾重にも巻いてある。
それを外そうともがいているが、目の焦点が合っていない。口からは低いうなり声が漏れている。
その光景に大きな目を更に見開いて少女は戸口で固まってしまった。完全に目が覚めた。
ガンッ!!
「ひっ…」
そんな女の子にイラついたようで、黒い男が壁を殴った。
女の子は小さな悲鳴をあげ、女に渡された紙を見てかすれた声で返事をした。
「あのっ ルート・エヴァンズ様しか…えっと 入れることは…」
「十分だ。それは俺の名だし、アレに名はない。邪魔だ、どけ。」
そう言うとルートは細い女の子の腕を乱暴につかんだ。
「でも…」
「うるさい!」
女の子はすでに半泣き状態である。
突如女の子の背後から腕が伸び、腕をつかんでいるルートの手首をつかみねじりあげた。
開いた扉からの光がその人物の姿を照らし出す。銀の長い髪と紫の目をした、
女の子と同様に色の白い無表情な女であった。黒を基調にした服を着ている。
足元まで長い裾で覆われ、腕も袖口がやや開いているだけで肌の露出がとても少ない。
それが肌の白さを際立たせている。ただ、年齢を図ることができない。
十代後半の少女のような見た目でありながら、雰囲気はそれにふさわしくない、
大人びたものである。
ルートは顔をしかめ、少女から腕を離した。
ルートの手から自由になった女の子は自分の背後に立つ少女にしがみついた。
「サティ…」
手首をさすりながらにらみつけるルートを無視し、サティスはかがみこんで女の子を抱き上げた。
「マリ、大丈夫」
サティスは無表情であるにもかかわらずやさしく少女の頭をなでながら、扉の外に視線を投げかけた。
その視線が少年の上でぴたりと止まる。
「ルート、あなたがその彼を連れてきて。」
「しかしっ!!危険です、エヴァンズ様。130番!何を考えていやがるっ」
サティスの声を聞いた少年を押さえていた男たちが叫ぶ。
そんな男たちをひと睨みするとルートは少年の腕をつかみ家の中に入ろうとする。
「おい!」
「待ってろ」
ルートは追いすがろうとする男たちを一言で突き放すと、少年がもがいているのも
気に留めない様子で家の中へ入って行った。