結(或る村人は伝える)
そうじゃない 神の采配 的外れ
正しい事をしたようで「じゃないんだよ」って話。
いずれ、竜宮城や桃源郷の類になる。
むかしむかし 或るところに砂に囲まれたそれはそれは小さな砂の国がありました。
或る夜、ゴォオ…と低い魔物の声と共に地面が揺れ国を支えていた井戸水が枯れてしまいました。
水が枯れた事で作物は育たなくなり痩せ細った民から疫病が発生し始め困った砂の王子は民を代表して女神様に救いを求め祈りを捧げました。
祈りは女神に届きましたが現れたのは王子が想像していた黄金色の髪に美しい瞳の御使いではなく黒髪黒目の乙女でした。
乙女は派手な魔法を使えませんでしたが病んだ民に寄り添い土地に馴染む作物の選定や枯れた井戸ね代わりを生み出しました。
乙女は民が女神に祈った事を叶えましたが傲慢な王子は地味な乙女を疎ましく思いある日家臣に指示して階段から突き落としてしまいました。
女神様はそれはそれはお怒りになり遣わした乙女を取り上げ小さな砂の国を砂の底に深く深く沈め今も砂の国があったところには草木いっぽんも育たぬ土地になってしまったそうです。
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
「ねぇ、おかーさん。砂の国って僕たちがいた所なの?」
「そうよ。女神様が砂に国を埋めて仕舞う前に私達をこの隠れ里に導いたの。」
…そう、遠い昔。
折角女神様が遣わした聖女を忌み色聖女となじり大切に扱わなかった貴族や王族から聖女様が女神様の所に戻される事になった。
国を砂に埋めて仕舞われる前に女神様は我々を保管すると言ってこの土地に導いた。
文字通り私達は保管されあれから気の遠くなるような月日が流れたが隠れ里にきた時のまま私達は年老いることなく今に至る。
砂の国に居た時と違い病や飢えに悩むことはなくなったが子供は子供のまま成長しない。
かつて、帝国の歴史学者を名乗る旅人が里に迷い込んだ事があり里と里の外での時間の流れが異なる事は分かった。
旅人が里の外に出て帝国に戻ると数週間の旅だった筈が10年くらい過ぎていた…と風の噂で聞いた。
里の外に出れば変わるのかも知れないが今の安定した生活を手放す気にはならない。
私達の祈りが女神様に届いた結果が今なのかすらもよく分からない。
子供が成長しないのは残念だが逆を言えば変わらず愛らしいまま私の膝で眠ったりする。
まあ、この生活も慣れれば私は悪くないと思う。




