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20260201

作品の名前の割に投稿するのが二月の作品てどうなんでしょうかね。

エピソードタイトルの番号は思いついた日の日付です。

投稿頻度は気にしないでください。


 俺は絵本を持って名前も声も知らない誰かに絵本を渡す。


「なあに? 読んでほしいの?」


 おそらくそう言う優しそうな顔のお婆ちゃんでその人はしゃがみ込み俺に向かってページを開き始める。


「くつしたをなくしたねこ。あるひ、ねこのミミは――」


 読み始めると俺は向きを変えて走り出す。


「あらまあ」


 この時の顔が好きだ。


 俺は転生者だ。

 ラノベでよく見る社畜アラサーが子どもを助けるためにトラックに轢かれて異世界転生ってやつ。

 俺はその助けられる子どもがいない版。

 どうしてだか右も左も確認せずに道路を渡った。


 いい子をやって育ってきた俺はそんなにいたずらをしたことがなかった。

 この人生ぐらいいたずらしたっていいだろって考えて十歳ぐらいまではいたずらっ子でいようと思っている。


 母にとっては物は口に含まない、下手に動かない、謎に言葉が通じている気がするというちょっと変わった子だと思われているだろう。


 そんな俺は明日で一歳。


 医療に詳しいわけじゃないが、まともに喋れないのが不便。

 でも、歩けるなら、いたずらぐらい余裕だ。


 というわけで(?)毎日書店館に勉強しに来る長男について行って毎日絵本を誰かに渡してはどこかにいくを繰り返している。


「すみません、この子人懐っこくて飽きやすいんですよ~」


 母のお決まりの台詞だ。

 日本語じゃないので意味は分からんが、大体こんなのだろう。


「うう~~~~ッ」


 体をくねくねさせて逃げようとする。

 でも母には勝てない。


「う~~~ッ」

「ハアッ」

 

 ため息をつき俺を下ろす。

 走れないが全速力で逃げる。


 すぐの棚を曲がると窓辺で本を読んでいる女性がいた。

 見た目は高校生ぐらいで本を読む姿は美しい。

 天使のようだ。

 長い銀髪が一年この世界で過ごしたとはいえ黒髪文化だった俺には余計に変な感じがする。


 即座に次のいたずらはあいつに決めた。


 絵本コーナーに直行し、あの女の所に持っていく。


 俺に気が付いたやつは絵本を受け取り、隣のテーブルに()()()()()()

 そして奴は視線を読んでいた本に戻した。


 信じられない情景に俺は思わず目を開く。


「読んでもらえると思った? いたずら常習犯さん」


 小鳥のさえずりのように弱くまた優しい声で俺に話しかけた。


 なんと言っているか理解できない。

 でも、大人の勘というか言語マニアの勘というかそうにしか聞こえなかった。

 視線はこちらに向けないで話し続けた。


「いたずらしているつもりはないかもだけど、わたしはあなたにちょっとの時間でもあなたに絵本を開いてあげる気はないわ」


 こいつは俺に絵本を読む気がないと理解した。

 そして(絶対こいつに本を読ませてやる)とかいう謎の対抗心が生まれたのがこの時だ。


 あれから二年。

 俺は三歳になった。

 奴は毎日ここに来てあの席でいつも本を読んでいる。

 この世界に生まれてから今日までの三年間、知らない言語で話しかけられたらさすがに理解するようになってきた。


「読め」

「リュシオは天才だから読める」


 最近はこちらの言葉で話せるようにもなって来ている。

 ただ、滑舌が悪く、日本語と近い発音で言うならカ行とラ行が言いづらいが、会話は問題なくできる。


 今日俺がこいつ、ネフェルに持ってきたのはこの世界の経済の本。


「チッ」


 俺はネフェルの座る席のテーブルを挟んだ席によじ登って座る。

 そして文字が読めるようになってきてから疑問に思っていることがある。


「ネフェルが読んでいる本はどこの国の言語だ?」


 ほんの一瞬、ネフェルの口が動いた。

 いつも通り視線はこちらに向けないまま話し続ける。

 でも、一瞬ちょっと驚いたような視線の動きをした。


 調べた限りこの世界の文字はいつも使っているものだけで多少方言らしきものはある。

 でも、ネフェルの読む本はいつもどこの文字か分からない。


「遠い国の。っていっても一時期言語の本ばっか持ってきたことあるなら分かるかな」


 ちゃんと持ってきた本は確認していたんだ。


「……この世界に存在しないだろ」

「うん……やっぱりリュシオって転生者だよね」

「お前もだろ」


 そんな発想に至るのは同じ状況になった人だけだと思う。


「ええ。どこだろう。アジアとか?」

「I'm from America,idiiiot」(アメリカだよバ~カ)


 俺は咄嗟に英語でアメリカ人だと言った。


「嘘つき」

「……そういうお前はドイツか……フィンランドだな」

「偏見は良くないよ? 関係ないじゃない」


 ちょっと笑いながら喋る。


 まあでもネフェルの言う通りだ。

 前世なんて関係ない。

 俺は今、こいつに本を読ますという目標をクリアするだけだ。


「……その本はどこの言語なんだ? ドイツ語じゃないし、英語でも日本語でも韓国語でも中国語でもない。フィンランド語は知らんが、なんか違う気がする」

「正解はラテン語だよ」

「言語オタクが」


 ネフェルが読む本はたまに英語だったりドイツ語だったりするからいろんな言語が読める人だと思っていた。


「私の予想じゃリュシオの前世は日本。英語はともかくドイツ語も理解してそうだね。他にどんな言葉が喋れるのかな?」


 そこで初めて本を閉じ、こちらに視線を向ける。

 その瞳はすべてを見透かしたような淡い青だった。


「……日本語、英語、ドイツ語、韓国語、中国語が少しだ」

「教えて」

「その代わりこれ以外の言語を教えろ。……その前に。今まで読んできた本はどうやって手に入れた?」


 さっきチョロっと言ったが、俺は言語マニアだ。

 ……の割には社畜のせいであまり勉強できなかったがな。

 ネフェルは俺の知らない言語を他にも知っていそうだ。


「自分で書いた。ここにある本を翻訳したんだ。結構楽しいよ」

「その手があったか……前々から思っていたがこの世界、本屋はないよな。どういう制度なんだ?」

「元の世界にはないものね。ここが図書店っていっていうのは分かるよね」


 ネフェルの話じゃだと制度としては日本の図書館とほぼ同じ。

 でも、この世界には本屋がなく、税金みたいなので経営している。

 多く借りられた本が執筆者にお金が行くという制度で無料だ。


「なるほどなぁ……じゃあそろそろやるか」


 俺は椅子を飛び降りて走り出す。


「Wait here! I’ll go get some paper—first lesson is Japanese!」

 (紙とってくるから待ってろ! まずは日本語の勉強だ!)

「Du bist wirklich zu übermütig……あッ」(わんぱくすぎるでしょ……Ups!)


 転生者と言語オタクという接点からであった二人の物語。

 周りから見たら年の離れた仲良し姉弟みたい。

 これから先はまた、別のお話。


リュシオ可愛い

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