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休み時間の神事  作者: 山原喜寛
終章
7/8

新しい朝

気がつくと、しゅうは教室にいた。普通の教室に。時計を見ると、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴ろうとしていた。

しんじが隣で眠そうに欠伸をしている。「おい、もう四時間目だぞ」

窓際には名前も知らない女の子がいる。

しゅうは自分の胸に手を当てた。夢だったのだろうか。でも、心の奥で何かが確実に変わったのを感じていた。

「なあ、しんじ」

「ん?」

「お前、こたにのことって覚えてる?」

しんじが急に真剣な顔になった。「あ…ああ、覚えてるよ。二年前に転校していった…なんか、お前と何かあったんじゃないか?あの時、お前すげー落ち込んでたし」

しゅうは驚いた。しんじも何かを覚えているのかもしれない。

昼休み、しゅうは携帯を取り出した。そして、ずっと連絡を取っていなかった番号にメッセージを送った。

「こたに、元気?今度会えない?話したいことがある」

返事はすぐに来た。

「しゅう?久しぶり!もちろん、会いましょう!実は私も話したいことがあったの」

しゅうの心臓が跳ね上がった。

放課後、校門で待っていると、見慣れた姿が現れた。二年前より少し大人になったこたにが、やはり昔と変わらない笑顔で手を振っている。

「待った?」

「いや、今来たところ」

歩きながら、こたにが不思議そうに言った。「ねえ、今朝変な夢を見たの。昔の教室で、あなたと会話してる夢」

しゅうの足が止まった。「え?」

「なんだか、とても大切なことを話した気がするんだけど…思い出せないの」こたにが首を傾げる。「でも、とても温かい気持ちになって目が覚めたの」

しゅうは微笑んだ。やはり、あの出来事は二人の心に刻まれているのかもしれない。

公園のベンチに座ると、こたにが切り出した。「実は、ずっと気になってたことがあるの」

「何?」

「二年前の春、あなたがうちの前で何か言いかけて、結局言わずに帰っちゃったこと。あの時、何を言いたかったの?」

しゅうの心が温かくなった。こたにも、あの日のことをずっと気にしていたのだ。

「実は…告白しようとしてたんだ」

こたにの目が大きく見開かれた。「え?」

「でも、お前が困った顔をしたから、嫌がられたんだと思って逃げちゃった」

こたにが驚いて首を振った。「困った顔?私、全然困ってなかった!むしろ、すごく嬉しくて、なんて返事しようか考えてたの。そうしたら、あなたが急に謝って走って行っちゃうから…私、何か悪いことしちゃったのかと思った」

二人は顔を見合わせて、そして同時に笑い出した。

「なんだよそれ」しゅうが笑いながら言った。「完全にすれ違いじゃん」

「本当にね」こたにも笑いながら涙を浮かべている。「二年間、ずっとモヤモヤしてたのよ」

笑いが収まると、しゅうは真剣な顔になった。「今さらだけど…改めて聞かせて。俺と付き合ってくれる?」

こたにが満面の笑みで頷いた。「うん。私も、ずっとあなたが好きだった」

夕日が二人を優しく照らしていた。今度は時間を気にすることなく、ゆっくりと手を繋いだ。

「なんか、運命みたい」こたにがつぶやいた。

「うん、きっと何かが俺たちを引き合わせてくれたんだ」

その時、しゅうのスマホが鳴った。しんじからのメッセージだった。

「おい、うまくいったか?応援してるぞ!」

しゅうは微笑んで返事を打った。「ありがとう。うまくいったよ」

こたにが不思議そうに聞いた。「しんじ君、何を知ってるの?」

「親友の勘ってやつかな」しゅうが笑って答えた。

二人は手を繋いだまま、夕焼けの中を歩いていく。今度こそ、同じ時間を、同じ想いで歩いて行く。

空の向こうから、誰かが見守ってくれているような、そんな温かさを感じながら。

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