五分間の真実
場面が再び変わる。二年前の春の夕方。桜が舞い散る中、こたにの家の前にしゅうが立っている。
「こたに、俺…」
過去のしゅうが震え声で告白を始める。現在のしゅうは、その光景を客観的に見つめていた。
「付き合ってください」
過去のこたにが驚いたような顔をする。そして少し考えてから、口を開こうとした瞬間——
時計が午後三時十五分を指している。
こたには何かを言おうとした。しかし、その時しゅうの携帯電話が鳴った。慌てた過去のしゅうが電話を見て、そして周りを見回す。近所の人に見られるのが恥ずかしくなって、「やっぱり無理だ、ごめん」と言って走り去ってしまった。
時計は午後三時二十分を指していた。
「待って」現在のしゅうが叫んだ。「俺はこたにが何か言いかけたのを見たんだ。だから拒絶されたんだと思って——」
場面がもう一度変わる。今度はこたにの視点だった。
こたにがしゅうの告白を聞いて、嬉しそうに「私も——」と言いかけた瞬間、しゅうの携帯が鳴る。そしてしゅうが周りを見回して、慌てたように「やっぱり無理だ」と言って去っていく。
こたにの時計は午後三時二十分を指していた。
しかし、こたにには、しゅうが最後に「ごめん」と言った言葉しか聞こえていなかった。自分が告白を受け入れようとしたのに、しゅうに拒絶されたのだと思った。