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記憶の断片
「こたに…」
しゅうは無意識につぶやいていた。こたに。二年前に転校してしまった彼女の名前だった。
『正解』
声が再び響く。
『第二の課題。なぜ彼女はいなくなったのか』
しんじが困惑した顔でしゅうを見た。「おい、何の話だよ」
しゅうは震える手で机を握りしめた。なぜこたにがいなくなったのか。それは——
「俺が…俺が振ったからだ」
言葉にすると、胸が締め付けられるように痛んだ。あの日、こたにの家の前で。彼女が何か言いかけたとき、しゅうは「やっぱり無理だ」と言ってしまった。こたにの表情が曇ったのを見て、しゅうは自分が拒絶されたのだと思った。
『本当に、そうか?』
「え?」
『第三の課題。真実を見つめよ』
突然、教室の景色が歪み始めた。机や椅子がぼやけて、まるで水の中にいるような感覚になる。そして気がつくと、しゅうたちは全く違う場所にいた。
見慣れた住宅街。そしてあの時と同じ、こたにの家の前だった。