消えた五分間
三時間目が終わったチャイムが鳴った瞬間、世界が止まった。
いや、正確には止まったわけではない。しゅうの腕時計は確かに動いている。秒針がカチカチと時を刻んでいる。でも、教室にいるはずの他のクラスメイトたちの姿が消えていた。
「え…?」
しゅうは困惑しながら立ち上がった。さっきまで隣の席にいた田中が、前の席にいた佐藤が、みんながいなくなっている。教室には、しゅうと、後ろの席のしんじと、窓際の席の女の子だけが残されていた。
「おい、どういうことだよ」しんじが震え声で言った。「みんなどこに行ったんだ?」
窓際の女の子は青ざめて窓の外を見つめている。「外も…誰もいない」
しゅうは慌てて廊下に飛び出した。長い廊下には誰もいない。隣のクラス、向かいのクラス、全部覗いてみたが人影はない。まるで学校から人だけが消失したかのようだった。
「なんだよこれ…」
教室に戻ると、突然どこからともなく声が響いた。
『課題を与える』
三人は身を寄せ合った。声の主は見えない。
『第一の課題。この教室で最も大切だった出来事を思い出せ』
しゅうの胸がざわめいた。最も大切だった出来事。それは——