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第8話「わたしが、わたしであるために」

——山道を歩くたび、空気が少しずつ荒々しくなる。


ユウとニーチェくんは、再び冒険の途上にあった。だが今日は、明確な目的があった。


「リラに会うんだ」


廃墟の訓練場での戦い以来、ユウは彼女の言葉が頭から離れなかった。


「……自由であるって、なんなんだろうな」


そうつぶやくユウに、ニーチェくんが珍しく真面目な顔で答える。


「自由とは、“誰のせいにもできない”ということだゾ。だからこそ、キミ自身の“意志”が試される」


そのとき、木々の向こうから一筋の火線が走った。


「また来たのか、少年」


そこにいたのは、黒いコートを翻すリラ。彼女は崖の上から静かにユウを見下ろしていた。


「教えてくれ、リラ。お前は、なんでそんなに“強い”んだ?」


少しの間があって、リラは降りてきた。そしてぽつりと語り出す。


「私は幼い頃、“正しさ”の檻の中で育った。“女の子らしくしなさい”。“期待に応えなさい”。——自由なんて、どこにもなかった」


リラは森の奥へと歩き出し、ユウも後を追う。彼女の背中は、どこか脆さを秘めていた。


「だから私は、戦うことでしか、自分を守れなかった。強くならないと、“わたし”が消える気がして」


ユウは拳を握りしめる。


「……わかるよ。俺も、“誰かの期待”に自分を合わせて生きてた。自分の声が、どんどん小さくなってさ」


リラは立ち止まり、振り返る。


「じゃあ、なぜ今ここに立っている? 誰の声に従って?」


「……自分の声に、だ」


そう言ったとき、リラの口元がわずかに緩んだ。


「なら、ついてこい。フィロソファイトを見つけに行く」


「フィロソファイト?」


「“思想の結晶”。自分の信じる哲学が強ければ強いほど、その痕跡が結晶となって現れる」


——新たな目的と、仲間とともに。


ユウは歩き出す。その一歩に、確かな重さと熱が宿っていた。


——“わたし”という存在を守るために、誰かと共に戦えること。


それは、“孤独な自由”の先にある、新しい“意志”のかたちだった。


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