表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

第12話「世界に問いを」

——静寂が重く降りていた。


虚無の影を越え、幾多の思想官との対話と戦いを乗り越えたユウたちは、ついに創世連盟の本拠——“玉座の間”へと足を踏み入れた。


そこは無数の書物が宙に浮かび、言葉そのものが粒子のように空間を漂う異質な空間だった。中心には、輝く球体状の装置——「思想の書庫」が鎮座していた。


「ここには、世界中の人間が積み上げてきた“思想”のすべてが記録されている」


静かに現れたのは、創世連盟の“思考核”と呼ばれる存在だった。


「君は“選ばれし神の候補”だ。この書庫を通じて、世界に一つの“秩序”を敷くことができる。理想の秩序か、混沌の自由か。今こそ選ぶときだ」


リラが一歩踏み出し、剣に手をかける。


「そんなの、決める必要なんて——」


だがユウが制した。


「……待って。俺は、考えたい」


ユウはゆっくりと思想の書庫に近づいた。その表面には無数の思想が流れ、彼の思考に直接訴えかけてくる。


——「すべてを理性に委ねよ」

——「理想なき自由は混沌だ」

——「善とは最大多数の幸福」

——「神が死んだなら、人は己を律せよ」


ユウは震えながらも、しっかりと球体に手を置いた。


「これが……人間の思想の重み……」


その瞬間、彼の内なる“力”が呼応する。永劫回帰の力だ。


意識の深層が拡張され、彼の思考はあらゆる選択肢を想定し、世界の未来をいくつも同時に演算し始める。


——だが、そこでユウは気づく。


「……選べない」


「え?」とリラが振り返る。


「誰かが正解を決めるって、つまり他のすべての“可能性”を否定することだ。そんなの、俺にはできない」


静かに、しかし確かにユウの声は響いた。


「俺は、問い続けたい。何が正しいかじゃない。どう“選び続けるか”なんだ」


その瞬間、思想の書庫が軋み、ユウの暴走する思考が臨界に達する。


空間が歪み、すべての思想が光となって渦を巻く。


「ユウ!」リラの叫びが届くも、ユウは意識の深みに沈んでいく。


——そして始まる、世界の崩壊と再構築の連鎖。


永劫回帰の力が、世界そのものを巻き込んで動き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ