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最初に何から始めるかって言うのはとても大事なことだと思うんだ。

 俺がの視界に入ってきたのは薄暗い路地裏だった。足元にあったはずの魔方陣はいつの間にか消え、場所も変わっている。神様にはもうほとんど力が残っていなかっただろうに、流石だよ。


「人目につかない場所に転生できたのはいいんだけど、まずは何から始めようか。ただ漠然と魔王を倒すという目標に向かって突き進むにしても段階というものがあるはずだよな」


 ここは考え事をするのに適した場所かもしれない。静かで暗くて割とリラックスできる。


 魔王を倒すためにはどこにいるのかわからないと話にならないよな。でも、わかったからと言って速攻戦いを挑むのは早計というものだ。準備をしっかりしたうえで戦うことで少しでも勝率をあげる努力をしなければならない。仲間を集めてもいいだろうな。そうだ、一人で魔王討伐って言うのも味気ないし、仲間を集まるところからはじめよう。この世界にも魔王を倒すために勇者とかもいそうだし。


「仲間に求める条件は、強さだな。それ以外は考慮しなくていいだろう。いくら正義感の強い世界救いたいマンが来ても実力がともわなければただのあほだ。なんの役にも立たない」


 俺は最初の目的を決め、薄暗い路地裏から明るい道へ出ていく。


「なんだ、結構人いるじゃないか。魔王から世界を救ってくれって言われた割には平和そうだな」


 ひとたび大通りに出ればかなりの人たちで賑わっていた。

 俺の想像ではもっと閑散とした町だったんだけどな。これでも人が減ってるってことなのか? 魔王がいる世界だし、脅威がまったくないってこともないだろ。


 ちょっと誰かに話を聞いてみるか。できるだけ怪しまれないように聞かないとな。あんまり常識的なことを聞くと、え? なにこの人、なんでそんなんことも知らないの? と不信に思われてしまう可能性が高い。神様の話し方のニュアンスからすると、この世界に魔王がいることは常識なはずだ。なんせ、この世界の神様が自ら討伐に赴いているくらいだしな。どのラインなら聞いても怪しまれないんだ? 魔王を討伐しようとしている人はいますかとかか。いや、道を歩いてるだけの一般人に聞く質問じゃないな。


 無駄に考え込んでしまうが、答えが見つからない。大勢の人々が目の前を通り過ぎる中、俺は一人壁にもたれかかっている。ここで、有益な情報をどれだけ収集できるかによって俺の旅の行方を左右するかもしれないのだ。仲間を集めようにもそれ以前の段階で躓いてるわ。もう、一回考えるのをやめて俺の生活費を稼ぐことにするか。お金がないと何もできないしな。


「あの、すいません。この町で何か仕事とかってありませんか?」


「おいおい、どうした急に。兄ちゃん金に困ってるのか? すまねぇな、俺も困ってる人に手を差し伸べたいところだが生憎恵んでやれるほど裕福じゃないもんでな」


 適当に歩いていた優しそうなおじさんに声をかけてみる。

 なんでこの人かと聞かれたらこのおじさんだったら話しかけれそうだなって思っただけでほかに理由はない。


「いや、そんな恵んで貰おうとか思ってないですよ。俺は金を稼ぐ手段がないか知りたいだけです」


「そうかい、うーん。偏に仕事と言われてもだなぁ。兄ちゃんはなにか得意なことはあるかい? もしなにかあればそれをもとに紹介できる仕事があるかもしれないぞ」


 俺の見込んだ通り優しい人だ。

 全くの他人の俺のためにここまで親切にしてくれるなんて……でも俺の得意なことってなんだ? フィギュアを作れるとかでもいけるかな。でも、売り物にできるレベルまではまだ至れてないんだよな。そうなると、神様から貰った力かな。


「こう見えて、腕っぷしには自信があります」


「おお、それじゃあ、冒険者になればいいじゃねぇか。この世界も魔王なんて物騒な奴が現れてからはモンスターと戦う冒険者が今一番稼げる熱い仕事だ。もちろん、危険と隣り合わせだがな。それでも構わないなら己の力次第ではいくらでも稼げる仕事だぞ。でもこれくらいは誰でも知ってるか。すまねぇ、ほかに腕っぷしがあるってだけで雇ってもらえる仕事は思いつかねぇな」


 おっと、この世界では冒険者って仕事はメジャーなものなのか。これは知ってたけど忘れてた体でいかないと怪しまれるな。ありがとうおじさん。


「ほんとですね。冒険者の存在を完全に失念していました。ありがとうございます」


「いいってことよ。困ったときはお互い様だぜ。この町の冒険者協会は向こうにあるから行ってみるといい。それじゃあ、頑張れよ兄ちゃん」


「はい、この世界のために頑張ります!!」


「目標がでけぇな。まあ、男はそのくらいじゃなきゃな。いつか兄ちゃんが有名な冒険者になった時は俺にサインでもくれや。楽しみにしてるぜ」


 俺はおじさんに手を振り、教えてもらった方向へ歩く。


 この世界にはこんなにもいい人がいるんだな。もしかしたら、俺がとんでもない幸運でおじさんを引き当てた可能性もなくもないが、きっと善人ばかりの素晴らしい世界なんだろう。


 モンスターと戦う冒険者か。もしかしたら魔王討伐を目標にしてる奴らもいるかもな。金も稼げて情報も集めれそうだ。これは幸先の良いスタートを切れたんじゃないか? よっしゃこの調子で魔王討伐に向けて突き進むぞ。

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