辛そうなおじいちゃんを見てると心が痛んで仕方ない。頑張っておじいちゃん!!
「では、早速おぬしにわしの力を授けよう。適性の高さでは問題はないだろうが念のため注意してくのじゃぞ」
「怖いこと言わないでくださいよ。これで俺の器がもたなくて死ぬなんてことになったら一生恨みますよ」
いくら何でもそれはない。ここでさらに死ぬようなことがあれば俺は死して尚、死ぬという謎の状態へ足を踏み入れてしまう。神様だったらどうなってしまうか知っているかもしれないが、俺には皆目見当もつかない。
「心配しておるようなことは起きんから安心するのじゃ。わしがさじ加減を見誤るわけがなかろう? おぬしがギリギリ耐えられるところまで力を流し込んでやろうじゃないか」
そんな便利なことが可能なのか? それだったら俺も死ぬ心配はなさそうだな。いまいち、まだ神様のことを信じられない俺がいるが、そこは目を瞑ろう。
「お願いします。俺に力をください」
「ああ、行くぞい。これでわしは力の大半を失ってしまう。後のことはおぬしに任せたぞ」
パァッとまばゆい光が俺の体に流れ込んでくる。
すごい、力がみなぎってくる。まだ全然力の譲渡を完了してないのに、万能感に浸ってしまう。
今の俺なら地球すら砕けてしまうんじゃないだろうか。
「余裕そうな表情じゃの。まだ行けそうか? これで大体半分じゃ」
「大丈夫です。体のどこも違和感ありません。まだまだいけます!!」
俺がそう言うと、神様はまた俺に力を流す。
もう俺がどれほどの力を保持しているのか想像もつかない。
「どうじゃ? そろそろ……げ、限界じゃろう?」
神様が滝のように汗を流しながら聞いてくる。
しかし俺はまだ特に何も変化はない。ただただ、とてつもない力を手にしているという感覚があるだけだ。苦しいとか、痛みといったものはまったく感じない。むしろ、力を渡している神様の方がずっと辛そうだ。心なしかこの数分で老けた気すらする。
「俺は大丈夫ですけど、おじいちゃんは大丈夫ですか? 大分きつそうですけど」
「なんのこれしき屁でもないわ。あまり神を舐めるんじゃないぞ……これで最後じゃ」
神様が最後の力をふり絞り、俺に流し込む。
光がパンとはじけて消えた。まるで神様の力が消えてしまったかのようだな。一応、権限とかは神様自信に残すって言ってたからそういうわけではないんだろうけど、なんか寂しさを感じる。
「おぬしはわしが見込んだ通りの逸材じゃったな。残そうと思っとった力まで渡してしまったわい。神の力をほぼすべて注がれても平気な人間などおぬし以外にはおらんぞ。誇ってよい」
「まだ実感が湧かないですよ。確かに力を手にしたっていう感じはあるんですけど、実際に使ってみないことにはどうとも言えないです」
「力なんてもんはそんなもんじゃ。絶大な力をもったところで使わんかったらそれは宝の持ち腐れじゃ。有意義に使ってこその力なんじゃ。それをおぬしならわかってくれると信じておるぞ。どうか、その力で世界を救ってくれ」
神様に救ってもらった命に、神様に貰った力。俺はこの恩を絶対に忘れない。世界くらいいくらでも救って見せる。俺を信じてくれた神様のために!!
「ありがとうおじいちゃん。俺が魔王を倒して世界を救って見せるって約束します。おじいちゃんはここから見守っててください」
「わしのほうこそお礼を言わんといかんのじゃ。実はの、おぬしが今から向かう世界は、わしの友人の神が司っていた世界なんじゃ。その神は魔王なんていう特異点とも呼べる存在が生まれたことに気が付き、天界のルールを破ってまで下界へ下りたんじゃ。しかしのう、いくら神と言えども、下界へ下りてしまえば十分な力を行使することができんのじゃ。様々な制約がかかってしまう。わしも一緒に行くって言ったんじゃが断れてしまった。そして、友人は魔王との戦いに破れ、力を奪われてしまったのじゃ。わしはおぬしに友人のかたき討ちを頼んでおるんだけなんじゃ」
結構重い話が出てきてしまったが、俺なんかが神様が敗れた相手に太刀打ちできるのか? 絶対倒すなんて約束したけど一気に不安になってきた。
「あの、俺は神様が敗れた相手に勝つことなんてできるんですか? 力を授かったといってももとは人間ですよ」
「心配いらん。神が下界にもっていける力なんてもんは1割が関の山じゃ。それほどまでに下界へ下りるということは大変なことなんじゃ。しかし、おぬしであればわしの力のほぼすべてをもっていけるというわけじゃ」
「でも、魔王は神様の力を奪ったって言ってたじゃないですか。それを加味しても俺のほうが上なんですか?」
ついつい弱気になってしまう。恩を返すって決めたばかりなのにこんな自分が情けない。
「わしにもはっきりとはわからん。しかしおぬしなら勝てると信じておる。それだけではダメかの」
「ダメなんてことは……わかりました。おじいちゃんに救ってもらった命です。全力で燃やしてきます」
「肝心なところで役に立たんわしを許してくれ。じゃが、わしはおぬしが勝つところをここから見ておるからの」
こんな状況で逃げ出すなんて男としてありえないよな。俺がこの力で魔王を打倒してみせる。
「それじゃあ、今からおぬしを異世界へ転生させる。準備はいいかの? 最初は人間の町へポイントを設定しておるからの」
「大丈夫です。いつでもいけます」
俺の返事を合図に、神様が両手をかざす。
足元に魔方陣が展開され、俺はこの空間を後にした。