お金は大事に使わないと後々後悔することになる。
ずっとこの調子でグダグダ話していると、列も少しずつ進んでいく。
毎日のようにこの列に並ぶのは俺は耐えられそうもないな。明日からは絶対に時間をずらしてこよう。
待つのが正直苦手な俺はそう心に決めた。
「レイリヤ先輩は明日は自分のクエストに行くんですか?」
「どうしようか悩み中よ。メインで使ってた剣がないから、あんまり高難易度のクエストにはいけないのよね」
そうだった、俺がレイリヤの剣をブチ折ってしまったんだった。
あの剣メイン武器だったのか。本当に申し訳ないことをしたな。
「あら、武器を壊すなんてまだまだ2流ね。武器を壊さないよ戦うのが1流の冒険者なんだから」
「今回は不可抗力よ。まあ、何て言うか仕方なかったの」
「そんな言い訳をしても無駄よ。レイリヤが武器を壊したっていう事実は変わらないもの。もっと反省しなさい」
武器を壊したことを責められているレイリヤを見ると、間接的に俺が責められているような気がして居心地がよくないな。完全に俺のせいだから何も言えないんだけど……。
「まあまあ、俺も一緒にいたんですけど、あの状況だったらしょうがなかったですよ。誰にでもミスはありますって」
「え? もしかしてゴブリンとの戦闘で武器を壊したんじゃないわよね? それは救いようがないわ」
確かに壊れたのはゴブリンとの戦闘であってるかもしれないが、その壊す攻撃をしたのがゴブリンじゃなくて俺なんだよなぁ。このままレイリヤが煽られてたらいつポロっと真実を話してしまうか不安だ。また、話題を変えないと。
とりあえず、レイリヤの方を見て、首を振っておく。
伝わるかは微妙だが、このジェスチャーに煽りに乗るな、我慢しろという意味を込めてある。頼む、伝わってくれ。
「説明するだけ無駄だからもういいわ。今度オーダーメイドの武器を注文しに行くからいいのよ。ああ、新しい武器楽しみだわ」
俺の意図を汲み取ってくれたかはわからないが、煽りに乗らず話を続けている。
「オーダーメイド何て贅沢よ。まだレイリヤはBランク冒険者じゃない。そんなものはAランク冒険者からって決まってるんだから」
「私だって、まだオーダーメイド品使ったことないのにレイリヤお姉ちゃんだけずるいよ!! ねぇ、シオン。私にも新しい武器買って」
「私もほしい」
今回もこの二人に助けられたな。これで話題はレイリヤの武器が壊れたことから新しいオーダーメイドの武器の話題に切り替わっただろう。ナイスアシストだ、二人とも。でも、この話題だと俺はいまいちわからないからのっかって話を広げることができないな。
「二人とも今使ってる武器も高級品なんだから十分でしょ。そりゃ私だってお金に余裕があればオーダーメイドの武器を使いたいわ。でも、女三人だと何かとお金がかかるじゃない。宿のランクを下げて、武器を買う? 嫌でしょ?」
「宿は今のところが最高だよ。もうほかの宿なんて止まれないよぉ。わかった、武器は我慢する」
「私も……」
武器よりも宿を取るとは……これが女冒険者という生き物なのか。俺だったら間違いなく武器を強化するほうに金を使ってしまうだろうな。別に宿に金をかけるのが悪いとは言わないし、しっかりと休息を取ることでパフォーマンスを向上させるかもしれない。でも、武器は男のロマンだ。今日素手で戦った奴が何を言ってるんだとは思うかもしれないが、それでも武器にはロマンが詰まっているんだ!!
「パーティーは大変なのね。よかったら、私がお金を貸してあげましょうか? もちろん、利子はたっぷりもらうけどね」
何て悪い顔をしているんだ。流石に冗談だよな。
「これ以上お金を無駄に使うわけには行かないわ。もう少しクエストの報酬がいいものをクリアできるようになったら考えてもいいかも……今のでレイリヤからは借りないことが決まったわ」
「フフッ、冗談よ。私も友達から利子を取るほど落ちぶれてないわよ。第一、私はお金に困ってないもの」
これがお金持ちの余裕というやつか。レイリヤは一体どれくらい金を持ってるんだろうな? マイホームを買えるぐらいは持ってるって話してたけど、俺の何倍くらい持ってるんだろうな? ……俺はゼロだから、何倍してもゼロか。泣きそう……。
「そこだけは羨ましいわ。レイリヤは報酬も私たちよりも少ないはずなのに、なんでそこまでお金が貯まるのかしらね? 不思議だわ」
「報酬が少なくても出費も少ないもの。宿だって普通のところを選んでるし、食費と冒険者の活動費以外はほとんど何も使わないから」
冒険者に人生をかけているということか? でも、一番遊びたい年頃なのにな。もったいない気もする。俺の世界だったらレイリヤくらいの女の子はもっと遊んでるイメージだったけどな。イメージに過ぎないが。
ずっと続いていた列も先頭が見え、次が俺の順番というところまでやってきた。
三人は俺の後に並んでいるので、俺の方が先という訳だ。これで、念願の金が手に入る。不安が一つ消えるな。




