そりゃそうなりますよね
「ちょっとなんでついてくるのよ」
「私たちだってクエストをクリアしてきたの。だから報告するのは当然のことでしょ? むしろ、なんで別行動するかわからないわ」
「私が恥ずかしい感じになっちゃってるじゃない。気を利かせて、少し待ってから来なさいよ」
何としょうもない言い合いをしているのだろうか? 誰かこの人たちを止めてくれ。いや、レイリヤを止めてくればすべて落ち着くからレイリヤだけ止めてくれ。
「まあまあ、レイリヤ先輩。別に一緒に並ぶくらいじゃないですか。さっきも話し相手がいたほうがいいって言ってましたよね?」
「あら、デンジロウ君いいこと言うじゃない。見てみなさいよレイリヤ、新人の子にまで言われてるわよ」
「デンジロウはどっちの味方なの? ひどいわ、この裏切り者!!」
俺はどうすればよかったんだ? 間を取り持とうとした結果がこれだ。思っていたよりもレイリヤが精神的に幼く感じてきたな。俺と出会った時の余裕のある冒険者像は消え去っている。
「あんまりうるさくしてると怒られるよ。やめてよ、私たちまで一緒に怒られちゃうじゃん。ねぇ、シリー」
「うん。うるさい」
こっちの二人も今の状況に呆れているご様子だ。つまり、どちらかというと俺の味方ってことだ。よし、これで2対3で人数有利だ。このまま押し切るぞ。
「わかったわよ。取り乱してごめんなさい」
レイリヤが折れてくれたみたいだ。どうごねたところでクエストのクリア報告する窓口はこの一つだけなんだ。絶対に一緒に並ぶことは避けられない。それならば仲良くお話するほうがいいってもんだよな。
しかし、俺たちが話し込んでいる間に列はさらに人数を増しているので、余計に時間がかかりそうだ。話している時間も入れたら二倍くらい時間がかかるんじゃないか? 列に並びながら話せばそれでよかったものなのに。どうして、こうなってしまったんだろうか。
「デンジロウ君って冒険者になる前は何をしてたの? お金がなくて武器も買えない冒険者何て珍しいから気になって」
冒険者は金がない人たちが何とかして稼ぐためにあるような職業かと思ってたけど、この世界ではそういう訳じゃないんだな。俺が特殊ってことは、みんなある程度の初期費用を用意してから冒険者になるってことか。まあ、武器も買わずにモンスターと戦って命を落とすのが一番あほらしいもんな。そうならないためにも必要最低限の装備は整えておくべきなんだろう。
「話せば長くなるからまた今度機会があったら話しますよ。涙なしには語れない壮大な人生を送ってきたんで」
適当な嘘を言って誤魔化そうかとも思ったが、どこかでぼろが出てしまうかもしれないので、あえて何も話さないという選択肢を選んだ。これなら、また今度ってなるはずだ。
「私もそれは気になってたわ。見たところ、悪い人ではなさそうだったから力を貸したけど、怪しくはあったものね」
「え? レイリヤ先輩そんなこと思ってたんですか? 割とショックです」
予想外の攻撃に怯んでしまう。レイリヤにそういう風に思われていたとは考えてもいなかった。
「冗談よ、だからそんなに落ち込まないで。違和感があったっていう程度の話だから」
「ハハッ、レイリヤお姉ちゃんがデンジロウをへこませてるよ。仲間割れだね」
「ひどい、レイリヤ」
面白がってからかっているようにしか見えないが、この二人はさっきからなんか味方になってくれている。絶対に面白がってるだけだけど。
「しょうがないじゃない。困ってそうだったから助けたの。デンジロウが怪しかったとかそんなことは関係ないわ」
「そこはありがとうございました。本気で助かったんで」
ちゃんと感謝していることについてはお礼を言っておかなくちゃいけない。今日何回目のお礼かはもう忘れてしまったが、それくらい感謝してるってことでいいだろう。
「そう言えば、知り合いだってことくらいはわかりますけど、レイリヤ先輩と三人はどういう関係なんですか? 実力の近い冒険者どうしで仲良くなったってところですかね?」
ずっと疑問に思っていたことを問いかけてみる。話題をそらすのにも新たな話題を提供するのがベストだ。
「私たちは一緒のタイミングで冒険者になった腐れ縁ってところね。私はずっとソロで活動するつもりだったけ、いつになってもパーティーを組もうっていう勧誘がうっとおしいのよ」
「でも最近はソロでの活動に限界を感じてきてるんじゃない? これまでは一緒にランクアップしてきたのに、気が付けば私たちだけAランクになってたわ。どうなのかしらね?」
「そ、それは、確かに選べるクエストの選択肢は限られてるけど……まだまだ一人でも問題ないわ。すぐに追いついてあげるから待ってなさい」
学校の同級生みたいなもんか。フーン、でもレイリヤだけBランク冒険者なのはソロで活動していることが原因だったんだな。
なんでそこまでパーティーを組みたくないんだろうな。謎だ。でも、気になっていたことが一つ解決してよかった。一人名前もわかったしな。ほかの二人もおいおいわかるだろう。




