レイリヤ先輩って少し天然が入ってるんじゃないですか?
「これは森で枝にひっかけちゃったの。ゴブリンを探すのに夢中になっててびっくりしたわ」
枝にひっかけた? すっごい適当な言い訳だけどこれで行けるのか? でもゴブリンにやられたって言うのは現実味がなさすぎるし、探す過程でってことで言い張ればいけそうかもしれない。
「レイリヤってそんなドジっ子だった? 悩殺ファッションとまではいかないけど、何か羽織るものくらい持ってないの?」
「私も持ってたら着てるわよ。着替えなんて泊りがけでクエストに行くときにしか持っていかないわ」
さらっと流されてしまった。無駄に焦ってた俺は完全に取り残されている。
「もしかして、デンジロウを手伝ってあげたのってパーティーが組みたくなったからじゃない? 私たちのパーティーに入る気になったんだよね?」
「違うわよ。まだまだ私はソロで活動するつもりなんだから。悪いけど、パーティーに加入はできないわ」
「チェッ、ちょっと期待したのに残念。気が変わったらいつでも言ってよ。私たちは大歓迎だからね。ねぇ、二人とも」
話を振られた二人も頷いている。
なんで、レイリヤはこんなにかたくなにソロにこだわってるんだろうか? ここまでってことは何か理由があるんだろうな。
「それで、レイリヤ。期待の新人君はどうだったの? これからも冒険者としてやっていけそうだった?」
「文句なしよ。ちょっと粗削りなところもあるけど、力自体はとてつもないものを持ってるわ。なんせ私に……なんでもないわ」
ちょっとぉ、何口滑らせかけてるんだよぉ。俺の力なんて適当に誤魔化しておいてくれよ。この人も話題として振っただけで、そこまで興味があって聞いたわけじゃないだろ。
「今何を言いかけたの? もしかして何か私たちに隠してるんじゃないわよね?」
「いいえ、そんなことないわよ。今日はただクエストに言ってきただけよ。ちょっとゴブリンを見つけるまで苦戦しちゃったけどそれだけ」
レイリヤのいう通りだ、すべて真実だ。本当のことを話しているので嘘を言っているような違和感もない。完璧だ。
「最近はセルンスの森もゴブリンが減ってきてるって聞くものね。深部まで行けばそれなりの数がいるらしいけど、新人が行くには少し厳しいって言うのが噛み合わないって職員もぼやいていたわ」
「新人冒険者から見れば絶好の狩場だもんね。町からも近くて、危険なモンスターも出ない。これ以上ないポイントだよ」
セルンスの森のゴブリンが減ってるっては、この町の冒険者の中では常識のようなものだったんだな。これで、話の論点をうまい感じにずらせたな。
「ほんと大変だったんですよ。ねぇ、レイリヤ先輩。俺たちゴブリンを探してセルンスの森を何時間歩き回ったことか。冒険者になっての初めの試練でしたね」
「確かに新人のデンジロウからしてみれば、モンスターと戦うことよりも探すことの方に苦戦したかもしれないわね。でも、ゴブリンを倒したあの蹴りは見事だったわ」
これは遠回しに嫌味を言われているんだろうか? レイリヤはその蹴りであわや死ぬかもしれないほどの重傷を負ったって言うのにな。でも、笑顔で話してるしきっとそういう意図ではないだろう。そうですよね。レイリヤ先輩。
「蹴りでゴブリンを仕留めるなんてなかなかやるわね。言われてみれば、デンジロウ君は武器も持ってないし、素手でクエストに行ったの? チャレンジャー過ぎない?」
「金がなくて武器が買えないんですよ。なんで死ぬ気で稼いできました」
「そうなの……次からはちゃんと武器を持ってクエストに行くことをお勧めするわ。それと、レイリヤも自分がついてるから大丈夫だとか思ってデンジロウ君を素手で行かせたんでしょ? ダメよ、危ないんだから」
「ごめん、それは否定できないわ。結果的にデンジロウの実力も見れたからオッケーよ」
ちょこちょこ俺の力の話をしちゃってるのはわざと何ですかね。狙ってやってなかったらそれはそれですごいぞ。
「レイリヤお姉ちゃんの代わりにデンジロウを私たちのパーティーに入れればいいんだよ。最近、男手がほしいなってみんなで話してたもんね」
「でも、この人新人だからFランク冒険者だと思う」
それは発想が突飛すぎないか。この人たちAランクパーティーだよな? そこにFランク冒険者の俺が入るなんて、どう考えても荷物持ちとかでこき使われる未来しか見えないぞ。
「それじゃ、無理だね。この人が入ったらレイリヤお姉ちゃんも入ってくれるかなと思ったんだけど、うまくいかないもんだね」
それも間違ってるだろうな。俺が入ったところで今日一日手伝ってくれただけのレイリヤがついてくるのはおかしいだろ。てか、そんな理由でパーティーに誘われたって入らねぇっての。
「せっかく会ったんだし、クエスト報告を終わらせたら、ご飯でもどう?」
「先約があるからまた今度ね。ほら、行きましょ、デンジロウ」
レイリヤはそう言い、俺を引っ張って列へ並んだ。
あいつら三人組を置いて行く感じになってしまったが、目的の列が同じなので、すぐに再会することになった。




