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まずい、これは洒落にならないくらいまずいぞ!!

 なんでだ? 俺がゴブリンを全滅させるまでの間にレイリヤがモンスターにやられたっていうのか? 悲鳴も何も聞こえなかったぞ。


「大丈夫ですか!! レイリヤ先輩!!」


 急いでレイリヤのもとへ駆け寄った。


 お腹のあたりを横一文字にきられて出血している。まずいかなり血を流している。素人目に見ても一刻を争うことがなんとなくわかる。

 よく見ると、レイリヤの手にはぱっきり折れた剣が握られている。これでモンスターの攻撃をガードしたけど、防ぎきれずにってところか。


「どうする、都合よく回復魔法とか使える冒険者が通りかかるのを祈るか? いや、そんな可能性にかけることはできないな、俺がなんとかするしかない」


 ここで、神様から授かった力を使わせてもらおう。俺が冒険者になってからずっと親切にしてくれたレイリヤをこんなところで死なせるわけにはいかない。もし、レイリヤが今日死ぬ運命だったとして、俺の力なら助けられるはずだ。っとその前に、レイリヤを攻撃したモンスターがまだ周囲にいるはずだ、ちょっと見ておかないとな。


 俺は、周囲をぐるっと見渡した。


「え? なんだこれ? 木が同じ高さで全部切り倒されてる?……どういうことだ? 俺の気が付かない間にこんな威力の攻撃が放たれていたのか?」


 さっきまでレイリヤのことで頭がいっぱいになってしまっていて気が付かなかったが、周囲の木が広範囲にわたって綺麗に切られてしまっている。それもすべて同じ高さだ。そう、俺がゴブリンの首を飛ばしたくらいの高さ……おい、ちょっと待てよ。もしかしなくてもこれ、俺がやったんじゃないか。いくら何でもレイリヤがやられるようなモンスターが周囲にいたら俺もレイリヤも気が付く。それに、そのモンスターとやらの姿が見えないのは不自然だ。やばい、なんかかっこつけてたけど俺のせいだ。絶対に助けないと!!


「レイリヤ先輩!! 聞こえますか!? まだ生きてますよね!?」


 俺は、レイリヤの心臓の鼓動がしているか、耳をつけて確認した。普段ならこんなことはしないが、今はパニックになって頭がおかしくなっている。


「やばいって、魔王を倒して世界を救うはずなのに、いきなり殺人なんて……そういう問題じゃない。こんないい人を死なせるわけにはいかないんだ」


 力の使い方はわからないが、何か回復魔法のようなイメージを作り、レイリヤに向かって発動した。

 ちなみにイメージしたのは、傷がくっついて治ることと、失った血の補給だ。うまくいってくれ。


 レイリヤの体の周りを光が優しく包み込んだ。


 よかった、一応何か発動したみたいだ。ちゃんと回復魔法として機能してくれ。レイリヤの命を救ってくれ!!


 見る見るうちにお腹の痛々しかった傷が塞がっていく。レイリヤが流していた血も体に戻っていったのか、消えていった。

 そして、お腹のところの服が破けているのと、折れた剣があるの以外は普通のレイリヤに戻った。


「よかった、本当によかった……人生で最高に焦ったかもしれない。とりあえず、もう一度心臓が動いてるか確認しておかないと」


 レイリヤの胸に耳を当て、心臓が動いていることを再確認する。

 無事に治療は終わったようだ。これで、俺は人殺しの称号を得ずにすんだということだ。


「てか、どうやってこの状況を説明すればいいんだ? レイリヤ先輩も俺の回転蹴りで怪我したって覚えてるような? というか、折れた剣と敗れた服を見ればわかることだよな。もう、起きたら素直に謝ろう。力加減をミスりましたって」


 許してもらえるかどうかわからないが、これまで親切にしてくれたレイリヤをここに一人残してトンずらすることなんて俺にはできそうもなかった。ここで、起きたことを正直に話して謝るのが一番だ。


「レイリヤ先輩、起きてください、レイリヤせんぱーい」


 傷は治っているので目を覚ますはずなので、何度か呼びかけてみる。心臓も動いていたので体だけ治っていて精神は天に召されているって言うことはないだろう。死んだ人の体を綺麗に治したとかなんか怖いしな。


「……ううぅ……あれ、デンジロウ? 私どうして?……」


 大怪我を負ったことで一時的に記憶が混乱しているのか、レイリヤはなにか状況を把握できていないような反応だ。


 レイリヤは、ゆっくりと体を起こして、周囲を見渡す。


「どうして服が? それに剣も……そうだ、私、デンジロウが蹴りを放った余波で……」


「すいませんでしたぁぁーーーーーーー!!!!」


 レイリヤが状況を把握したタイミングで渾身の土下座を放った。まず最高の謝罪の形である土下座から入ることで心のそこから反省していることをアピールする。情状酌量をどうかお願いします。


「び、びっくりしたぁ、急に大きい声出さないでよ。でも確か私、防ぎきれなくてこの服が破れているところに直撃したと思うんだけど……」


「傷は俺が治しました。かなり出血していて一刻を争うような状況だったんで、すいません」


 頭を地面にこすりつけたまま、レイリヤの疑問に答えていく。


「まずは、頭をあげてよ。初めての戦闘で加減がわからなかったのよね? 油断してた私にも責任はあるわ。それに傷も残さず治してもらってるのに文句なんてないって」


「許していただけるということでしょうか? 俺は犯罪者にならずにすむんですか?」


「私にはそんな気ないって。傷治してくれてありがと。剣は……また買えばいいわよ」


 本物の聖人だ。この人が人類で一番優しい人だ。まさかこんなにもすんなり許してもらえるなんて、剣は俺がクエストで稼いだお金で弁償しよう、後服も一緒にな。

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