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死活問題に直面しているがなんとかなりそうで気が緩んでます。

 早く出てきてくれという俺の祈りが届かないままただ時間だけが過ぎていく。


 このあたりをぐるぐると回るだけの作業、一体いつまで続ければいいのだろうか? 体力も強化されているのか疲労感はまったくないが、少し腹が減ってきた。早く飯が食いたいと俺のわがままな胃が訴えている。


「レイリヤ先輩そろそろ諦めて先に進んでみませんか? 危なくなったらすぐ戻るんで」


「ここまで見つからないとなると、誘惑に負けそうになる気持ちもわかるわ。でもね、これから先冒険者として生きていくのならこの程度のことで根をあげてはダメよ。困難なことはもっとあるんだから」


 すごいもっともらしい正論で俺の意見は却下された。とはいえ、いつまでこんなことをしてればいいんだよ。俺は生活がかかってるんだ、暇つぶしで冒険者を始めた訳じゃないんだぞ。今日このままゴブリンが見つかりませんでしたで帰るということは俺はまた明日まで金をもたずに生きなければならないのだ。飯も当然食えないし、泊るところだってない。たった一日くらい我慢しろと言われてもそう簡単に納得できることじゃないんだ。


「レイリヤ先輩、危険なのはわかってます。でも、俺は今日クエストをクリアして帰らないと金がないんです。ご飯も泊まる宿すらないんですよ!!」


 勢いで訴えかけることにした。もしかしたら俺の勢いに押されてしょうがないなということになるかもしれない。


「お金と命どっちが大事か何て考えなくてもわかるわよね? もしも、ゴブリンが見つからなくてクエストが先延ばしになったら私がご飯をご馳走してあげるわ。宿くらい私が泊ってるところに部屋を借りてあげるから、焦らないで行きましょう」


 予定とは違ったが、これはこれで助かった。今日クエストを達成できずに帰ることになったとしても飯と宿が確保できたのだ。もうこれ以上ごねる必要がなくなってしまったな。俺の力試しはまた明日にでもするとしますか。


「そんな、そこまでしてもらうなんて悪いです。本当にいいんですか?」


 ここで、すぐにありがとうございますとかいうのも図々しい気がするので一応念を押しておく。やっぱり後でなしとか言われても最悪だしな。レイリアならそんなことはないと思うんだけど。


「私はBランク冒険者なのよ。それもソロで活動してるんだからクエストをクリアした報酬は全部一人で貰ってるの。だから、結構お金持ちなんだから。これくらいはどうってことないわ」


「ありがとうございます。レイリア先輩に会えて本当によかったです。こんないい人、世界に存在してるんですね」


 ちょっとやりすぎてしまったかとも思うが、感謝しているのは事実なので感謝の気持ちを伝えるのはいいことだろう。それにしてもレイリアは善人過ぎないか。もはや何か裏があるんじゃないかって思うくらいなんだけど。


「フフッ、そんなことないわよ。言ったでしょ、私も新人の頃ある人からよくしてもらったって。今は、別の場所で活動してるけど、すごい人なんだからね。いつか紹介してあげるわ。驚きすぎて腰をぬかしちゃうかもしれないけどね」


 腰をぬかすほどすごい人から助けて貰っていたってことか。とんでもない幸運の持ち主だな。でも、紹介されただけで腰をぬかすほどの人って何者なんだよ。冒険者ですごいってなるとやっぱり強さだよな。相当な実力者ってことか。


「機会があったらお願いします。俺もそんないいひとなら会ってみたいですから」


「そうね、あんなに優しくて強い人はほかにいないわ。私の目標よ。絶対追いついて見せるんだから」


 その人に追いつくために頑張っているのか。立派な目標じゃないか。でも俺にも魔王を倒すという目的があるからな。そのためにもこんなところで躓いている訳にはいかないんだ。ゴブリンごとき倒せないようじゃ魔王なんて倒せるはずもない。しかし、見つからないことにはどうしようもないのも事実なんだよなぁ。どうにかして見つけないと。




 突然、ギギィ、という奇妙な鳴き声のような音が聞こえた。


「しっ……今何か聞こえなかった? 多分あっちのほうからだったわ」


 その音に反応したレイリヤが静かにするよう俺に指示を出す。レイリヤは歩みを止め、じっとその場で耳をすませている

 今の鳴き声はレイリヤの指さした方向から聞こえてきていた。

 俺ですら、微かに聞こえる程度だったが、レイリヤも聞こえていたのか。Bランク冒険者ってのも伊達じゃないな。


「聞こえました。俺もそっちから聞こえたと思います。今のがゴブリンの鳴き声ですか?」


「驚いた、デンジロウも今の声が聞こえてたのね。かなり耳がいいわね。でも、二人とも聞こえたってことは間違いないわね。おそらく今の鳴き声はゴブリンよ。ほかの冒険者に先を越される前に急いで向かいましょう。接近したら気が付かれないように、様子をうかがうわよ」


「わかりました。レイリヤ先輩について行きます」


 ここで、ほかの冒険者に先を越されるなんて笑えない。絶対に俺が仕留めてやる。


 既に道からはずれ、茂みの中を進んでいた俺たちは、声のした方向へ疾走した。

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