表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/20

こういうアプリって胡散臭いよな……いや俺の偏見かそりゃ。

「なんでなんだ!! いつもこうなる。俺が何をやってもうまくいきっこないんだ!!」


 俺は目の前にある粘土の人形を見ながら嘆く。

 本当は可愛い美少女キャラクターになる予定だったものだ。残念ながらこれを見てフィギュアだと思う人はいないだろう。途中までは順調だった。別に俺が下手くそでこうなってしまったわけでもない。なぜか俺のなすことすべてうまくいかないのだ。今回は、自室にこもって粘土をこねこねしていたところ、飼い犬ケンタウロスの突撃を受け、見るも無残な姿になってしまったのだ。未然に防ぐことができたんじゃないかって思うか? そうだよ、俺がドアをちゃんと閉めてなかったからだよ。でもなぁ、ケンタウロスは普段リビングでゴロゴロしてるだけのデブ犬だぞ? なんで二階にある俺の部屋までやってきてわざわざフィギュアに襲い掛かってくるんだよ……こいつの体重がもう少し軽ければ致命傷にはならなかったかもしれないってのにな。何もするきおきねぇ。


「ケンタウロス、お前まさか俺がフィギュアを作っていることを知ってて壊しに来たんじゃないだろうな?」


 片手に犬語翻訳アプリをインストールしてあるスマホをもってケンタウロスを尋問する。


『ワンッ、ワンワン』


 俺のスマートフォンから俺の言葉を犬語に翻訳した音声が流れる。これでこいつの魂胆は丸わかりだ。犬に嘘をつく何て知能はないだろう。


「ウゥ、ワン」


「えーと、なになに……今日のご飯は高級ドッグフードが食べたいだって? このアプリ使えねぇなぁ。どうしてこの状況で飯の話になるんだよ。アンインストールしてやる。レビューも星一だな」


 こんなことをしていても俺のフィギュアは帰ってこないので、ケンタウロスを部屋から連れ出してスマホゲームにでもしようか。


「ほら、お前はリビングでおとなしくしてろ。え? おっも、お前また太っただろ」


 何とかケンタウロスを抱えて階段を下りる。あんまりケンタウロスをいじめると後で母ちゃんに怒られるからな。なにか制裁を与えたいが我慢するしかない。




 ケンタウロスを一階へ連れて行き、自室へ戻ってきた。


 粘土のフィギュアもこうなってしまっては最初から作り直しだ。いつかやる気が起きたら再開しよう。その時に粘土は使うから箱に戻して引き出しに入れておくとするか。


「はあ、今回は割と順調に進んでたんだけどなぁ。まさかケンタウロスが邪魔をしてくるとは……今度からは部屋でも安心して何かを作ったりできないってことか。頼んでカギを付けてもらうか? いや、何のためにつけるんだって聞かれたら理由応えられなぇな」


 本当に何をやるにしても途中で邪魔が入り、最後まで成し遂げることができない。テストで高順位を目指して勉強をすれば、流行り病に。球技大会で活躍しようと練習をすれば、捻挫。ちなみにどちらも一度や二度の話ではない。これが毎回起こるのだ。そのせいでテストはいつも欠席で留年のピンチってところまでいってからは本腰を入れて勉強をするのをやめた。すると、風邪なんてひかないってわけだ。理不尽極まりない。


 割と手先が器用な俺が今回は動画で見たフィギュアの作り方を真似して、作っていたら見事に邪魔が入ったという訳だ。8割がた完成していただけにダメージがでかい。あと少しで色を塗るだけってところだったっていうのにな。


「あーあ、考えてたら憂鬱な気分になってきた。いつまでこの調子で不幸は続くんだろうな。最後には何に対してもやる気が湧かなくなりそうだ。気分転換にコンビニでお菓子でも買ってくるか」


 俺は部屋着にパーカーを羽織ってコンビニへと向かった。


 コンビニは家から数分歩いたところにあり、いつもお世話になっている。

 こういう時にコンビニが近いって言うのは便利だよな。コンビニにいけば大抵のものはそろってる時代だし、ちょっと割高っていうのに目を瞑れば最高だ。


 気分をあげるためにいつもは歩くところを陽気にスキップでコンビニに向かっている……それがいけなかった。


 キィィィーーーー!!


「え?」


 ゴンッ!! ゴロゴロゴロ。


 車なんて滅多に通らない道だからってスキップで飛び出して俺に合わせたかのように軽トラックに吹き飛ばされた。


「グハッ!! いてぇ……」


 数メートル吹っ飛ばされた俺は道路を転がり、やがて勢いを失い静止した。

 全身に激痛が走る。体が動かない。もしかして俺、このまま死んじまうのかな。お菓子を買いに行くのにも邪魔が入るなんてな。やってられないぜ。そのまま俺の意識はどこかへ消えていった。






「ほれ。起きろ、デンジロウ。そろそろ目を覚ましてもいいころじゃぞ」


 不意に聞こえた声に俺の意識は覚醒した。


「あれ? ここどこだ?」


 目を開け、周囲を見渡すとさっきまで俺が転がっていたはずの道路ではなく、どこまでも続いているかと錯覚してしまう謎の空間だった。もしかするとこれが天国っていうやつなのかもしれないな。よかった、俺は無事に天国へ来られたんだ。まさかこの感じで地獄ってことはないだろうし、一安心だ。


「何を惚けておるのじゃ? それにその表情何か勘違いしておるようじゃが……」


「あ、おじいちゃん。ここって天国ですよね? 俺はトラックにはねられて死んだと思うんだけど」


「ああ、そうじゃよ。デンジロウ、おぬしは死んだ。しかしここは天国なんて場所ではないぞ」


 天国じゃない? それじゃあ、俺は死んだって言ってるのに天国じゃないのはおかしい。いや、死んだら天国か地獄に行くって言うのは俺の勝手な想像なのか。それ以外のなにかがあっても別におかしくはない。


「ここは死後の世界とおぬしがおった世界の狭間じゃ。わけあって、おぬしをここに呼び出したのじゃ」


 世界の狭間だって? 俺になんの用があるって言うんだよ。天国に行くのにも邪魔が入るってのか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ