009.ヴァン・ヘルシングを嫁にしちゃったである
包帯だらけで表情が全く読めぬ。
恐らく感情、理性、そういったものはないのであろうな。太古の魔法とやらで蘇った、という事はこいつも被害者なのであろうが。
「お前の身の上に少しく、同情はするが……」
手刀による斬撃を加える。
アンデッドとはいえこいつは造られたものである。
「本物の不死者、真祖の力というものを見せてやろう」
マミーは成す術なく余の攻撃を食らい、一歩、二歩と後退る。
包帯が千切れ飛ぶがどうやら物理的なそれでは無いらしい。後から後から再生される。千切れて落ちた包帯はすぐに消え去っていく。
しかし包帯を再生させる位なら中身を再生すればよいのにと余なんか思っちゃうであるが。
ホブゴブリン程ではないがそこそこの太さの腕をブゥンと振るがそんなのはもう2度と当たらないのである。
軽く避けてはノーブル・ファンタジー、とどのつまりストレートのパンチであるが、それを加える。
勿論ただのパンチではない。余の拳にも魔力が宿っている。徐々にマミーの再生速度が遅くなる。余の魔力が上回っている証左である。
「ミミミ……」
両手を上げて襲い掛かかってくるが緩慢とした動作は余に一撃必殺の間を十分に与えてくれた。
「ノーブル……」
技名を叫ぼうとして脳裏にリンダに言われた言葉が浮かんだ。後を続けるのを控え、無言でドラクリアを抜くと胴体を真っ二つ!
ボト……
やがて滑り落ちる様に上半身が地面に落ち、マミーは息絶えたのである。
「コンスタンティン……」
「リンダ。怪我はないか?」
「うん!」
抱き着くリンダの頭を撫でる。実に可愛い娘である。
「凄いぞお頭!」
「お頭ぁ!」
野盗共が余に賛辞の声を浴びせる。彼らはもう余に心服しているのだ。
リンダはその光景を見て目を丸くする。
「彼奴等は余の眷属となった。恨みを晴らしたいならやってもよいぞ?」
「……ううん。いい」
「そうか。お前達はどうする?」
野盗達に誘拐された、リンダの家族に向かって聞いてみる。
だが彼らもフルフルと首を振った。
「ふむ。では……」
「待って! やっぱり私、やる」
「……うむ」
「1発やっとかないと気が済まない。みんな酷い目に遭ったんだから」
リンダは野盗の前に出ると腰に手を当て、
「頭は誰!?」
「へ、へい……」
男は力無く片手を上げ、項垂れる。
刹那!
バキィィッ!
「ぐはっ」
リンダのパンチが見事に顎にヒット。余は仰反る男の後頭部を支え、優しくリンダに声を掛けた。
「よくやった。これでお前の怒りも……」
「これはお姉ちゃんの旦那さんの分!」
……それは1発で終わらないやつである。
結局、リンダの怒りの分を加えて計5発殴られた男はそこそこ無惨な顔になってしまった。まあ仕方無い。それだけの事をやったのであるからな。
「さて。悪の根源を倒しに行こうか」
皆を連れ、1階に上がると予想だにしていなかったのか、村長が慌てふためいて逃げ出そうとした。
だが余にあっさりと捕まった村長は、リンダの怒りの5発を浴び、そして余の吸血からの僕化、の黄金パターンを食らって完全に余の言いなりとなったのである。
余はリンダを妻として連れ、町、領、そして王国へと渡る。
この世界にもいたヴァンパイアの女、余をこの世界に呼び出した宮廷魔術師、神官と続々と妻を増やす。
そしてヴァン・ヘルシングはやはりこの世界に転移していた。
後で知ったのだが実は余の姿は若返っており、その為リンダも余に口説かれるのに違和感がなかったそうである。
同じ様にヴァン・ヘルシングも二十代の頃の最強に美しい容姿で若返っていた。
余の妻、子供は彼女が殺したのではなかった。その誤解が解け、一騎討ちをした後、余は強引にヘルシングを妻とした。
こうして余は美しい5人の女達に囲まれ、ヴァンパイア一族をこの世界で増やし、幸せに過ごすのである。
―
ヴァンパイアの余が異世界に転移したら強過ぎちゃうであろう? (駆け足完)
お読みいただき、有難う御座いました。
ブクマが少ない、つまり面白くないという事かと思いますのでここで物語を締めさせていただきました。
また色々考えたいと思います。
2022/2/2 追記
1、2話でやめられる事は少なく、続き分まで読まれはするもののブクマ自体が増えなかった為、途中で打ち切り、オチをつけたものですが、それを知ってなお、ブクマして下さったり、評価を入れていただいたり、新機能のいいねを下さったり、本当にありがとうございます。次へのモチベーションとなりました!
お読みいただけるようなものを御提供できる様、また研究して頑張りたいと思います。