雪だるま式に増える密室殺人
空前の密室殺人ブームである。
とある推理小説がきっかけで日本全国で密室殺人が行われるようなった。
発生件数は年数千件にも昇り、社会問題としてメディアにも取り上げられ、国会でも議論されるようになった。
密室とは外側から開かれないようになっている必要があるが、このレギュレーションが守られていない場合が多い。
例えば、スペアキーを部屋の中に入れて密室の完成を宣言する場合がよく見られるが、これでは完全なる密室とは言えず、レギュレーション違反となる。
もっともよく聞くのはオートロックを利用したケース。
部屋を出るだけで簡単に鍵がかけられるので、密室を作るにはもってこいだ。
この際、マスターキーとスペアキーを処分、ないしは別の場所へ移動しておく必要がある。
でないと密室指数が下がってしまうからだ。
被害者がナイフや包丁で刺された後に、自分で内側からカギをかけて密室化するという手法があると聞いた。
加害者が刃物で襲ってくるのだから、部屋に逃げ込んで鍵をかけるのは当然の流れだ。
この際、注意しておきたいのは、あらかじめ部屋の中に全てのカギをおいておくこと。でないとせっかく作った密室がパーになってしまう。
刃物の他に毒物を使うという手もある。
毒の量によって死亡時刻が変わるため、ちょっとした分量のミスが失敗につながる。
難易度は高いが、美しさの観点からすれば刃物よりも毒物をお勧めしたい。何故なら血痕が部屋の外に残らないからだ。
刃物を用いた密室メソッドだと、どうしても血痕が壁や床に残ってしまう。密室指数を上げるには、壁紙やカーペットを張り替えなければならない。外で襲ったのが分かったら密室指数が大幅に下がってしまうからだ。
毒物の使用は手軽に密室指数を上げる手法かもしれない。
他にも床や壁に穴をあけたり、換気ダクトから脱出したりするなど、脱出メソッドが広く用いられるようになったが、これには異論を呈したい。
何故なら、密室からの脱出はもはやスポーツと化しており、従来の密室メソッドとは大きく方向性が異なるのだ。
事実、脱出メソッドの犯人にはパルクールの経験者が多くみられる。
日本全国で雪だるま式に増える密室殺人。
その多くの犯人たちは、探偵によって逮捕になってしまった。
もし参加を考えているのなら、是非ともレギュレーションを順守した密室殺人を心掛けて欲しい。
日本全国密室殺人協会
会長 平山 敦