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―今は、違う



少なくとも押し殺そうなんて考えていない。もっと自由に内側をさらけ出しても良いはず。そう思えたのは葉月さんと話をしてからだった。彼は待ってくれる人、歩調を合わせてくれる人。だから心地良い。そう感じているから惚れているのかな?そもそも恋愛の定義とは?これはもしかしたら人間として好きという意味で、恋愛じゃないのかもしれない。一人で悶々と考えていると窓から明るい陽射しが差し込んできた。



「え…!?」



時間を見るともうすぐ5時になろうとしている。「8時ぐらいには出たいなあ」と言っていた。大体朝の用意で1時間ぐらいかかるとしたら、今から寝ても2時間くらいしか寝られない。


やってしまった…!


今から寝ても手遅れだろうと思って、借りた『たゆたえども沈まず』を読み始める。

林忠正の弟子である重吉とゴッホの弟であるテオの視点が章ごとにかわるがわる展開されていく。物語の終盤に来たところでセットしていたアラームが鳴った。続きが気になるところだけど、そろそろ用意しないと。



部屋から出てリビングに行くと、葉月さんはすでに起きていて朝食の用意をしていた。居候しているからという理由で朝食は葉月さんが作ってくれている。朝にランニングに行くから彼が一番早く起きるし、料理は好きだからやりたいと言っていた。その他にも家事を色々してくれているらしく、母は凄く喜んでいた。


家事のスキルでいうと葉月さんは断然私よりも上手いし、料理に関していえば母より美味しいものもある。旅で巡った土地で地元の人から教わった郷土料理が食卓に並ぶこともあって新しい発見が毎日ある。




「おはようございます」

「おはよう。もうすぐできるから先に顔洗っておいで」

「はーい」




こういうところが保護者っぽい。鼻歌を歌いながらお皿に盛りつけている横顔をチラッと見てはちくりと胸が痛む。



ダメダメ。寝不足で思考がネガティブになってる。せっかくの葉月さんとの旅行なのに。



顔を洗って、ご飯を食べて、家を出て、電車に乗ったところまでは記憶がある。ある、のに。









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