23
「ぷっ…、楽しそうですね」
「綾菜ちゃんも絶対こうなるから。実際見ると興奮するから」
そうして辿り着いた黄色のかぼちゃに満面の笑みで抱き着き、葉月さんに写真を撮ってもらったのは言うまでもない。「ほらね」という葉月さんの目線を無視してばっちり撮ってもらう。
「葉月さんも撮りますか?」
「どうせなら一緒に写ろうよ。すみませーん」
海岸沿いを歩いていたカップルに声をかけて写真を撮ってもらった。二人とも黄色のかぼちゃに抱き着いている。
「ありがとうございます!」
葉月さんが写真をチェックしていると、女の人に「お似合いのカップルですね」と言われて顔が真っ赤になる。
「あらあら…」
その様子をみた女の人はなんだか嬉しそうだ。
「僕の彼女を揶揄わないでくださいよ」
苦笑しながらいう葉月さんに「じゃあ後は宜しく」と言わんばかりの笑みを浮かべてカップルは歩いて行ってしまった。
―きっ、聞き逃すところだったけど葉月さん今、「僕の彼女」って言わなかった!?
更に顔に熱が集まる。チラッと葉月さんを横目に見ると、なぜか葉月さんも少し顔が赤くて頬を搔いていた。
「じゃあ行こうか」
そういう葉月さんは綾菜の右手をさり気なく握って歩き始めた。突然の甘い展開に頭がふわふわする。その時間に見た外のアート作品は覚えていなくて、ただひたすらに海が綺麗なことと葉月さんの手のぬくもりしか覚えていなかった。そんな綾菜を葉月は少し寂しそうに見ていたことに、この時は気付かなかった。