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「凄いですね!」
船の音が大きいので普段より大きい声を出すと、葉月さんもつられて「そうだね!」と大声で返事をしてくれる。船の中を散策していると、所々で見える景色も違ってより楽しい。船酔いの心配をする必要はなさそうだ。歩き回っている綾菜を見失わないように後ろから見守る葉月は完全に保護者になっている。
「はしゃいじゃってすみません…」
「いいよいいよ。見てると楽しいから」
「そうですか?」
「ほら、僕にはない若さがあるし?」
「葉月さんも若いですよ!」
「いやー、綾菜ちゃんよりは若くない」
真顔でそういう葉月さんに笑いながらも、外の景色を楽しんでいるとあっという間に直島に着いた。
「初めに行きたいところある?」
「あそこにある赤かぼちゃ見に行きたいです!」
「オッケー、じゃあ行こうか」
船が着いたときに目に入ったのが草間彌生の赤かぼちゃだった。ビビッとな色だから凄く目立つ。綾菜たちより先に降りた人たちが写真を撮っているのを見ながら、皆から少しずれたところで写真を撮る。有名なのは黄色のかぼちゃだけど、赤いかぼちゃも可愛い。堪能しつつ周りを歩いていると、葉月さんに肩を軽く叩かれた。
「どうしました?」
「今からだけど、まず早めのご飯を食べて自転車で回ってみよう。その後、地中美術館でじっくり過ごして、余った時間は屋外アートを見るのでどう?」
「良いと思います!」
「明日は見れなかったところをじっくり見よう」
「はい!」
ここに来た最大の目的は地中美術館に行くこと。美術館の滞在時間を長く取ってくれているのでじっくり見られそうだ。早めに軽くご飯を済ませて電動自転車を借りる。高低差が激しいところがあるから電動自転車が良いらしい。
「じゃー、今いるところが宮ノ浦エリアだから、時計回りに本村エリア、積浦・琴弾地エリア、美術館エリアで回って行こうか。途中気になるところがあったら言ってね」
「はーい」




