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しばらく会話もなく神社の中を回っていると、下の街が見えるところに来た。ここから夕陽を見たら綺麗だろうなと思いながら、風景を見ているとカメラの音が聞こえた。
「わ、なんですか!」
「盗み撮り!」
楽しそうに笑う葉月さんが見せてくれた私の横顔は完全に浮かれている。
「消してください!」
「やだ!」
「やだじゃないです!」
「いいじゃん、旅の思い出ということで。とりあえず綾子さんには送ったよ」
「は、母に送ったんですか!?」
「旅する娘を心配しない親はいないでしょ?」
「そうかもしれませんが…、」
それにしても許可をとってからにしてほしかった…!絶対帰ったら問い詰められる…!
昔から嘘をついても母にはお見通しで、結局本当のことを言わなければいけなかった。帰った時のことを考えると、今から憂鬱だ。
恋バナは絶対にしつこく聞かれる…!
背中がぶるっと震える。
「綾菜ちゃんこっち向いてー」
「えっ?」
パシャッ
「ま、また撮ったんですか!?」
「うん。今度はツーショット!良く撮れてると思わない?」
そういう写真を見ると葉月さんは笑顔なのに、私は間抜け面をしている。
「消してください!!」
「えー、綾菜ちゃん可愛いよ?」
「嫌です!!」
「じゃあ…」
手を引っ張られて葉月さんの肩に頭が当たる。葉月さんはこっちに身体を傾けていて近い。
「綾菜ちゃん撮るよー」
慌てて笑うとカシャッとカメラの音が聞こえる。
「これ良い感じじゃない?」
そうして見せて貰った写真は、満面の笑みの葉月さんと少し恥ずかしそうに笑っている綾菜の姿が映っていた。
…これ、付き合いたてのカップルみたいじゃない?私めちゃくちゃ浮かれた顔してる…!
「い、良い感じだと思います…」
「じゃあ写真送っとくね」
早速送られてきた写真を見ると、恥ずかしいけど嬉しくて葉月さんに内緒でラインのトーク画面の背景はこれにしようと決めた。見られないようにしないと。