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聖女様のシリーズ

どうか聖女様。学園を滅ぼさないで下さい。(マリー編)

作者: ユミヨシ

「マリー。俺は絶対に結婚しないからな。」


そう、マリーが断言された相手は、この国の王太子ハリスだ。

金髪巻き毛で、美しいそのお姿は、王立学園女生徒皆の憧れだ。


「何故?私の何がいけないんですの?」


マリーは、伯爵令嬢である。それもただの伯爵令嬢ではない。

強力な聖女の力を持つと言う、マリーは、王太子ハリスの婚約者として身分を飛び越えて認定されていた。


「何故ですの?私は、貴方の事を思って一生懸命、尽くしてきたというのに。」


そう、何故、そんな冷たい態度を取るのだろう。

美しき王太子の婚約者に選ばれた時は嬉しかった。

だから、マリーは王太子の為に、力を使ったのだ。聖女の力を。


マリーが婚約者に決まった事で、高位貴族の公爵令嬢達は面白くなかった。

公爵令嬢だけではない。王太子というだけで、狙っているのは、他の令嬢達も同じだった。

だから、聖女の力を使ったのだ。


ハリスは不機嫌に口を開く。


「何故??何故、俺の傍に女性が近づくだけで、皆、バチっと音がしてすっ飛んでいくんだ?」


「それは、ハリス様の傍に、魔物が近づかないように、私の聖女の力で守って差し上げているのですわ。」


「結界か???結界なのか?」


「ええ…ハリス様の身体に結界を張ったんですの。」


「小さすぎるだろうっ。そもそも結界と言うのはな。国全体を覆って魔物が国に入って来られないようにする…」


「いつの時代のお話をされているのでしょう?」


「聖女の仕事って、結界を張って魔物が入らないようにするのではないのか?」


「無理です。大体、国全体に結界を張る?どれだけ国が広いと思っているんです?

そんな事、出来るはずないじゃないですか?精々、私が張れるのは、ハリス様の周りだけです。だから、ハリス様を魔物から守って差し上げますわ。」


「他の女性は魔物かっーーーー。」


私は聖女としての仕事をしているだけです。

何が悪いのでしょう?


「それから、最近だな…。やたらと髪が伸びて…切るのが大変なんだが。」


「それは…その…。国王陛下が、頭が砂漠地帯でございますでしょう?」


「それは確かに…って、お前の仕業か??」


「ええ、聖女の仕事は草木を生やし、土地を肥やす事です。ですから…」


「ええええええいっ。小さいわっーー。俺の頭は土地か?土地なのか???」


あら、怒っていらっしゃる。ハリス様の髪を心配して、聖女の力を使って差しあげているのに…。


「それからだな。何故っ。俺の行き先が解る?行く先々でお前に良く出くわすんだが…。」


「婚約者ですから、当然の事じゃないですか。」


「それって、凄く怖すぎるんだが…それも聖女の力か?」


「ええ。勿論ですわ。心を広げてハリス様の気配を感じ、そこへ転移致しますの。

そうしたらハリス様が…これって愛の力ですかね?」


ハリス様は真っ青な顔をして、歩いて行かれました。


私は聖女の仕事をしているだけなんですが、これって…

何か変な事なんでしょうか…。



今日も元気に、公爵令嬢やら、男爵令嬢やら、ハリス様に近づく令嬢達が、

聖女の結界に触れて、バシバシと飛んで行く日常。

皆、生徒達は見慣れていて。


教室のマリーの席の前に幼馴染のルークが座りながら、


「このままじゃ、マズイんじゃね?お前、婚約破棄されるかもよ。」


「ええ?私はハリス様の為に、やっている事なのに…いけなかったのかしら。」


「そりゃ、そうだ。男たるもの、女性にはモテたいし、ああバシバシと弾かれちまったんじゃ、気の毒ていったら気の毒だろう?」


「ええ、私、反省したわ。」


ルークの言う事はもっともだ。ハリス様の結界を解いて差し上げましょう。

聖女は歌を歌って、魔物を操れるという。

ついでに歌を歌って、魔物をおびき寄せましょう。


次の休み時間、ハリス様がいるであろう団体が、教室にいらして。


「マリー。何の嫌がらせだ?」


ハリス様の身体には、10人の令嬢が、鈴なりに抱き着いていて。

ハリス様の姿が令嬢達に埋もれて、見えないのは…。


「ちょっと、どうにかしなさいよ。」


「そうよ…。離れないじゃないのっ。」


ハリス様の声がする。


「ともかく、この状況を何とかしろっーーー。」


仕方がないので、令嬢達を離してやる。


ハリス様がこちらを睨んでいて。


「もう、我慢ならん。マリー。お前なんてお前なんてーーー。」


「あんまりですわっーーー。」


マリーは立ち上がり、教室を飛び出た。


「ちょっと待った。まだ何も言っていないっーーーーー。」




ああ…悲しい。悲しすぎる…ハリス様に婚約破棄なんてされたら、生きている意味もない。


マリーは、あまりにも悲しくて、あまりにも悲しすぎるから、学園を滅ぼしてやろうと思った。


歌を歌って魔物(女)を呼び寄せる。

通行していただけの女性が、学園に吸い込まれるように、皆、入って来る。


マリーの涙は、雨を降らせる。

学園の天井に穴が開き、教室中が雨で水浸しになった。


マリーの力は、植物から、生命力を奪っていく。


ハリス様だけでなく、学園の中にいた人々の髪は抜け落ち、皆、禿げていった。



女性達の間を掻き分けて、廊下にいたマリーの元へ、ハリス様がよろよろと近づいて来て。


「マリー。悪かった。俺と結婚しよう。」


「え??ハリス様っ。本当ですか?」


「ああ…だから、この現状をどうにかしてくれ。」




その後、私、マリーは、ハリス様と学生なのに、結婚しましたわ。

誰です?ハリス様が生贄だと言った人は…

今は、とても幸せです。


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