表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サウザンド・コロシアム  作者: 瀬川弘毅
5.「デスゲームの真相」編
79/216

067 突然の訪問者

「……ト、トリプルセブン様、大変です!」


 ノックもせず、急に玄関ドアが開かれる。息せき切って部屋に駆け込んできたのは、二人の男だった。


 一人は短髪で、もう一人は丸眼鏡をかけている。以前、生前の板倉について問いただしたことのある部下たちであった。


 急に彼らが現れたので、芳賀も、能見ら四人も驚きを隠せていない。


「どうしたのかな。何かあったのかい?」


「それが、この間の奴らが二人、うちのテリトリーへ侵入してきて」


「リーダーに合わせろ、話がしたいって言って聞かないんすよ。戦うつもりはないらしいんすけど、本当かどうか」


 男たちは興奮した様子で、身振り手振りを交えて状況を説明した。だが、大体の事情を察するにつれ、芳賀の表情は硬くなっていった。



「一応聞くけど、その侵入者たちのナンバーは?」


「『444』と『999』でした」


「……そうか、ありがとう。彼らへの対処は僕に任せてくれ」


 トリプルフォー、武智将次。


 トリプルナイン、菅井颯。


 彼らは愛海の命を奪い、管理者へ味方するナンバーズたちだ。敵の陣地へ正面から乗り込み、話し合いを望むとは一体、どういう風の吹き回しなのだろうか。


 下がって良いよ、と促し、部下を退室させる。それから芳賀は、四人の仲間を見回した。


「噂をすれば何とやら、だね。まさか、向こうから訪ねてくるとは思わなかった」


「どうするつもりだ?」


 能見に問われ、芳賀は少しだけ考えた。


「このまま放っておいて、好き勝手に暴れられても困る。とりあえず、用件だけでも聞いてみようと思う」



「俺は賛成だぜ。あいつらと手を組めないかって案が出ていたところだし、ちょうど良い。話し合いの場を設けるには絶好の機会だ」


 正確には「案が出た」というより、発言した本人が「案を出した」のだが。


 能見や陽菜に反対されても、荒谷はまだ希望的観測を諦めていなかったらしい。腰を上げようとした彼を、芳賀はしかし、手で制した。


「……気持ちは嬉しいけど、荒谷と綾辻さんにはここに残ってもらいたい」


「はあ? 何でよ。あたしたちの力は必要ないってわけ?」


 咲希は釈然としていない。「そういうわけじゃない」と芳賀は首を振った。


「菅井たちは常に四人一組で行動していた。けど、今こっちに赴いているのは、そのうち二名のみ。話し合いをするふりをして、残る二人が攻撃してこないとも限らない」


「つまり、陽動作戦の可能性があるってこと?」


「そういうことさ」


 小さく頷き、芳賀は能見と陽菜に目くばせした。一緒に連れて行くメンバーは彼ら二人に決めたようだ。



 もしも菅井たちと協力関係を築く運びになった場合、避けて通れないのが感情の問題だ。愛海を手にかけた彼らを、自分たちは仲間として認められるのか。背中を預け、ともに管理者と戦うことができるのか。


 能見も陽菜も、そして芳賀も、愛海とは親しい間柄だった。私情のもつれはなるべく早期に解消したい、というのがリーダーの本音である。



「君たちはここに待機して、万が一、他の勢力が攻めてきたときのために備えてほしい」


「分かったわ」


「……それじゃ、僕たちも行こうか」


 咲希と荒谷をすぐに納得させた芳賀には、やはりリーダーの素質があると言えるだろう。能見、陽菜を伴って、彼は部屋を出た。


「ああ、行こう」


 反対する理由は、能見には特になかった。菅井たちに何か言い分があるのなら、聞くだけ聞いてやればいい。手を組むかどうかは、それから判断しても遅くはない。


 もし騙し討ちを仕掛けるつもりなら、返り討ちにするまでだ。一度戦って、相手の手の内は分かっている。前回のように一方的にやられるつもりはない。



 あのとき能見は、菅井の力で身動きを封じられ、武智の放った風の刃によって怪我を負った。かなり強力な連携攻撃であったが、彼らに弱点がないわけではない。


 おそらく菅井は、一度に一つの対象しか動きを止めることができない。能見と陽菜、それぞれに対して一回ずつ指を鳴らし、その動作をトリガーとして彼は能力を発動した。複数の対象へ干渉できるのなら、二人同時に捕らえていたはずだ。


 したがって、対抗策はシンプルである。菅井が力を使う素振りを見せたら、散開し、狙いを絞らせないようにすればいい。仮に一人が動けなくなったとしても、残り二人で猛反撃すれば勝機はある。菅井の能力だって、さほど長い時間は効力が持続しないはずだ。



 問題は、陽菜がどう思っているかである。隣を歩く彼女を、能見は不安そうに盗み見た。


 アイザックと対峙したときも、陽菜は愛海とのことを思い出し、泣いてしまっていた。いまだに悲しみを癒せていない彼女が、菅井たちとの協力を素直に受け入れるとは思えなかった。



 アパートの外に出て少し歩くと、彼らはいた。


「やあ、来てくれたか。呼び出しに応じてくれて、感謝しているよ」


「そいつはどうも」


 菅井の笑顔はどこかぎこちなかった。「胡散臭いな」と思いつつも、能見は申し訳程度の礼儀を示す。


 けれども、確かに芳賀の部下が報告した通り、むやみに戦おうというつもりはないらしかった。菅井も武智も得物を持っておらず、無防備に立っているだけだ。


「リーダー、こいつらまだ疑っとるで。もっと誠意を見せんと駄目や」


 能見たちの視線に気づいたのか、武智は顔をしかめた。両手を上げ、抵抗する意思がないことを示す。すぐさま、菅井も彼に倣った。



「それで、何の用だい?」


 一応は二人を信じることにして、芳賀はさっそく本題に入った。


「どうやら戦う気はないみたいだけど、わざわざ僕のテリトリーまでやって来た理由を聞かせてほしいな」


「……分かった。単刀直入に言おう」


 呟き、菅井は出し抜けに膝を突いた。プライドも恥もかなぐり捨て、地面に額がぶつかるほどの勢いで土下座する。


「今までお前たちにしてきたことを、全て謝罪する。その上で、俺たちとともに戦ってくれないだろうか」


「頼む。この通りや!」


 リーダーの隣で、同じく武智も平身低頭の姿勢を取った。


 呆気にとられ、芳賀はぽかんと口を開けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ