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サウザンド・コロシアム  作者: 瀬川弘毅
4.「新たなるナンバーズ」編
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059 攻防の果て、明かされる謎

「眠いですよお。何が楽しくて、真夜中に出かけなきゃいけないんですかあ」


 目をこすりながら道を急いでいるのは、トリプルファイブ、望月和子だ。


「シャキッとしな、和子。てか、それ管理者に聞かれたら怒られるよ」


 呆れ顔で彼女を小突いているのは、トリプルエイト、清水唯。いつもと同じ、グレーの布マスクを身につけている。



「……どうでもええけど、もうちょっと声落とせや。戦場はすぐそこやで」


 二人をたしなめ、武智が唇に人差し指を当てる。四人は今、例の倉庫の近くまで来ていた。あと一ブロックか二ブロック先には、オーガストが被験者と交戦している現場があるはずだ。


「気を引き締めろ。どこに敵が潜んでいるか分からない」


 仲間を振り返り、先頭の菅井が注意を促したときだった。上空で何かが動き、月明かりが一瞬遮られたような気がした。


 突如、闇夜に赤い花が咲く。


 空中に浮かび上がったのは、無数の破壊光弾。真紅に輝くそれらが、菅井たち目がけて一斉に投下された。



「何だ⁉」 


 防御も回避も間に合わない。何の前触れもなく襲いかかってきた光弾の嵐を前に、四人は慌てふためき、逃げ惑っていた。


 昼間であれば、敵の位置を特定することも容易だったろう。だがこの闇の中では、そうやすやすとは行かない。


「……悪いな。俺の恋人と仲間たちが今、必死で戦っているんだ」


 空に浮かんだまま、荒谷は菅井らを静かに見下ろしていた。


「あんたたちに邪魔させるわけにはいかないんだよ!」


 振り上げた両手から、さらに紅の光弾を連発する。



 自分の役目はあくまで時間稼ぎだ。菅井たちがまた現れた場合、闇に紛れて足止めを行う。それが荒谷に与えられた、作戦上のポジションである。


 ここで粘っている間に、能見や咲希たちがオーガストを撃破し、情報を聞き出していてくれればいいのだが。


(頼んだぜ、皆。俺も自分にできることをやり遂げる)


 祈るような思いで、荒谷は攻撃を続けた。



「勝負はついたぞ。さあ、話してくれ」


 壁にもたれかかるようにして倒れたオーガストへ、能見が拳銃を突きつける。莫大な電圧をかけられ、怪人は自由に体を動かせなくなっていた。


「お前たちは一体、俺たちの体に何をしたんだ。どうして愛海さんは、あんな姿に代わってしまったんだ」


「……それを明かすことはできない」


 自らが負けたことが信じられない様子で、黒の怪人は呆然としていた。青い目には、恐れに似た感情が映っている。


「話せば、我は裏切り者として処刑されるだろう」



「話さなくても結果は同じだよ」


 ため息を漏らし、芳賀も二人の側へ近寄った。


「もし君が口を割らないのなら、他の管理者を見つけて倒し、聞き出すまでだ。もちろんその場合、君のことは始末させてもらうけどね」


 オーガストの視線が、不安定に揺れた。話すべきか沈黙を貫くべきか、葛藤しているようであった。


「質問に答えれば、見逃してくれるとでもいうのか?」


「見逃すわけではないよ。人質として生かしておいて、他の管理者との交渉材料に使えたら使おうと思う。ま、一応寿命は伸びることになるね」


 さあどうする、と芳賀はオーガストに目で問いかけた。



「……分かった」


 長い沈黙ののちに、彼は首を縦に振った。


 能見、陽菜、芳賀、咲希。四人の顔を順番に見て、ゆっくりと話し始める。


「貴様らに教えてやろう。この街の真実をな」


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