第6話 まず自分はどんなモノが観たいのかを知ることから始めよう その③
あの見事な指示出しをする母…なんだかここ数日、アルフォード兄さんに自分が抱えられることが多くなったため、よく目上の人に対して『さん』という言葉に馴染んできた。そして、単純に母という言葉に違和感を感じてきた。よってこれからは母さんとも呼ぶことにしよう。おっと話が逸れてしまったがそんな母さんは現在お昼前くらいから玄関前でそろそろ帰還する父さんを待ちわびているのだった。…えっ自分はどこにいるのかって?そりゃあ今は赤ちゃんなんだし、2階でクリスと一緒にいる部屋でティーレに抱えられながら、窓で外の様子を見ているのであった。
ブッオン!!ブッオン!!
うん?おぉ!!上から大きな羽ばたき音を鳴らして、ゆっくりと青白い翼から発する光を収束させながら降下する前世の記憶では見たことのない生物を初めて見るのだった!!…超かっけぇ~!!くっそうなんで今の姿が赤ちゃんなんだ。もっと近くで見て触ってみた…おんおん?なぜかティーレが上から自分の顔覗いて話かけているようだった?
「あう~(もっと近くで見て触ってみた…うん)!?」
「アルセーヌ様が指を指してこんなにも笑顔で笑いながらあうあうと喋ろうとする姿を見るのは初めてです。」
「あうぁ?(なんでそんなにティーレの顔は微笑ましいなぁ~って顔してるんだ?)」
「やはり、アルセーヌ様はフォンテーゼ家の血を色濃ゆく受け継いでいるみたいですね。アルス様やアルフォード様も赤子の時に羽ばたいて降下していく騎竜を見て指を指して笑っていました。」
「あうあう!!(ヘぇ〜そうなんだ!!)」
「…もしかして、アルセーヌ様は私が話している言葉理解してますか?」
「あうあう〜あぁ〜(いやいやいや理解してないから、それより騎竜見ようよ)」
「…そんなわけ無いですよね。言葉を理解しているなら急にまた指指したりしないだろうし。」
あっぶねぇ!!ここでティーレに言葉を理解しているなんてバレたら後々大変な事になりそうだ。いやぁそれにしたってティーレの察知能力の異常さに早めに気付けてよかった。これからは身の周りの人をよーく観察してできる限り自身の異常なところを知られないような対応の努力をよりしていこう…前から顔の表情をうまく誤魔化す工夫はしているけど、どうしてうまくいかないんだろうか?悩むねぇ…
バタバタ!!と後ろから音がした。
「アルセーヌ様、どうやらアルス様やアルフォード様も先ほどの風切り音で、ルブラン様が帰ってきたことが分かったみたいで後ろの扉より向こう側の廊下を走って玄関に向かわれていいるようです。大変お元気のようで何よりです。」
「あぅ~?(そんな慈愛あふれる微笑顔でそんなこと言われてもどう対応すればいいのかわからんのだけど、困るよ?)」
「ではそろそろ、私達も玄関の方に向かいに行くとしましょう。クリスティアはクリスを抱っこ紐で抱え移動するようにね。」
「はい、お母さん。アルセーヌ様も抱っこ紐で抱えるべきでは?」
「仕事中はティーレと呼びなさいと、言っているでしょう。いくら昨日までの準備で疲れたとはいえ、気が抜けすぎなのではないの?…当主様の歓迎会が終わり次第、いっぱい私やクノーツに甘えていいから、それまでは我慢しなさい。」
「分かりました、ティーレ。それで先ほどの質問に対しての回答はいかに?」
「そうね、確かに必要ですね。それじゃあちょうどクノティアの後ろの棚からアルセーヌ様とクリスの分も取り出してくれませんか?」
…へぇ、そういえば今日見慣れない人影があったけど、ティーレの娘さんだったのか。髪の色はティーレそっくりだけど、眼の色は水色なんだね。そして顔立ちはクノーツにそっくりの美少女じゃあないですか。年齢的には背丈的にアルス兄さんに近いのかな?この一家本当に美男美女の家系で惚れ惚れするぐらいの魅力が外に溢れてるよなぁ~もしどこかのパーティに出たらすぐにいろんな人達に囲まれそうだ。
そんなくだらないことを考えている間にいつの間にか玄関口に着いていたようだ。家族が玄関中央に立ち、ティーレとクノティアは家族の後ろに横に並んだところで、大きな扉が開くと父さんの姿が見えたのだった。
「「お帰りなさいませ、旦那様。」」
「お帰りなさい、ルブラン」
「お帰り、父様!」
「お帰り、父さん!!」
「やぁ、みんなただいま!!」
…もしこの光景を似た形で初めて見れる自分以外の別次元の世界にいた人がいるならばたぶん同じ感想を抱くだろう。使用人達が中央の階段まで伸びる青い絨毯の縦線にそって二手に身分が上にの者に対して帰宅のご挨拶の礼儀が綺麗並んでいるのはそのくらい壮観であった。ティーレはどうやら自分を抱えているからか、今回は礼儀をしなくてもいいらしい。
「3日前に当主の手紙はすでにここに送られていると思うけど、セレスやクノーツはもう先に歓迎会の準備はあらかたやった感じかな?」
「そうよ、とっても大変だったわ。だからあとで何らかの形でご褒美頂戴ね!?」
「セレス様の真面目で、現実的な判断を行っていく様は、実に見事な指導力でした。もしセレス様が男でしたら、立派な貴族として振る舞われたことでしょう。」
「もうっそれは褒めすぎよ、クノーツ。私はあなたがいなければ、スケージュールの変更調整、歓迎会の食材を集める際の交渉だなんて、初めてのことだらけでそういったところはみんなクノーツにまかせっきりだったわ。ねぇルブラン、もしよかったら歓迎会が終わり次第、クノーツ一家にはご褒美として数日休暇与えてやってくれないかしら?」
「いいよ。セレスのお願いはできる限り、聞き届けあげたいからね。それでアルスやアルフォードは元…」
…いやぁこんな会話ができるくらいにうちの家族は円満でなによりだ。ところでお爺ちゃんの歓迎会ってあと2日だったたよね。そんな父さんの顔は口は笑っているけれど、目は笑っていないんだよね〜!!お爺ちゃん来るの嫌だってことヒシヒシとその顔の表情で伝わるよ。この後の歓迎会どのくらい大変なことになりそうだ。
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「はっ、早飛竜からの伝言で、後30分後にここ別館へ当主様が到着すると報告を受けました。」
「クノーツ、報告ご苦労、早飛竜の者を厩舎小屋に移動させ、先に休憩させよ。」
「了解しました。」
「そろそろね。」
「そうだね。」
お爺ちゃんの歓迎会当日までに父さんや母さん、それにクノーツ含め多くの使用人達が慌ただしく最終調整に向けていた。今の姿では、みんなの手伝いをすることできないのでせめて空気を読んで成長痛の痛みに耐えて泣かないようにすることだけだった…最近痛みに慣れてきたとはいえやっぱ痛いんだよなぁ。こんな状況でもクリスは通常通りお腹が減ったり、成長痛で苦しんでるから大泣きなんだろうな。同志クリス君の気持ちはものすごーくわかる。人のこと言えないけど我慢しようぜ!!
「当主様が到着されました。」
「報告ありがとう、クノティア。後は他のメイド達と同じように並んでくれ。…みんなには歓迎会プラン通りと伝えて欲しい。あとでボロが出るとまた父にグチグチ言われると困るからな。」
「承知しました。」
…うん、いつもの父さんは気を抜いている感じなのか?まぁ母さんに赤ちゃん紐で抱えらている現状ではそんなこと分からんからどうでもいいけどって思っていたところで扉がドカンっと音がなり、お爺ちゃんの姿が見えたのである!!
「ワハァハァ!!ここにやって来たぞ!!」
…えっとお爺ちゃんってこんなにワイルドな爺さんな人だったけ?
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