第5話 まず自分はどんなモノが観たいのかを知ることから始めよう その②
「…筆跡の確認、…フォンテーゼ家の印章の確認、ええ確かにお義父様らしい魔力の残り香が筆跡にしっかりと付いているし、現時点ではフォンテーゼ家にしかできない印章の仕掛けもあるからこの手紙は本物だわ。日々私達の苦労を軽減させてくれて感謝するね、ご苦労様、クノーツ・グラハム。さぁ久しぶりに我が子との対面、楽しんでね?その間手紙の内容を読んでおくとするわね。」
「奥方様、いえこちらこそアルセーヌ様のお世話にクリスの面倒まで見てくれて、ありがたき幸せです。」
「さぁさぁ行ってきなさい。それに本当に感謝するべきなのは私よりもティーレにしなさいな。」
「了解です。」
そんな会話をしていた情景を自分はベットから眺め、先ほどテーブルにティーレがクリスを抱えながらクノーツの横に近づいて行った。
「髪色はティーレの方になったね?」
「ですね。鼻の形はあなたのほうに似てきたかも?」
「いやむしろティーレの方じゃないかな?」
「そうかしら。」
いつもと口調が違うティーレに関心しながら横にいるクノーツを観察しようかなって思った。彼の見た目はフィーゼニア人の特徴を色濃ゆく受け継いでおり、金色の髪に青い眼、白い肌は当然だったが、それ以外の特徴として前世の知識で説明するとしたら、ネイビーブルーの燕尾服っていうのだっけ?
それを着て、前髪がすべて後ろに流れるように何かテカテカしたもので塗り固められている。そして最後に金色の縁の眼鏡をかけたスウィートイケメンマスク顔の30代前半の男性っぽい。
…何それ、自分がもし女だったら一発で顔見て惚れてしまうぐらいの優男である。しかも見る限り、燕尾服も着こなしているあたりかっこよすぎだろ、おい!!それに比べ、うちの父は…いやイケメンよりの顔だとは思うけどねぇ、この人と比べると、うん、これ以上のことは考えないことにしよう。
そんな男であるクノーツを自分は見つめていた。クノーツはその後ティーレとの会話を続けて、クリスを抱え、顔をほこらばせていると、何かを思い出したかのように、急に真摯な顔になって母の向いて話出していた。
「奥方様、伝え忘れていたことがあり、報告してもよろしいでしょうか?」
「なーにぃ?今取り込み中なんだけど、それって我が子をあやすより大事なことなの?」
「はい、大事です。」
「そっそう?そんなに大事なことなら簡素に内容をまとめ報告しなさい。」
「了解です。まず早飛竜の者から伝言で大体5日後に当主様が飛竜に騎乗して本館からこの別館に来られるとのことです。内容はおそらく手紙の詳しい説明かと推察いたします。」
「なるほど、それは確かに歓迎の準備をしないといけないから、大事わね?ほかにはなにかあるかしら?」
「また同じく早飛竜の者からの報告として当主様より先にここへルブラン様が向かわれているとのことです。」
「あらまぁ、つまりこうなることを見越してルブランは王都で根回しとか色々していくために向かっていたということで理解してもいいよね?」
「そのような理解でよろしいかと存じます。」
「なら、さっそくのことで悪いのだけど、まずは現在館の警備で従事している者以外の使用人達を一同に入口大広間に召集しなさい。そして、ルブランが当日になって当主様の歓迎会で恥をさせない為に、今から皆様に準備の細かい指示を出したいわ。」
「了解です。」
おぉ!!母が自分を抱えからクノーツに指示している姿を真上から覗いているけど、急にのんびりとした顔から凛々しい顔に変化する様はホェ〜とすこぶる感心した。
…それに続くように今自分の眼に映るイケメンの行動力の速さも中々のものである、もう少しティーレやクリスと一緒に居てあげてもいいのに、呆れるほどの生真面目なクノーツであると思った。
パンッパンッ!!
「クノーツから話を聞いていると思うけど、5日後に当主様がここ別館に来られるとのことです。また旦那様はこの状況を見越して現在王都からすでに帰還中との報告も受けています。よって旦那様が行う当主様歓迎会準備のお手数を減らしたいため、私が彼の帰還までの指揮を取ります。よろしくて?」
「「承知しました。」」
「「了解しました。」」
「ではクノーツから、当主様の手紙すべて読んでみたわ。前々から近いうちに当主様直々にこちらに来るかもしれないという話は聞いてたけど、まったくはた迷惑なことをするお義兄様を理由に当主様は恐らく気分が害されながらこちらに想定以上に前倒しでこちらに来ることになる。なのでまずはティーレを通して渡して見せてくれたスケジュール調整の見直しを急ピッチでお願いね。」
「メイド長は当主様が入室されるであろう客室や寝室、バスルームにダイニングルームなど想定される範囲だけでいいので各階の倉庫内からでいいから当主様好みの家具や調度品を引っ張り出して総入れ替え、飾りつけ、掃除整理をティーレ以外メイド全員を指揮し協力しながら行いなさい。
当主様好みのデザインやフィーゼニア様式美学について、私はまだまだ勉強不足なのでそのような部屋の調整すべきところの権限も全て委譲するわ、あとはよろしくね?」
「門番および警備兵は最低限の人員配置でいいのでメイド達では中々できない力仕事の手伝いをメイド長の指揮下に入って行いなさい。」
「料理長はスケジュールどおり、お義父様好みの料理の味付けはそのままに品質は維持したい。
そのために御用達商人から食材の仕入れを早急に取り掛かりなさい。多少の相場よりつり上げはされてもかまわない、ただつり上げ金額が相場より酷い金額を吹っ掛けてくる輩がもしいたら…ね?
あとはいつも通りの対応でお願い、あとの食材以外の料理に関わる問題は私やクノーツ、それにメイド長に直接相談しなさい。あっ言い忘れたけど、お酒はすでにあるものですべてまかう予定なので今回では購入はなしよ。フフッ残念だったわね。」
「庭師達は…」
…アルスに抱えられながら、母が見事な指示出しを大広間入口の2階階段右で聞き見ていた。アルスの隣にいるアルフォードはなにやらアルスに話し出そうとしている。
「ねぇアルス兄さん、うちの使用人って結構人数多かったんだね?」
「うん、人はそこそろ雇っているんだろうな~って思ってたけどこんなにいるなんて意外だよ。」
「ただ、お爺様がくるだけなのに、ここまでなんか準備しないといけないとなると僕らの家庭教師も食事のマナーとかの復習とか母様から指示受けてやらされるんだろうなぁ~はぁ~嫌だな。」
「それは普段、マナー講習をさぼったりするアルフォードがいけないんじゃないのかな?」
「えぇ~あんなにつまんないお勉強をよく真面目にできるアルス兄さんのことが信じられないんだけど?それよりも剣をふったり、父様や警備兵のみんなに護身術や体術を学んだりして体を動かしたりする方がいいよ。
それにたまに時間が庭師のぼくと同じ年代の子は空いているときなんて追いかけっことかして遊んだりするから楽しいよ。ねぇアルスお兄さんもそうおもうよね?」
…20人ぐらい雇っているっぽく、結構多いななんて思いながらその光景が終わるまで眺めるのであった。…というかアルスが長男だったんだね。これからはアルス兄さんと呼ぶことにしよう。ついでにアルフォードも同じくアルフォード兄さんとも呼ぶことにしようか。
お読み頂きありがとうございますm(_ _)m
今後も応援してやってもいいかな?って思った皆様には是非ともブックマークや感想、それに評価などをお願いします。
感想は時間が出来る限り返します。貴重なご意見はなるべく早く反映するよう努力します。
また、評価は下記にある評価欄を【☆☆☆☆☆】から【★★★★★】にして頂けますと執筆の励みになります