52 幕間①
カイト、ユキ、ルシアの三人は宿への帰路についていた。
広場での戦いの後、三人はギルドの酒場でギリアンの呼び出しを待っていたのだが、その間、冒険者たちの熱烈な歓迎を受け、俺たちのおごりだと言って食べきれないほどのごちそうをふるまわれたのだった。まだ朝だということもあり、さすがに酒類は辞退させてもらった。
結局、ギリアンは忙しくて時間が取れないので後日に使いをよこす旨を職員から告げられ、三人は賑やかな酒場を後にしたのだった。
酒場では落ち着いて話をすることもできなかったのだがいざ三人だけになると、あれほどの戦闘のあとだというのに案外どうでもいい話に花が咲く。
「コジローは本当に利口でな、棒を投げてやるとすぐに拾って持ってくるのじゃ。 誉めてやると尻尾をぶんぶん振って喜んでなあ。 昨日は丘までぶん投げてみたが、さすがに拾いにはいかんかったな」
「鬼だな」
カイトはてきとうなツッコミを入れると大きなあくびをした。
「そういえばカイトさん、昨日から寝てないんじゃないですか?」
「うん。 お腹が膨れると、さすがに眠くなってくるな」
「なんじゃ、疲れておるのか。 わしがおんぶしてやろうか?」
「うーん…、それは恥ずかしいなあ。 みんなはどうなの? 俺は別行動だったからよく知らないんだけど」
「起きたのは夜明け前ですね。 さすがに疲れたので、わたしも帰ったら休みます」
「おんぶするか? するか?」
ルシアが背中を見せてアピールする。天使か!と、カイトは声には出さずにツッコンだ。広場の戦闘で見せた魔王の顔は影もない。
「…ちょっと恥ずかしいです。 ルシアさんは疲れてないんですか?」
「だいじょうぶじゃ。 帰ったらシンタやミアたちと遊びたい」
「さすがに今日は出てこないんじゃないか? まだ魔物が潜んでるかもしれないし」
「むぅ………魔物か……。 なら、皆が安心して出てこれるように、村の見廻りでもしてみるか」
「あら、いいですね」
「迷子になるなよ。 宿の名前は覚えてるか?」
「おいおい、わしを誰だと思うておる?」
「まあ、ルシアだからなあ」
「そういえば、こうやって三人で歩くのって初めてですね」
とりとめのない会話を続けるうちに、三人は銀のたてがみ亭に到着した。
宿の前ではニナさんがなにやら作業をしている。
三人に気づくと声をかけてきた。
「ユキちゃん! みんなも大丈夫そうでよかったよ!」
「ただいまです。 ニナさんも無事でよかったです」
「ユキちゃんには迷惑かけちゃったねえ。 本当にありがとうだよ」
「いえいえ、気にしないでください。 それよりも、なにしてるんですか?」
ユキはニナさんの後ろをのぞきこんだ。
「ああ、これ、急いで作ってみたんだけどねえ」
「……ええ!?」
手作りの立て看板に手書きで書かれた文字には『大賢者ユキ様御一行の泊まる宿!』とある。
「ニ、ニナさん? これはダメですよ……」
「やっぱり、ちょっと地味すぎるかねえ」
「い、いえ、そうじゃなくて……大賢者だなんて、烏滸がましいです。 わたしなんて、ただのかけだしですから。 これじゃあ、詐欺になっちゃいますよ」
「まあ、大賢者は言い過ぎとして、犬賢者ぐらいなら許可しようか」
「いや、それも意味わかりませんから!」
ユキはフォローなのかどうかすらよくわからないカイトのコメントにツッコミを入れた。
評価ありがとうございます!おかげで目標にしていた100評価ポイントに到達しました!次はブクマ100……いえ、50を目指してがんばります!
えーと……後日譚ですが、伏線の回収やら足りてない説明の補則やらをショートショートでやっていこうと思ってたんですが、なんか思ってたのとぜんぜん違うのになってました。次はルシアの見廻りの話です。あんまり後日譚っぽくないですね(汗
※9/24タイトル『後日譚』を『幕間』に変更しました。




