04 謎の連帯感
白い壁に再び扉が現れ、ひとりでに開き始める。
「ほ、ほんとうにいいんだな?」
「よい。魔王に二言はない」
少年を残してタッカーたちはおっかなびっくりで扉をくぐる。
メイド姿の魔族ベルキシューは、少し離れた場所でその様子を悔しそうに見ていた。
「ああ、忘れておった、待つがよい」
アルシアザードの声に、タッカーたちはビクリと体を震わせて足を止める。
「賢者の娘、そなたには残ってもらおう」
「わわ、わたしですか?」
「案ずるな、用が済めば帰す。ほかの者は去れ」
タッカーたちは困ったように顔を見合わす。
「あの……おかまいなく」
ユキは寂しそうに手を振る。
タッカーたちは申し訳なさそうに頭を下げると、静かに扉から出ていった。
「娘、ちこう寄れ」
ユキは怖々とアルシアザードに近づいた。
離れて見ていた少年がやってきて、怯えるユキの横に並んで歩いてくれたので、少し落ち着くことができた。
アルシアザードはどこからともなく拳ぐらいの大きさの水晶の玉を取り出す。
「その水晶の名は?」
「え?」
放り投げるように渡された水晶玉をユキが慌てて受け取る。
「鑑定せよ」
「はは、はい!」
ユキは慌てて鑑定スキルを使った。
「え……ええっと……『破滅のオーブ』です」
「違う。次じゃ」
別の水晶玉を渡された。
「『災厄の宝玉』」
「これも違う。次」
「ちょ、ちょっと待ってください」
新たな水晶玉を差し出されたユキは、両手に持った水晶玉を見せた。
「ああ、そこらへんに転がしておくがよい」
そうは言っても、いかにも物騒な名前のアイテムを放り投げるわけにもいかない。名前以外のデータがまったく読み取れないのは、ユキのレベルでは解析不可能なぐらい強力なアイテムということだ。
仕方なくユキはその場に座り込んで、床の上に鑑定済みの水晶を置き、次の水晶玉を受けとった。
「『復讐者の魂』です」
「違う」
「『祈りの白珠』」
「次じゃ」
「はい、『絶望の朱玉』」
「次」
アルシアザードは空中から次から次へと水晶玉を取りだし、いつしか辺りには足の踏み場もないほど水晶玉が散乱していた。
「なあ。あれ、なにやってんの?」
暇をもてあました少年がベルキシューに声をかける。ベルキシューは舌打ちをすると、横目で少年を睨みつけた。
「人間風情が、気安く話しかけるな!」
にべもないが、アルシアザードに気をつかってか、声をひそめている。
「いや、暇なんだけど。まだしばらく続くんなら、寝ててもいい?」
「なっ……!? いいわけなかろう、無礼者!」
ベルキシューは、苦虫を噛み潰したような顔で話し出した。
「アルシアザード様の考えることは、私にはわからない。二百年もこの城に封印され続けているから、暇をもてあましておられるのだ。またろくでもない事を思いつかれたのだろうが、言葉どおりに無事に帰れるとは思わないことだな」
ベルキシューは冷酷な笑みを浮かべる。
「ふーん。まあ、こんなとこに二百年とか、たしかにキツいなあ」
少年は何もない広々とした部屋を、ぐるりと見回した。意地悪く脅したものの、少年の気にした風もない態度にベルキシューが眉をひそめる。
その時、アルシアザードの方で進展があったようだ。
「導きの碧玉」
「む、それじゃ!」
ユキの手の上には淡い光を放つ小ぶりの水晶が乗っている。
「ついにやりましたね!」
「うむ、大儀であった、娘」
なんだか謎の連帯感が生まれているようにも見える。
「よし、次はおまえじゃ、レベル99!」
アルシアザードはびしりと少年を指差す。
「名前みたいに呼ばないでほしいんだけど」
「ああー!」
ユキがとつぜん大声をあげて少年を指差した。
「そういえば、わたしまだ英雄さんの名前、知らない!」
「ああ、まだ言ってなかったか」
少年は眠そうな顔で頭を掻いた。
「俺の名前は………んん? ……なんだっけ?」




