03 「君ら、魔王なめてんの?」
玉座の間に、パンパンと拍手の音が響いた。
「なかなか面白い余興であった。誉めてつかわそう」
「あれ、だれ?」
「えと……魔王……さんです」
少年の問いにユキが申しわけなさそうに答える。
アルシアザードは立ち上がると、高みからゆっくりと階段を降りてきた。その影のなかからメイド服姿の魔族が現れ、アルシアザードにつき従う。一本角に金色の瞳をした魔族だ。
「ラスボスってやつか。ちなみに君たちのレベルって、いくつ?」
「えと……わたしがいまレベル7になりました。でも、ほかの人たちはレベル20くらいありますよ」
少年は額に手をあてて、少し考える。
「………君ら、魔王なめてんの?」
「これは予定外だ! 我々も、こんな事態は想定していない!」
魔王に気圧されて後退してきたタッカーが叫んだ。
「そこの英雄、レベル99と言ったか。ちょうどよい、まさにうってつけじゃ。そなたに決めた!」
アルシアザードは少年を指差すと無防備にずかずかと近づいてくる。
「ポケ〇ンみたいに言われても困るんだけど。いちおう聞いておくけど、なにをすればいいのかな?」
召喚英雄としては、召喚者を守るのが当面の目的になる。勝ち目が薄いのなら、交渉もありだ。
「なあに、ほんの少し、わしにつきあってくれればよい。望みが叶えば、無事に帰してやってもよいぞ」
「ほかのみんなも?」
「え~と、こういう場合は……そなた以外は、とくに用はない。ほかの者どもは、ここで殺しておこう」
タッカーたちが青ざめる。
「うーん、俺はかまわないけど、一つ条件がある」
「貴様! 人間風情が魔王さまに条件を出すだと!」
メイド服の魔族が怒声をあげるのを、アルシアザードが手を上げて制した。
「よい、言うてみよ」
「ほかのみんなは、無事に帰してほしい。いま、ここで」
「ほう……こやつらを生かしておいて、わしになんのメリットがある?」
「条件さえ呑んでくれたら、俺はあんたの言うことをきく。それに、生かして帰したからと言って、あんたになんかデメリットでもあるの?」
「む………デメリット?」
アルシアザードは顎に手をあてて考えた。
「アルシアザードさま、人間などの言うことをきく必要はありません」
「まあ、彼らが町に戻って、もっと強い冒険者や軍隊が送り込まれたら困るか。勇者なんか来ちゃったら大変だよね」
「なにを言うか! 人間の軍勢などものの数ではないわ! 勇者だと? それこそ望むところじゃ!」
「じゃあ、なんの問題もないよね?」
「ううむ………まあ、そうではあるが………」
「アルシアザードさま、そんな口車に乗ってはいけません。魔王と出会った者を無事に帰すなど、魔王の威厳にかかわります」
「べつに戦いを挑んできたんじゃないんだし、言うことも聞くって言ってるのに、そこまでしたら『魔王なのに器が小さい』って言われるんじゃないかなあ」
「な……! 妾は寛容な心を持っておるぞ! よかろう、他の人間どもは解放する、好きにせよ!」
「いけません! 完全に言いくるめられています! アルシアザードさまは交渉事には向いておりせん! 人間の言うことなど……」
「ベルキシュー、控えよ! 妾がよいと申したのだ!」
「………はい。申し訳ありません」
メイド姿の魔族ベルキシューは、唇を噛んで引き下がった。




