02 「嘘だろ! ほとんど魔法じゃねえか!」
「見るのは初めてじゃ。これは古代魔法、英雄召喚……ガチャ」
光を纏った少年は、その光が薄まるにつれて輪郭がはっきりとしてくる。
「ユキ、解析を!」
「はい!」
ユキは賢者のスキル『解析』を発動した。解析はあらゆる物のステータスを見ることができる、賢者なら誰もが持っているスキルだ。
「えと、レベル………99!!」
「マジかよ!」
「なんてヒキだ!」
英雄召喚ガチャは、運が良ければ伝説級の英雄を召喚できる魔法だが、効果はあくまでランダムで、ハズレを引く確率も高い。レベル99は人間が到達できる最高レベルであり、この時点で伝説級の召喚に成功したことが確定している。
完全に顕現した少年は革鎧の軽装備スタイルだった。
「クラス! ……あ、あれ? ……と、盗賊?………です」
「嘘だろ!」
「なんてヒキだ!」
「おいおい、だいじょうぶか!」
盗賊は罠の発見や解除が得意で、ダンジョン探索には欠かせない存在だ。しかし、攻撃力、防御力、耐久力に劣り、戦闘には向かない。
レベルが上がると上級クラスのレンジャー、アサシン、忍者などに転職するのが普通である。
魔方陣から現れた黒髪の少年は、ぼうっとした表情で辺りをゆっくりと見まわしている。
様子を見ていたアークデーモンは、現れたのがただの人間とみるや、一斉に動きだした。
一匹が一気に距離を詰めて少年に鈎爪を振り下ろす。
「あぶない!」
空気が焼けるような鋭い一撃は、しかし空を切っていた。少年の姿はどこにもない。
『スキル【バニッシュ】が発動しました。スキル【バックスタブ】が発動しました。』
展開していたステータス確認画面のメッセージがユキの頭のなかに音声として再生される。
グアァッ!
いきなり上空から落下してきた少年が、アークデーモンの首筋に短剣を突き刺していた。そのまま身をひねって着地すると、ちぎれかけた首から大量の血を噴き出してアークデーモンは崩れ落ちた。
残ったアークデーモンは少年に狙いを絞って襲いかかる。
『スキル【罠設置】が発動しました』
身を低くして走り込んできたアークデーモンの足下に、ぽっかりと黒い穴が開いてアークデーモンが吸い込まれていく。空中にとつぜん巨大な鉄球が現れてアークデーモンが落ちた穴のなかに吸い込まれ、直後に爆発音とともに火柱が噴き上がった。
反対方向から低空飛行で突っ込んできたアークデーモンは、
地面から突き出した無数の槍に縫い止められ、これまたとつぜん空中から現れた巨大な振り子のギロチンに真っ二つにされた。
「おい! あいつはなにをしたんだ!」
「えと……【罠設置】……だ、そうです」
「なるほど、罠設置って………いやいやいや!」
「嘘だろ! ほとんど魔法じゃねえか!」
残った二匹が空中で呪文を唱え始めると、パーティーはギクリとして身構えた。
少年はなに食わぬ顔で振り向き、タッカーに声をかける。
「あんたらが俺を召喚したんだよね? 次は前衛の出番だから、がんばってね」
「は?」
凄まじい音が響き渡り、見ると炎と雷の混じった嵐のなかでアークデーモンがもがき苦しんでいる。自ら放った魔法が自分に襲いかかったのだ。
ぼとりと地面に落ちたアークデーモンを指差して少年が言った。
「よし。いまだ、いけー(棒)」
「くそ、やったらあー!」
戦士二人がヤケクソ気味に突撃し、アークデーモンを斬り倒すと、その死体から無数の小さな光の玉が噴き上がった。ソウルオーブと呼ばれる魔物を構成するエーテル体のひとつだ。それがパーティーの各メンバーの体に吸い込まれていく。
『1750SOPを獲得しました。レベルが上がりました。パラメーターが上昇しました。新しい呪文を覚えました』
ユキの頭のなかに戦闘終了を告げるアナウンスが流れた。




