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第四話 より強くなるために

ランキングに入っていてめちゃくちゃ驚きました。

皆様には本当に感謝しております。

本当にありがとうございます。

 町へと戻った俺は、再び冒険者ギルドの建物内へと入った。


 先程倒したキリングベアを素材としてギルドに買い取ってもらうためだ。


 即死魔術の新しい能力を得たとはいえ、俺の強さはまだSランク冒険者であるアレンやバルザークには遠く及ばない。


 ここから俺が更に強くなるためには、より多くのモンスターを倒してスキルレベルを上げる必要がある。


 他の場所に行くにしても、今の能力ではまだ心許ない。


 では、多くのモンスターがいる場所とはどこか。



 それはダンジョンだ。



 冒険者の町と呼ばれるこのボルタナの近くには、モンスターが多数生息するダンジョンがいくつか点在している。

 それらを巡り、モンスター達を倒すことが早道になるだろう。


 だがダンジョンに潜るためには準備が必要で、それにはある程度の金がかかる。


 俺はカウンターのすぐ前へと向かう。


「素材の買い取りを頼みたい」

「あら? あなたはさっきの……」


 受付嬢に話し掛けながら、さっき得た能力である『死者の棺』を使い、キリングベアをギルドの床に出現させる。


「──え?」


 その瞬間、受付嬢は驚愕した表情を浮かべた。

 何が起こったのか理解できなかったようだ。


「い、今のは!? それにこれは……キリングベア!? どうしてあなたがこのようなモンスターを!」

「俺が倒した。たまたま即死魔術が効いたようだ」


 俺の言葉に、ギルド内にいた冒険者達もざわめき始める。


『おいおい、あいつ例の人類最弱野郎じゃねえか? でもキリングベアをやったって……』

『そ、それに今、モンスターの体がいきなり床に現れなかったか?』

『レベル1がBランクのモンスターを倒したっていうのかよ? 冗談だろ?』


「とりあえず買い取りをしてもらえると助かる」


 呆然としている受付嬢に仕事をするよう促す。


「はっはい! みんな! Bランク素材が来たから手伝って!」


 我に返った受付嬢が呼ぶと、他の職員達がキリングベアを奥へと運んでいく。


 そうしてしばらく待っていると、再び奥から男の職員が戻ってきた。


 職員は受付嬢に何かしらかを話した後、重そうな革袋を渡す。

 受付嬢はゆっくりと俺に革袋を差し出した。


「こ、こちらが買い取った素材の金額となる金貨百枚となります。ほとんどの素材が綺麗な状態で残っていたため、ギルドの査定基準に従い金額に上乗せしてあります」


「ありがとう」


 俺は差し出された皮袋を掴むと、すぐにギルドを後にした。



 素材の報酬として得た金は金貨百枚。

 かなりの金額が手に入ったため、しばらくの間は食べ物に困ることはないだろう。



(だが、今後は冒険者ギルドを利用することは止めた方がいいかもしれないな……)



 なぜならば俺はレベル上限1のゴミだとギルドからは認識されているからだ。


 そんな俺が何度も強さに見合わないモンスターの素材を持ち込んだらどう思われるだろうか?


 明らかに何かがおかしいと疑われるに違いない。


 また、冒険者は基本的にパーティを組んで行動するが、俺は他の冒険者と組むことはできない。


 そもそもレベル上限1の俺とパーティを組む人間がいるとは思えないが、何より俺の即死魔術について他人に知られるのはあまり良い事ではないと思うからだ。



(とりあえず、ダンジョンに入るための準備を済ませるか)



 十分な金を得た俺は、すぐに次の行動へと移ることにした。


 ギルドの外に広がる町の大通りには様々な店が建ち並んでいる。

 多くの冒険者が集まるボルタナでは、必然的に彼らを相手に商売をしている店はとても多い。


 俺は道具屋に行き、必要な道具を揃える。


 緊急時に使用するためのいくつかのポーション。

 暗がりを照らすたいまつ。

 水と携帯食料。

 そして地図。


 水と食料はとりあえず一日分だけ持っておく。

 今日はあくまで小手調べのつもりだからだ。


 多く物を買いすぎると荷物がかさばるし、今の俺のステータスでは防具は重すぎる。


 『死者の棺』の能力も、あくまで即死魔術で倒した対象を保管するものだ。

 だから普通の荷物は手で持っていく必要がある。


 だが、もしかしたらそれを()()()()ことができるかもしれない。これはダンジョンに入ってから試してみることにする。


 ダンジョンへの入口はこの町の近くに存在している。

 最も近い場所は、ボルタナから徒歩で東に一時間ほど移動した森の中にあった。


 俺は地図を広げながら、そこへと向かった。



 そうして町を出てしばらく歩くと、急に辺りの雰囲気がジメジメとした陰鬱なものへと変わった。


(……ここが入口か)


 目の前には地下へと延びる巨大な洞穴が存在していた。

 ダンジョンの入口だ。


 聞いた話では、ダンジョンは階層と呼ばれるエリアに分かれており、各層によって風景が大きく異なるのだとか。


 下の階層に進むほどモンスターも強くなり危険が伴うが、同時に価値のある宝が眠っているとも言われている。


 そのため多くの冒険者達がこのようなダンジョンに挑み、倒したモンスターから手に入る素材や宝によって富や名声を得ていた。


 だが、俺にとってそれらには意味がない。


 俺の目的はこのダンジョン内を蠢くモンスター達を倒し、より強くなることなのだから。



 洞穴に足を踏み入れると、どこからか乾いた風が吹いてきた。



 ダンジョンの中で地上に最も近い『上層』と呼ばれているエリアでは、あまり凶悪な魔物は出ないそうだ。

 成長した即死魔術を試すにはもってこいだ。



 俺は薄暗いダンジョンを奥へと進んでいく。



『ギィ! ギギギィィッ!!』


 すると、奥の暗がりから何かの鳴き声のようなものが聞こえてきた。


 暗がりから現れたのは緑色の肌に小さめの背格好のモンスター、ゴブリンだった。


 数にして十体ほどだろうか。

 それぞれがボロボロになった剣や盾を持っている。


 ゴブリンはスライムと同じくEランク相当のモンスターだが、複数で行動し武具を扱う知性を持ち合わせているため油断ならない相手だ。


 ゴブリン達は森やこういったダンジョンに住み着いては周辺に住む人々を襲う。


 彼らにとって、一人でダンジョンを歩いている俺は恰好の的に見えていることだろう。


 ゴブリンは剣や短剣を構えてこちらへとためらうことなく命を奪おうと向かってくる。



 だがそれでよかった。



 だからこそ、俺も迷わずに戦うことができるのだから。



「《デス》」



 即死魔術の有効範囲を意識しながら、十分に近付いてきたところでゴブリンに向け《デス》を放つ。


『ギエエエェェェッ!!』


 放たれた漆黒の波動は、先頭の一匹に当たった。

 ゴブリンはキリングベアの時と同じように断末魔の声を上げながら倒れ、動かなくなった。


『ギギギッ!?』


 残りのゴブリン達は仲間が突然倒れたことで恐怖を感じたのか一瞬動きを止めた。

 そして、今度は俺を取り囲んだ。


「《デス》」


 間髪容れずに俺は次の即死魔術を放つ。


『ギャイイイ!!』


 二匹目のゴブリンも何もできないままその場に倒れた。


『ギッ!』


 俺のすぐ後ろにいたゴブリンが剣を振り回すが、それを難なくかわす。


 ゴブリンを倒すたび、体が軽くなり力がみなぎってくる。


 俺はゴブリンの顔を掴み、魔術を発動させる。


「《デス》」


 本来の俺の魔力では撃てないはずの()()()の《デス》が発動した。

 予想通りだった。


『ギギ……』


 糸が切れたように三匹目のゴブリンが地面へと崩れ落ちた。


「《デス》、《デス》、《デス》、《デス》」


 攻撃を避けながら、何度も魔術を放つ。


「《デス》、《デス》、《デス》」



 気付けば俺の周りにいたゴブリン達は全て地面に倒れ、物言わぬ姿になっていた。



「さすがにスキルレベルは上がらなかったか」


 キリングベアを倒して一気にスキルレベルが上がったためか、ゴブリンでは経験値が足りないようだ。


 だが収穫はあった。


「ステータス」


 俺がそう声を発すると、半透明のボードが現れた。


======================================

【基本ステータス】

 名前:アーク

 職業:魔術師

 レベル:1


 HP:215/215

 MP:10/60


 攻撃:42

 防御:54

 体力:44

 速さ:43

 知性:33


【所有スキル】

 ・即死魔術 Lv20


【所有能力】

 ・魔力消費半減 Lv1

 ・有効範囲アップ Lv1

 ・成功確率アップ Lv2

 ・死者の棺

 ・魂の回収

======================================


 ゴブリン達を倒したことで『魂の回収』の能力が発動し、ステータスが増加していた。


 それにより、即座に十発分の《デス》を発動することができた。


 成功確率アップの効果は大きいらしく、今のところ失敗する気はしていない。


 もしもの時は魔力を回復するポーションを飲むつもりだが、このまま行けば魔力を回復しながら先へ進むことができるだろう。


 死者の棺の能力を使い、ゴブリン達を回収する。

 俺が手をかざすと、彼らが持っていた装備品も一緒に消えた。装備は体の一部と認識されるようだ。


 そうして、俺は再びダンジョンの奥へと歩き始めた。

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