表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
即死と破滅の最弱魔術師  作者: 亜行 蓮
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/124

第二十九話 解放アイテムの存在

「ステータス値が、現在の限界に達した……?」


 表示されたメッセージをそのまま受け取れば、俺のステータスは最大に達しているということになる。


 だから全ての能力値が4000で止まってしまったようだ。


 つまり『魂の回収』によるステータスの増加には制限があり、それに引っかかったのだ。


 今までこんなメッセージが表示されたことはなかったので驚いた。


 よくよく考えれば、『魂の回収』の効果は強力過ぎる。

 レベル上限1の俺が、上限90のアレンを超えてしまうほどに。


(……そもそも、この能力は何だ?)


 どうして俺だけ【即死魔術】のスキルレベルが上がるのかも未だに判明していない。

 考えてみれば、俺は自身の能力について何も知らなかった。


 ステータスを見てみると、レベルの横に星印が付いていた。

 これが能力値が今の限界に達したということを示しているのだろう。


(もしかしたら、何か能力を上げる方法が他にあるのかもしれないのか)


「あのう……アーク様? どうかされましたか?」


 表示されたメッセージを見つめながら考え事をしていると、ファティナが声を掛けてきた。

 パーティメンバー達から離れて一人立ちすくんでいた俺を不思議に思ったのだろう。


 ファティナだけでなく、リュイン達も俺の方を見ていた。


「アーク、どうかしたのか?」

「さっきの戦闘で疲れたのなら、少し休む? 今は他のモンスターの気配もないし」

「いや、大丈夫だ。すまない」


 リュインとリオネスが心配そうな顔を俺に向けてきたので、慌てて歩いていく。


「それにしても、ミノタウロス十頭か……さすがに全部は持って帰れないが、惜しいな」


 リオネスが後ろを振り返りながら草の中に倒れているミノタウロスを見た。そしてがっかりしたかのような大きな溜め息を一つ吐く。


「ミノタウロスって、何かあるんですか?」

「うん。ミノタウロスはAランクの中でも狂暴で強いモンスターだからなかなか倒せる冒険者パーティはいないけど、貴重な素材が色々と手に入るからね。例えば角だったり、皮だったり……お肉だったりとか」


 あれだけ狂暴なミノタウロスだ。

 もしも倒せたとしても、希少な素材となるためなかなか出回りにくいのだろう。


「そうなんですね。というかミノタウロスのお肉って食べられるんですね」

「ああ、牛だし、ドラゴンステーキと双璧を成す食べ物らしいからな。新鮮なまま持ち帰れればそれだけで金になるんだ。この二人は色気より食い気だからその辺は詳しい」

「……何か言った?」

「い、いや……」


 二人に睨みつけられたリオネスは猫背になって萎縮してしまった。

 だが、それほど高い素材ならば放置せずに持ち帰った方がいいだろう。


「だったら俺が持って帰ろう」


 『死者の棺』の能力でミノタウロスを収納空間に入れると、ミノタウロスの体は地面からふっと消えた。


「うおっ!? ミノタウロスが消えた!?」


 リオネスが様々な角度からミノタウロス達がいた場所を眺めた。

 以前にも全く同じ反応をされた気がする。


「俺は【即死魔術】で倒したモンスターを別の空間に収納することができるんだ。探索が終わったら渡そう」

「そ、そうなのか……すごいスキルだな」


 そういえば、彼らはこの緑翠の迷宮を攻略した後は依頼をしてきたというクレティアの王女から報酬をもらうのだろうか。

 彼らの性格からして、そういった金銭で動くようなことはあまりしなさそうだが。


「まあ、この下層には他にも色々とあるでしょうから、最奥までの探索が終わったら色々と調べるといいかもしれないわね。しかもここって恐らく手付かずのまま残ってるし」


 リュインが周囲を見回しながら説明する。


「そういえば、ダンジョンの奥には見たこともない宝があるってよく聞きますね」

「……冒険者が求めている宝は決まってる」


 ぼそりと、今まで黙っていたベロニカがファティナに対して呟いた。


「そうなんですか?」

「まあね。これはあくまで冒険者達の間での噂話みたいなものなんだけど、ずっと昔に作られた強力なアイテムの中にはステータスを上昇させるものがあるらしいの」

「ステータスを上昇……ですか?」

「ああ、有名な話だ。といってもほとんど伝説みたいなものだが……例えばレベル上限を解放するアイテム、スキルを追加で得ることができるアイテムなんていうものだ」

「ええっ! そんなものが本当に存在するんですか!?」


 それを聞いたファティナは耳を動かしながらとても驚いていた。


「だからあくまで噂、噂。少なくとも、私の知り合いでそういったものを発見したという人は聞いたことないしね」


 リュイン達のような高ランクのパーティは、それらの宝を探して各地にあるダンジョンを訪れているのだろうか。


 もしそのようなものがこの世に存在するのであれば、一体どのほどの価値になるのか見当もつかない。

 いや、彼女達ならばいくら金を積まれたとしても自分達で使うかもしれない。


「その宝を探しているのか?」


 俺が聞くと、リュインは腕組みしながら苦笑いしていた。


「まあ、冒険者の夢みたいなものだからね? あ、でも今回の件はもちろん王女様から依頼されたからだから。今は町にこれ以上被害が出ないようにするのを優先しましょ!」


 どうやらリュインは律儀に王女からの依頼を守ることを優先しているようだ。

 彼女の、いやSランクパーティとしての誇りかもしれない。


 それからしばらくの間、草地を歩き続けた。

 広大な下層ではしょっちゅう方向感覚が狂いそうになり、自分がどちらからやって来たのかも分からなくなる。


 そのためか、リュインはしばらく移動すると途中にある大きな石や木に軽く火の魔術で焦げ目を付けていた。戻る際の目印にするようだ。


 彼女によれば、この程度ならば魔力の消費はほとんどないとのことだった。


 歩きながら、先程の会話を思い出す。


(もしもこの下層にリュイン達が言うようなアイテムが存在するとすれば、俺のステータスの限界値も上昇するかもしれない)


 現時点で俺の各能力値は4000。

 今のところ遭遇したモンスターの中ではミノタウロスが最も強力だが、それでも俺の素早さが大きく上回ったためか、攻撃を見切ることはできた。


 俺は空中で指をスライドさせて、能力一覧を表示する。


 ミノタウロス達を倒したことでスキルレベルが上がり、スキルポイントは残り12となった。


 今解放できる能力はすべて8ポイント消費しかない。

 それ以外にも魔力消費半減もあるにはあるが、今のところ俺の魔力は十分にあるので解放しないほうがいいだろう。

 だとすると、選択肢としては『有効範囲アップ』か『成功確率アップ』のどちらかに8ポイントを費やすことになるだろう。


(ここは『有効範囲アップ』が良いだろうな)


 『クアドラプル』を使用すれば成功確率は上がるのでそれほど気にする必要はないだろう。


 俺は『有効範囲アップ』を選択し、表示される確認メッセージの『はい』に触れる。

 するとシンボルが輝き、『有効範囲アップ』のレベル3が取得できた。


 これで即死魔術の範囲はかなり遠くまで広がった。

 敵に近寄る必要もなくなったので、結果的に回避がしやすくなった。


 これで、今できることは全てやった。

 あとはこの先に待つ災厄の元凶を突き止めることができればいいのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ