異変
「はあ。まあだそんなレベルのクエストもできてねえのか?いつもいつも邪魔なんだよ。そんなんだからクラスのド底辺で人生詰んじまうんだろ?」
開口一番これなのには理由がある。こいつ、そこそこ上位のプレイヤーらしい。
レベルは19かそこらで、俺なんかでは到底かなわないステータスなのだが、何より強力なのはこいつのユニークスキル《敵性魔法無効化》だ。
俺の唯一の武器である魔法を無効化してくる。魔法使いキラーで有名なこいつは、レベルが20以上格上の上級魔法使いを倒せる非常に稀有なプレイヤーで
クラスでも人望に厚く、カーストの最上位に位置するまさに俺の苦手とする人種だ。しかも何かにかけて俺にかかってきて正直なところ非常に非常にめんどくさい。
できればご退場願いたいのだがそううまくことが運ぶはずもなく、
「あ?なんか言ってみろや?もしかしてぐうの音も出ませんアピールですか?そーゆーのいいんでー。」
いやお前入り口立たれたら消え失せることもままならない。まじかこいつ。
「まあいいや。ちょっとお前来い。」
キョウは俺をギルドの外に引っ張り出そうとする。もちろんステータスでもかなうわけがなく、引きずり出された。
「そんじゃあ、お仕置き兼教育でも始めますかね。」
は?待て待て、お前に殴られたら死ぬだろう。確かこいつステータスの振り分け筋力値多めのバーサーカーだった気が...
「よーいしょっと。」
スキルすら使わないただ純粋なる腹パンが俺を襲う。いくら死なないとはいえ、痛みは痛みだ。体力が大きく減少する。
「がふっ」
ステータスの差はもはや歴然。
そこから先は、もはや一方的なただの暴力でしかなかった。殴られ蹴られの繰り返し。そして...
「あーあ。飽きた。」
...やっと解放される。そう思った瞬間、
「とどめに《拳突》ー。これに懲りたらもう二度とこのゲームプレイすんな。」
顔面に一撃をもらい、俺は力尽きた。
「...ああっくそっ!」
俺はいつもの部屋でベットの中にいた。
どうやらあのまま気絶していたらしい。死なないのと、意識を失わないのは、別の話のようだ。
〈シルトシステム〉は、命の危機が起きたとき、安全地帯に設定されている座標に転移するようにコマンドされている。このおかげで交通事故などによる死者数が激減し、
犯罪防止にもつながったようだ。
いつまでも寝ているわけにもいかないので、起き上がり眼鏡を探す。あれがないと始まらん。
...あれ?
「眼鏡がない...」
じいちゃんからもらった大切な銀縁の眼鏡がない。
棚の上に置いたんだっけ?確かケースに入れて枕元に置いたはずなんだがな...
「あれ、あるじゃ...」
「ザリッ」
「...え?」
指にガラスの刺さる感触がある。指が熱くなるのがわかる。血が出ているのだろう。しかし、指先以外はすべて冷え切っていた。ある恐怖ともいえる感情が湧き上がる。
こんなことが起こるはずがない。状況を理解するために、疑問を口にする。
「...メガネが壊れている?"裏"の世界で殴られたのに?」
最悪だ。