ログインボーナスと不穏な影
俺は最近始めたばかりの〈マイルグランド〉というRPGにログインをした。
[〈マイルグランド〉へのログインが完了しました。]
メッセージポップアップが表示される。続けて、
[ログインボーナスが支給されました。確認してください。]
どうやら予想は当たっていたようだ。
このゲーム〈マイルグランド〉の世界感は中世ファンタジーもので、基本的に何でもできる。そう。なんでもだ。冒険でも薬草採取でも釣りでも...物好きは筋トレするやつま
でいる。ここまではほかのゲームでも同じだが、何よりこの世界には、いわゆる《魔法》や、《ユニークスキル》といった非現実的なシステムが存在しているのだ。
"表"世界(俺たちが普段生活している世界のことだ)では存在できないはずの特殊なエネルギーや物質が、"裏"の世界には存在することがある。このゲームを作った
会社は運よくそんな世界を引き当てたみたいだ。
「へえ...」
俺は、配布されたボーナスアイテムを確認する。
きれいな木細工のネックレスのようなものが手に入った。それより...
「これは... 」
ネックレス(仮)の真ん中にはまっている小さな宝石に目が留まる。これはもしや... すぐにまだ3つしか覚えていないスキルの1つ、《鑑定》を使用する。
ネックレスの情報が、ポップアップウィンドウとなって表示された。
〔木のネックレス〕
この世界が生まれたことを祝うために作成されたネックレス。真ん中の宝石には、〔上質なランダムスキルの石〕が使用されている。
使用すると、上級スキルが1つ取得できる。 装備すると、MP+20(レベル制限なし)
「すげえ!なんだこの装備!」
ステータス値ををはるかに上回る数値の装備に驚く。これなら先週断念したゴブリン討伐も簡単にこなせるはずだ。
...ちなみに俺のステータスはこんな感じ。
ヨシヒロ (男) Lv.6
ATK 15 スキル 《鑑定》Lv.1 ユニーク 《空間魔法》
DEF 11 《疾走》Lv.1
HP 34 《多芸》Lv.2
MP 15(+20)
SP 13 魔法 《火魔法》Lv.2
LUC 9 《木魔法》Lv.1
《鑑定》は先ほどのアイテムの情報を読み取る能力。レベルが上がれば高いランクのものが見れるようになったり、スキルが変化したりするらしい。
《疾走》はMPを消費することによってSPにバフ効果がかけられる能力。レベルに比例して効果は上がるらしく、《神速》という上位スキルも確認されているみたいだ。
《多芸》に至っては読んで字のごとく。スキル初取得までにかかる時間が短縮されるスキル。変わりにレベル上限になるまでの時間が少し伸びるスキルだ。
《火魔法》《木魔法》は初級魔法といわれるMP消費の少ない魔法で、すべての人が取得可能といわれている部類の能力の能力だといわれている。
俺はレベルの割にスキルは多いほうだ...と思う。うん。多いはずだ。多分。
しかしユニークスキルはMP不足でいまだ使えずといった具合なので一概に優秀だとは言い切れないのがつらい...。
プレイヤーは基本的に一人一つのユニークスキルが与えられている。そのスキル次第ではいきなり世界トッププレイヤーに躍り出ることもありうる、なかば"チート"
のようなスキルも確認されている。そんなプレイヤーの中でユニークスキルが使えないのはかなりな重荷となるようで、このゲームを放置して
違う世界でニューゲームを始める人も多いのだとか。
しかしながら魔法を使いたい俺はそんなことにもめげず、コツコツレベルを上げて初心者脱却を目指している。
そんなこんなでギルドと呼ばれる建物に着く。まさにファンタジーという趣の建物で、想像の通り、クエストや依頼を受け取ることができる施設だ。
とりあえず依頼を数枚選んで建物から出ようとすると、
「あれ、ヨシヒロじゃん。」
...クラスメートのキョウに声をかけられた。最悪だ。