プロローグ
ガタン、ゴトン。
「あれ?何の音、というか揺れてる?」
普段通り家で寝たのに変な音と振動で目が覚める。
「あーあ、起きちまったか、もう少し寝てりゃいいものを」
頭に疑問符を浮かべながらも体を動かそうとしてみるものの体は動かずよく見ればロープでぐるぐる巻きにされていて体もわずかに痛みます。
声をかけてきた人を見ると知らない男の人です。
「もう少しでアジトに着く、そうしたらおたのしみだぁ~」
冷静に周囲を窺うとどうやら森の中を荷車に乗せられ移動しているようです。
最近、村で聞いたことを思い出します。
北の森に人攫いの一団が住み着いて、何人か攫われて森の中で無残な姿で見つかったというのです。
(あ~、私攫われちゃったのか、一人暮らしだし狙われて当然か)
短い人生だったなぁ。などと思っていると、ガコンとひと際大きな音を立てて荷車が止まります。
「ちょっと、もうちょっと丁寧に扱ってよ」
「すまねぇなぁ、おいら不器用なもんでよ」
人の好さそうな顔をすまなそうにしながらも私を担ぎます。
担がれたと思ったらいきなり投げ出され顔を打ってしまいます。
「痛い……もう何なの?」
私を攫い担いだ男の人は頭に矢をはやして倒れていました。
頭が混乱している間にアジトの制圧は終わっていて数名の討伐隊の人に保護されたのでした。